セイヨウナナカマドは、ヨーロッパの山地や寒冷地を代表するバラ科の落葉高木です。低木状に育つこともあります。
欧州のほぼ全域からコーカサス、北ロシア、シベリアまで広く分布し、国際自然保護連合(IUCN)の評価では軽度懸念に分類されています。英語圏ではrowanやmountain-ashとも呼ばれます。
寒さや乾燥、大気汚染に強く、厳しい環境でも生き延びる点が特徴です。果実を食べる鳥を通じて種子が運ばれるため、森林の再生にも関わります。
識別と外見
最も役立つ見分けの手がかりは、羽状の複葉です。小葉が4〜9対並び、先端に1枚の小葉があります。葉は互生し、葉柄の基部に托葉があります。トネリコの葉は対生で托葉がないため、この点で区別できます。
樹高は多くの場合5〜15mで、まれに20mを超えます。幹は細い円柱状で、太いものでも直径40cm程度です。樹皮は若い木では黄色みを帯びた灰色で光沢があり、年を経ると灰黒色になって縦に割れ目が入ります。
小葉は長さ2〜6cm、幅1〜2.5cmの細長い披針形で、縁に鋭いぎざぎざがあります。表は濃い緑色、裏は灰緑色で、薄い毛があります。若い小葉をすりつぶすと、マジパンのような香りがします。
花は5〜6月に、白に近い黄色の花が多数集まった大きな散房花序をつけます。果実は8〜10mmほどの丸い偽果で、熟すと橙色や鮮紅色になり、先端に黒い五角形の星形の萼が残ります。
分布と生息地
セイヨウナナカマドは、欧州のほぼ全域とコーカサスに分布し、北ロシアとシベリアにまで広がっています。一方で、南スペイン、南ギリシャ、サルデーニャ島、バレアレス諸島、アゾレス諸島、フェロー諸島には自然には生えていません。北米には観賞用として持ち込まれ、ワシントン州からアラスカ、カナダ東部や米国北東部にかけて野生化しています。
生育地は平地から山地まで幅広く、高木の限界線付近まで見られます。アルプスでは標高2,000mまで生育し、ノルウェーでは北緯71度付近まで達します。北方の高山帯では、ほかに落葉する高木がほとんどない中で、唯一の落葉高木として低木状の林の中に生えます。
生育に適した土は水はけの良い泥炭質の土で、酸性で養分が少ない砂質や礫質の土にも耐えます。明るい林、伐採跡、森林の縁や道路沿いなど、さまざまな場所に先駆けとして現れます。断崖や急な沢沿い、大きな岩の上など、草食動物の届きにくい場所にも育ちます。
観察記録の多い季節は夏で、7月が最も多く、冬にかけて減ります。これは人の観察が夏に集中することも影響すると考えられます。

生態と関わり
セイヨウナナカマドの花にはハチやハエが訪れ、受粉を助けています。種子は鳥の消化管を通らず、糞とともに無傷で運ばれるため、鳥は種子を散布する役目を担います。
果実は約60種の鳥と、いくつかの哺乳類に食べられます。特にツグミ類などのスズメ目の鳥に好まれ、晩夏から冬にかけては、ヒレンジャクやクロウタドリ、ツグミ、ヒタキ類などの渡り鳥も果実を食べます。哺乳類では、シカ、ヒツジ、ウシなどの偶蹄類やキツネ、アナグマ、ヤマネ、リスなどが果実を食べます。偶蹄類は葉や樹皮を強く食べることもあります。
根は菌根菌と共生し、主にアーバスキュラー菌根菌が、まれに外生菌根菌が関わります。森林の遷移の中では、やがてより大きな森林の樹木に置き換わります。火には弱く、落ち葉を多く溜めない性質があります。
ナナカマド属の他の種やアリア属の種と容易に交雑し、雑種ができることがあります。これらの雑種は今はヘドルンディア属に分類されています。害虫としては、リンゴの仲間の果実を食べる蛾の幼虫や、果実に穴をあける昆虫が知られています。葉は多くの昆虫にとって食べにくいものですが、一部の蛾の幼虫やハモグリガの仲間の幼虫が利用します。
利用と人との関わり
セイヨウナナカマドの果実は、古くから鳥をおびき寄せて捕まえるためにも使われてきました。果実には強い苦味と渋みがあり、そのままでは食べにくいものです。
果実は、ジャム、ゼリー、コンポート、シロップ、ジュース、ワインやリキュールの材料として利用されてきました。ゲームや子羊料理の付け合わせとして出されることもあります。ロシアの植物学者が20世紀初頭に行った交配で、果樹として使える品種も生まれています。苦味の少ない品種も知られ、食用の品種として栽培されています。
材料としては、木材が車大工や旋盤加工、木彫りに使われてきました。若い木の材でも利用でき、辺材は黄金色から白色、心材は茶色をしています。欧州の伝承では魔除けの木とされ、旅人を守る木とも呼ばれてきました。
豆知識
- ケルト文化では、セイヨウナナカマドは保護の力を持つ木とされ、ブリジッドという女神の聖なる木と考えられてきました。
- 生命の木と呼ばれることもあり、魔除けや再生の象徴として語られてきました。
- イギリス国内で最も背の高い個体はイングランド南東部のチルターン丘陵にあり、高さは28mです。
写真
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生態と分類
分類
- 門
- Tracheophyta
- 綱
- Magnoliopsida
- 目
- Rosales
- 科
- Rosaceae
- 属
- Sorbus
- 種
- Sorbus aucuparia
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- Encyclopedia of Life Habitat, diet and behavior traits


