Pilobolus crystallinus は、「糞鉄砲」や「帽子投げ菌」とも呼ばれる、ケカビ目に属する菌類です。草を食む動物に食べられるよう、胞子を植物に付着させる独特な生存戦略を持っています。
この菌は分解者として糞に生息し、動物に食べられて糞とともに排出されることで新しい生育地へ移動するという、変わった生活史を持っています。その爆発的な発射能力は、菌類の中でも際立った特徴として知られています。
子実体と識別
この菌は本来、地表よりも下で成長する傾向があります。菌糸が酸素に敏感であるため、地表付近では放射方向への成長が抑制されるのです。
発育過程は6つの段階に分けられます。第Ⅰ期では柄の先端が伸長しますが、まだ回転は始まりません。第Ⅱ期で柄の先に胞子のうが形成され、第Ⅲ期ではその後に成長が一時的に停止します。第Ⅳ期になると胞子のうの下にある亜胞子のう嚕胀が膨張し、第Ⅴ期で胞子が成熟するとともに、嚕胀の下の柄がさらに伸び続けます。最終段階の第Ⅵ期で嚕胀が破裂し、胞子のうが空中へ勢いよく飛び出します。
走査型および透過型電子顕微鏡による観察では、胞子のうの表面には二種類の大きさの結晶が付着していることが確認されています。大きい結晶は中心に孔を持つ棘状構造を包み込んでいます。
分布と生息地
観測記録は一年を通して見られますが、9月に大きな増加が確認されており、夏の終わりから初秋にかけて観察数が多くなる傾向がうかがえます。これらの数値はあくまで生物の存在が確認された記録であり、個体数や生息密度、分布域の全体像を示すものではありません。
この菌は特定の環境、特に草食動物の糞という特殊な基質と結びついて生育するため、その分布は牧草地や動物が放牧される地域と密接に関係していると考えられます。

豆知識
- 「糞鉄砲」や「帽子投げ菌」という別名は、糞の上で生育し、粘着性の物質を使って胞子のうを植物にくっつける独特の習性から名付けられました。
- この菌の名前は、1971年にアメリカのダートマス大学で創設された前衛的なダンスカンパニー「Pilobolus」の由来にもなっています。同カンパニーはその創造的で身体的な表現で世界的に知られる文化的存在に発展しました。
写真
写真の提供元はvia iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Johan Adler via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Shane Austin via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Fraser Higgins via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Michel Langeveld via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Enrico Tomschke via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Jerry Cooper via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by James K. Douch via iNaturalist, licensed under CC BY-SA 4.0.、by Björn Sothmann via iNaturalist, licensed under CC BY-SA 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。
生態と分類
分類
- 門
- Mucoromycota
- 綱
- Mucoromycetes
- 目
- Mucorales
- 科
- Pilobolaceae
- 属
- Pilobolus
- 種
- Pilobolus crystallinus
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract



