体重はほどしかない小さな鳥ですが、カワセミは青く輝く姿で知られています。学名はAlcedo atthisで、ヨーロッパ、アジア、北アフリカにまたがる広い範囲に暮らしています。
カワセミ科に属し、七つの亜種が認められています。多くの地域では一年を通して暮らしますが、川が凍る冬の地域からは南へ渡ります。国際自然保護連合の評価は「軽度懸念」です。
水辺の生態系を理解するうえで重要な鳥であり、川の健康状態を映す存在として注目されています。
識別と外見
最も見分けやすい特徴は、耳の後ろにある橙色の斑です。背中は淡い瑠璃色で、頭から背にかけては緑がかった青色をしています。首の付け根には青緑色の線と白い喉があり、腹は橙色です。
オスのくちばしは黒く、付け根に少し赤みがあります。メスはくちばしの下側が橙赤色で、先端が黒くなっています。足は鮮やかな赤色です。
全長は約16 cm、翼を広げると約25 cmで、体重は34〜46 gです。ずんぐりした体形に短い尾と長いくちばしを備えています。
幼鳥は成鳥に似ていますが、背中が緑みを帯びて暗く、腹は淡い色をしています。くちばしと足は当初黒色です。換羽は7〜11月にかけて少しずつ進み、風切羽が生え変わるまで90〜100日かかります。
亜種によって背中の青さや腹の橙色の濃さが異なり、大きさは最大で10%ほど違います。南アジアや東南アジアでは、ほかの小型の青と橙色の鳥と見間違えることがあり、耳羽の模様が見分けの決め手になります。
分布と生息地
カワセミはヨーロッパ、アジア、北アフリカに広く分布し、主に北緯60度より南で見られます。ユーラシアの大部分では一般的な繁殖鳥ですが、北アフリカでは主に冬に渡ってくる鳥です。モロッコやチュニジアの沿岸では、わずかに留鳥として繁殖します。
温帯では、水が澄んで流れの緩やかな川や、岸に植物が茂る湖を好みます。岸辺の低木や、水面にせり出した枝のある場所で暮らし、そこから浅い水域の獲物を狙います。標高190 mまでの地域に多く見られます。
熱帯では、緩やかに流れる川、マングローブの入り江、沼地などに生息します。繁殖密度が高いのは、水が澄んでいて獲物が見つけやすく、岸に木や低木がある場所です。都市化にもある程度適応しますが、水がきれいであることが条件です。
冬季には海岸寄りに移り、河口、港、岩の多い海岸で採餌することがあります。寒さの厳しい地域で繁殖した鳥は、冬を越すため南へ移動します。多くは繁殖域の南部で越冬し、一部は地中海を越えてアフリカへ、マレーシアの山地を越えて東南アジアへ向かいます。

行動と暮らし
カワセミは強い縄張り性を持ちます。1日に体重の約60%ぶんの餌を食べる必要があるため、魚の多い川の区間を確保することが欠かせません。縄張りは親子や配偶者にさえも守ることがあります。
一年の大半は単独で暮らし、獲物をとる場所のそばの茂みで休みます。他の個体が縄張りに入ると、両方が離れた止まり木に止まって誇示行動をとります。くちばしや羽毛を見せ合い、時にはくちばしをつかんで水中に押し込む争いも起こります。
縄張りの広さは、食物の多さ、営巣場所の質、個体の性質によって大きく変わります。縄張りは川に沿った細長い区間で、通常は1 km以上、長いところでは3.5 kmに及びます。飛ぶ速さは非常に速く、羽ばたきが速いため翼が青い霞のように見えます。
巣立ったばかりの若鳥は危険にさらされやすく、巣立ちから約4日後の初めての潜水で水を含んで溺れることがあります。多くは親の縄張りを追われる時点で魚の獲り方を身につけておらず、その後1〜2週間以上生き延びるのは約半数です。
コミュニケーション
カワセミは目が非常によく発達しています。水面の反射を偏光によって抑え、光の屈折を補正することで、水中の獲物を正確にとらえます。水に飛び込むときは目を膜で覆い、くちばしを閉じるタイミングを触覚だけで判断します。
鳴き声は、長く続くトリルのような「チー」という声が特徴です。飛翔時には短く鋭い口笛のような声を二、三回続けて発します。警戒しているときは耳障りな声を出し、ヒナは細かく震えるような声で親に餌をねだります。
つがいを作る時期には、オスが大きな声で口笛を鳴らしながらメスを追い、木立の間を飛び回ります。こうした鳴き声と追いかけの動作によって、繁殖相手に気持ちを伝えます。
狩りと食性
カワセミは水辺の止まり木から水面を見張り、獲物を見つけると水に飛び込んで捕らえます。止まり木の高さは水面から数cmから数mまで様々です。止まり木が使えないときには、空中でホバリングしながら獲物を探すこともあります。
捕らえた魚は尾をくわえて止まり木に打ちつけ、気絶させるか殺します。トゲのある魚を食べるときには、この動作が特に重要です。食後には消化できない骨をペレットとして吐き出します。
食べ物の中心は小魚で、食性の60〜67%を占めます。次いで甲殻類が5〜33%を占め、小型の水生節足動物も食べます。冬には、カニや海の小さな動物を食べることもあります。
営巣と繁殖
繁殖期は4月から10月初めまでです。つがいは秋に作られますが、雌雄はそれぞれ別の縄張りを持ち、春まで縄張りを統合しません。繁殖期の間は一夫一婦で、毎年新しいつがい相手を探します。
3月半ば頃に営巣が始まります。求愛はオスがメスを鳴きながら追いかけることで始まり、後に儀式的な給餌が続いてから交尾します。雌雄は協力して、川岸の垂直な土壁に巣穴を掘ります。穴はまっすぐで緩やかに傾き、長さは60〜90 cmで、奥に広い部屋があります。巣室には敷材はなく、魚の骨やペレットが自然にたまっていきます。
年に2〜3回繁殖し、一腹は通常6〜7個、多い場合は10個までの卵を産みます。卵は光沢のある白色です。抱卵は昼は雌雄が交代で行い、夜はメスだけが行います。卵は19〜20日で孵化し、ヒナは巣の中で24〜25日ほど過ごします。
両親がともに育雛し、ヒナが大きくなると巣穴の入り口で餌を待つようになります。親は魚を大きさがちょうどよいものを選んで持ち帰り、尾をくわえて頭から飲み込めるようにします。ヒナは23〜27日で巣立ちます。
個体数と生態的役割
カワセミは水辺の生態系の良い指標です。小さな水生動物を食べるため、水中の有害物質の影響を強く受けます。カワセミが多く暮らす川は、環境が健全であることを示しています。
淡水域の小型魚を捕食する重要な鳥であり、川の生き物の数を調整する役割を担っています。
ベルギーでの調査では、厳しい冬の後に8つがいしか確認されなかった地域が、5年後には45つがいに増えました。その翌年には25つがいに減少しました。このように、個体数は寒さによって毎年大きく変動します。
保全と脅威
国際自然保護連合の評価は「軽度懸念」です。分布域が非常に広く、ヨーロッパだけで16万〜32万個体がいると推定されています。個体数は安定しているとみられ、絶滅の危険は小さいと考えられています。
最も大きな脅威は厳しい寒さです。冬の寒さで多くの鳥が命を落とし、寒い冬には個体数の大部分が失われることもあります。夏の洪水によって巣が壊されたり、雛が餌不足になったりすることもあります。
河川工事によって自然の岸が人工の護岸に置き換わると、魚、両生類、爬虫類が減り、水辺の鳥も姿を消します。川の汚染も深刻で、食物連鎖の上位にいるため、化学物質が体内に蓄積しやすくなります。猫やネズミによる捕食、車や窓への衝突も死因となっています。
過去には、剥製やガラスケースの展示、帽子の飾りとして大量に捕られました。釣り人が釣り針の羽根を得るために狩ることもありましたが、現在ではこうした迫害はほとんど過去のものです。
文化的意義
カワセミの名は、ギリシャ神話に登場する女性アルキオネと、その夫ケユクの物語に由来するとされています。夫が海で遭難し、妻がカワセミに変えられたという伝説で、「穏やかな日々」を意味する言葉もここから生まれました。
カワセミは、穏やかさや静けさの象徴として扱われてきました。文化によっては美しさの象徴ともされ、穏やかな水辺とともに描かれることが多い鳥です。
欧州中央銀行は、2020年代の10ユーロ紙幣の新デザインに向けて、「滝や瀬にいるカワセミ」を表面のモチーフ候補に選びました。
豆知識
- 卵の殻は全体の重さの約5%を占め、卵は1個あたり約4.3 gです。
- 一腹のうち一〜二個の卵は、親が十分に覆えないため孵化しないことが多くあります。
- 英国の博物学者ウィリアム・ヤレルは、カワセミを糸で吊るして風向きを占うという俗信があったと書き残しています。
- 亜種によって体の大きさが最大10%ほど異なります。
写真
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生態と分類
分類
- 門
- Chordata
- 綱
- Aves
- 目
- Coraciiformes
- 科
- Alcedinidae
- 属
- Alcedo
- 種
- Alcedo atthis
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- Encyclopedia of Life Habitat, diet and behavior traits
- Animal Diversity Web Animal habitat, behavior and diet
- AnAge Longevity



