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Sisymbrium officinale

記録された一般名なし

フランスでは「歌い手の植物」と呼ばれ、かつては喉の不調を治す薬草として重宝されていました。Sisymbrium officinale はアブラナ科に属する植物で、道端や荒地、牧草地などに生える一年草または二年草です。

元はヨーロッパ南部や北アフリカに自生していましたが、現在は世界中に広く定着しています。身近な雑草でありながら、長い民間医療の歴史を持つ点が興味深い植物です。

識別と外見

最も見分けやすい特徴は、直立した茎に沿って果実が密着して並ぶ点です。近縁の Sisymbrium 属の他種では果実が垂れ下がるのに対し、本種では茎と平行に押しつけられるように配置されます。また、アブラナ科の近縁属である Brassica とは明確に区別される植物です。

草丈は最大で80cmほどに成長します。下部の葉は幅広で、2〜3対の側裂片を持つ形をしています。花は直径約4mmと小さく、黄色い色をしています。

果実は細長く、若いうちは無毛ですが、成熟すると毛が生えてきます。成熟した果実は最大18mmの長さになり、総状花序となって茎に沿って密接して並びます。この果実の付き方が、他の類似種との最も確実な識別点となります。

分布と生息地

元来は北アフリカと南ヨーロッパに自生していた植物ですが、現在はアイルランド、ウェールズ、イングランド、さらにはスコットランドの高地にまで分布を広げています。ヨーロッパから中央アジア、イランにかけての温帯域やマカロネシアが自然分布域とされ、北アフリカにも自生しています。

道端、畑、牧草地、荒れ地、さらには砂漠環境まで、幅広い環境に適応して生育します。標高は海面近くから1500mほどまで分布し、耕作地の雑草としても一般的に見られます。

この植物は現在、北米、南米、アフリカ南部、オーストラリア、ニュージーランド、日本を含むアジア各地など、世界中の非常に広い地域に移入種として定着しています。観測データからは夏季に記録数が多くなる傾向が見られますが、これは生育期における目立ちやすさを反映したものと考えられ、個体数そのものを示すものではありません。

Sisymbrium officinaleの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
52,221
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

成長と形態

一年草または二年草として生育し、草丈は最大で80cmに達します。下部の葉は幅広で側裂片を持つ形状をしており、茎は直立して伸びていきます。

生態と関わり

花にはミツバチ科やハナバチ類が多く訪れ、特に Bombus pascuorum や西洋ミツバチ Apis mellifera 、ハナバエ類がよく記録されています。ただし花を訪れることは必ずしも花粉を運んでいる証拠ではない点に注意が必要です。

捕食の面では、モンシロチョウの仲間である Pieris napi の幼虫の食草となるほか、ゾウムシの一種 Ceutorhynchus pyrrhorhynchus や、ヒワ類・ヒバリ・カモ類・ガン類など多様な鳥類にも利用が記録されています。

道端や荒地、耕作地の雑草として広く生育し、こうした環境に適応することで多様な昆虫や鳥類との関わりを生み出しています。

利用と人との関わり

古代ギリシャ人はこの植物を万能の毒消しと信じていました。ヨーロッパの民間医療では長く喉の痛みを和らげる薬草として用いられ、フランスでは「歌い手の植物」という別名で呼ばれていました。

ルイ14世の時代までは、声がれに対する確実な治療薬とみなされていたという記録があります。葉や花の搾り汁は蜂蜜や砂糖と合わせてシロップとされ、咳やぜんそく、呼吸困難など胸や肺の不調全般に効くとされてきました。ハーブ療法では気管支炎や胃の不調にも用いられ、チベット医学では食中毒の症状を抑える目的で使われてきた記録もあります。

豆知識

  1. 果実が茎に沿って密着して並ぶという特徴的な形状のため、同属の他種とも容易に区別できます。
  2. フランスでは古くから「歌い手の植物」と呼ばれ、声楽家たちに特別な存在として扱われてきました。
  3. ヨーロッパ地中海地域やマカロネシア、西アジア、中央アジアを自然分布域としながら、今では世界の非常に多くの地域に定着しています。

写真

写真の提供元はvia iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by guywallbanks via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Alana Woolley via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。

生態と分類

生育型

  • 草本

分類

門
Tracheophyta
綱
Magnoliopsida
目
Brassicales
科
Brassicaceae
属
Sisymbrium
種
Sisymbrium officinale

出典

  1. GBIF Species names and classification
  2. iNaturalist Photos
  3. Wikidata Common names and conservation status
  4. Wikipedia Summary extract
  5. Encyclopedia of Life Habitat, diet and behavior traits
  6. Plants of the World Online Native range, life form and climate (WCVP)
  7. GloBI What it eats, what eats it, parasites and pollinators
  8. trophiCH
  9. DoPI
  10. Guzman et al. 2022
  11. EuPPollNet