本文へスキップ
記事へスキップ

オオトウワタ

Asclepias syriaca

直立した茎に対生する広卵形の葉をつけ、先端にピンクがかった紫色の球状の花序をつけるオオトウワタの成株写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

ひと目でわかる

主な特徴
草原荒れ地草本
分類
門
Tracheophyta
綱
Magnoliopsida
目
Gentianales
科
Apocynaceae
属
Asclepias
種
Asclepias syriaca

メキシコで越冬するオオカバマダラのじつに85〜92%が、幼虫時代にAsclepias syriaca(オオトウワタ)を食べて育ったことが、カルデノリドという成分の分析から明らかになっています。

オオトウワタはキョウチクトウ科トウワタ属に属する多年生の草本で、根から株を広げて増えるクローン性の植物です。カナダ南部からロッキー山脈以東のアメリカ合衆国の大部分にかけて自生し、日当たりのよい砂質土壌をはじめさまざまな土地に生育します。北米の草地生態系を代表する植物として、昆虫との深い結びつきを知ることが、この草を読み解く鍵になります。

識別と外見

最も見分けやすい特徴は、切ると白い乳液(ラテックス)がにじみ出ることと、対生する広卵状披針形の葉です。葉は幅3.8〜12.1センチほどで、縁は全縁でやや波打ち、主脈は赤みを帯び、裏面はビロード状の質感を持ちます。

草丈は通常0.9〜1.5メートルほどですが、水路や庭など条件のよい場所では2.4メートルに達することもあります。花は芳香が強く蜜を多く含み、白色(まれ)からピンク、紫がかった色まで幅があり、傘状の集散花序(散形花序)にまとまって咲きます。個々の花は直径約1センチで、5枚の角状の「フード」と5個の花粉塊を持つのが特徴です。

種子には長く白い綿毛(フロス)が付き、大きな袋果(follicle)の中に多数収められています。自家受粉による結実はまれで、ある調査地では他家受粉した花の結実率は平均約11%にとどまりました。花や葉の色合い、草丈には個体差や生育環境による変化が見られます。

分布と生息地

月別の観察記録では6月に約40,067件、7月に約36,991件と観察数がピークに達し、5月から9月にかけて記録が多い傾向が見られます。ただしこれは開花期など観察されやすい時期の記録数を示すものであり、生息数や分布の全体像を正確に表すものではありません。

自生地はカナダ南部からロッキー山脈以東のアメリカ合衆国の大部分に広がりますが、乾燥したプレーリー地帯の一部には分布しません。生育地は農地、牧草地、道路脇、排水路、休耕地など人の手が入った日当たりのよい荒れ地が中心で、砂質を含むさまざまな土壌に適応します。

本来の分布域を越えて、カナダ中東部からアメリカ北中部・東部にかけて広く帰化しているほか、世界の少なくとも23か国で帰化が確認されています。導入先にはオレゴン州、ニューファンドランド、アメリカ南東部、ヨーロッパの大部分、西アジアの一部が含まれ、ヨーロッパ連合(EU)では2017年以降、侵略的外来種に指定され輸入・取引が禁止されています。

Asclepias syriacaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
40,067
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

生態と関わり

450種を超える昆虫がオオトウワタを餌としており、ハエ、甲虫、アリ、ハチ、蝶など多様な種がこの植物に依存しています。中でもオオカバマダラの幼虫にとってはアメリカ北東部・中西部で最も重要な食草の一つであり、東部個体群の渡りを支える数少ないトウワタ属植物の一つです。

花にはセイヨウミツバチ(Apis mellifera)や在来のマルハナバチ属(Bombus spp.)などが訪れて送粉を行います。アメリカ中部大西洋岸の調査では、セイヨウミツバチが花を訪れる回数自体は最も多いものの、同一株内の花を訪れがちで、自家不和合性の高いオオトウワタの受精には効果が低いとされています。異なる個体間を移動しやすいマルハナバチのほうが、結実の面ではより有効な送粉者と考えられています。

そのほか、アカボシトウワタゾウムシ(Tetraopes tetraophthalmus)、トウワタドクガの一種(Euchaetes egle)、オオトウワタカメムシ(Oncopeltus fasciatus)や近縁種(Lygaeus kalmii)などが葉や茎を利用し、外来種のキョウチクトウアブラムシ(Aphis nerii)が新芽に大量発生することもあります。一方、除草剤耐性を持つトウモロコシや大豆の普及に伴う雑草・在来植物の減少はオオトウワタの個体数を圧迫し、これがオオカバマダラの個体数減少(過去20年で約90%減という報告もあります)の一因とされています。また、道路の中央分離帯の草刈りや宅地開発による生息地の喪失も進む一方で、人間の入植に伴う森林伐採がオオトウワタの分布や密度をむしろ広げた地域もあると考えられています。

利用と人との関わり

属名Asclepiasは、ギリシャ神話の医神アスクレピオスにちなんで名付けられました。オオトウワタを含む一部のトウワタ属植物には薬用に用いられてきた歴史があり、いぼの除去や肺の疾患への利用が伝えられています。

実用面では、種子に付く絹のような光沢を持つ綿毛(フロス)が昆虫標本の台紙や、冬用コートの断熱材として利用されてきました。茎の内皮(靱皮)繊維は強く柔らかいことから、アメリカ先住民が伝統的に縄や織物に用いており、19世紀末や1940年代のアメリカ農務省の調査では、在来の靱皮繊維植物の中でも商業利用の可能性がもっとも高く、収量は麻に匹敵し、品質は亜麻に匹敵すると評価されました。また乳液からゴムの原料として研究されたこともあります。庭では根から旺盛に広がり管理が難しいため、狭い庭や整形式の花壇には向かないとされ、USDAゾーン3〜9で越冬可能です。

豆知識

  1. 属名Asclepiasは、ギリシャ神話に登場する医術の神アスクレピオスにちなんで名付けられました。
  2. 花は自家不和合性が高く、他家受粉した花でも結実率は平均約11%にとどまります。
  3. 種子には長い絹状の綿毛が付いており、その光沢のある綿毛(フロス)は昆虫標本の台紙として伝統的に使われてきました。
  4. 外来のキョウチクトウアブラムシ(Aphis nerii)が新芽に大発生することがあります。
  5. アメリカ農務省の調査では、種子は発芽前に一定期間の低温処理(寒冷湿層処理)を必要とすることが分かっています。
  6. ヨーロッパ連合では2017年以降、侵略的外来種に指定され、輸入や取引が禁止されています。

生態

生息地

  • 草原
  • 荒れ地

生育型

  • 草本

写真

写真15枚
1 / 15
直立した茎に対生する広卵形の葉をつけ、先端にピンクがかった紫色の球状の花序をつけるオオトウワタの成株写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipedia