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メキシコサンショウウオ

Ambystoma mexicanum

CR絶滅危惧IA類
羽状の外鰓と幅広い頭部を持つ、水中を漂うメキシコサンショウウオの成体。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

計測値

寿命
≤ 17 年
分類
門
Chordata
綱
Amphibia
目
Caudata
科
Ambystomatidae
属
Ambystoma
種
Ambystoma mexicanum

仔生の姿のまま大人になる、そんな不思議な両生類がメキシコサンショウウオです。多くのサンショウウオは幼生期にのみ持つ外鰓を、この種は性成熟した後も保持し続けます。変態を経ずに繁殖可能になる「ネオテニー(幼形成熟)」と呼ばれる現象の代表例として知られています。

分類学的には有尾目アンビストマ科に属する両生類で、メキシコシティ周辺に古くから存在した水路網を原産地とします。生息地の破壊が進んだ結果、IUCNのレッドリストでは「絶滅危惧IA類(Critically Endangered)」に分類されています。

タイガーサラマンダーの幼生や、ムドパピーなど、他のネオテニー種と外見が似ているため、野生下では見分けが難しい動物でもあります。愛らしい笑顔のような顔立ちの裏には、両生類としては異例の再生能力や進化の歴史が隠されています。

識別と外見

最大の識別点は、成体になっても頭の後ろから伸びる3対の外鰓を保持し続けることです。これはメキシコサンショウウオが変態せずに性成熟するネオテニーの特徴で、多くのサンショウウオが成体になると鰓を失うのとは対照的です。

体長は生後18〜27か月で性成熟に達した個体で15〜45センチメートルの幅があり、23センチメートル前後が最も一般的です。30センチメートルを超える個体は稀です。頭部は幅広く、瞼のない目を持ち、四肢は未発達で細長い指を備えています。頭部の後ろから伸びる3対の外鰓の柄には表面積を広げる房状の突起があり、水中の酸素を取り込みます。鰓の下には鰓孔が隠れており、鰓耙が餌の侵入を防ぎながら水を濾過する仕組みになっています。

野生型の体色は褐色または黄褐色の地に金色の斑点とオリーブがかった色調が入るのが基本ですが、黒色素胞の大きさや密度を変化させることで、周囲の環境に合わせて体色をわずかに調整できます。突然変異による色彩変異も豊富で、黒目に淡いピンクの体を持つ「リューシスティック」、黒目に灰色の体の「キサンティック」、赤目に白〜淡いピンクの体の「アルビノ」、金色の斑点を欠く黒〜濃い青の「メラニスティック」などが知られ、ペット市場ではこれらを掛け合わせた個体も一般的です。

雌雄の判別は総排出腔の形状で行い、オスは乳頭状の突起に縁取られた膨らんだ総排出腔を持ちます。メスは産卵期が近づくと体幅が明らかに広くなります。歯はほとんど目立たない痕跡的なもので、他のサンショウウオが変態時にのみ発達させる歯とは異なります。近縁のタイガーサラマンダーの幼生や、ムドパピーとは外見が非常に似ているため、混同されることがあります。

分布と生息地

メキシコサンショウウオの原産地は、メキシコシティ周辺のメキシコ盆地にあった古い水路網です。歴史的にはチャルコ湖とソチミルコ湖という2つの高地湖に生息していましたが、チャルコ湖は飲料水確保のために完全に干上がり、現在はソチミルコ湖の運河網の一部が残るのみです。標高はおよそ2,274〜2,290メートルに達します。

好む環境は水生植物が豊富な、深く緩やかな水路や湖沼です。水温は年間を通じて20℃を超えることはほとんどなく、冬季には6〜7℃まで下がることもあります。チャプルテペック公園内の人工湖でも個体群の生息が確認されています。

GBIFへの観察報告数を月別に見ると、1月に74件と最も多く、9月にも40件という小さな山が見られますが、これはあくまで観察された回数であり、個体数や生息密度、生息域全体を示すものではない点に注意が必要です。

Ambystoma mexicanumの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
74
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

メキシコサンショウウオは単独で生活し、日中でも夜間でも活動が見られる動物です。特定の時間帯に活動が偏らない点は、完全水生で外敵の少ない安定した環境に適応してきた結果と考えられます。

泳ぐことに適した体をしており、必要なときは活発に動き回りますが、普段はほとんど動かずに水底や水草の陰でじっとしていることが多く、機会があれば素早く反応する待ち伏せ型の生活様式をとります。

コミュニケーション

メキシコサンショウウオのコミュニケーションは、視覚的な合図と化学的な合図が中心で、特に繁殖期のフェロモンを介した化学的シグナルが重要な役割を果たします。繁殖期以外はほとんど、あるいはまったく個体間のコミュニケーションを行いません。

周囲の環境を把握する際には視覚と嗅覚に加えて、水中の微弱な電場を感知する能力も利用しており、これによって獲物の位置を探ることができます。

狩りと食性

メキシコサンショウウオは生息環境における頂点捕食者で、匂いを頼りに獲物を探し出します。獲物を見つけると素早く口を開いて吸い込むように捕らえる「吸引摂食」を行い、その瞬間に鰓耙が鰓孔を閉じて餌が逃げるのを防ぎます。

捕らえられるものは基本的に何でも食べる貪欲な肉食動物で、軟体動物、魚類、甲殻類を含む節足動物、水生昆虫、環形動物(ミミズなど)、動物プランクトンなどを捕食します。共食いをすることも知られており、同種の幼生や成体を襲うこともあります。

繁殖と生活史

求愛行動はアンビストマ属に共通するパターンをたどり、オスとメスが互いの総排出腔付近を鼻先で突き合った後、体を回転させながら円を描くように動く「ワルツ」を行います。続いてオスは体の後部と尾を波打たせながら前進し、メスがそれについていきます。

オスは尾を激しく震わせながら精子の入ったゼリー状の精包を水中の基質上に置き、その後前方に体長1つ分ほど移動します。メスは精包の上に移動して同じように尾を震わせ、総排出腔で精包を取り込んで体内受精を行います。繁殖形式は特定の相手に固定されない乱婚型です。

野生では主に3月から6月にかけて繁殖し、1回に100〜300個の卵を岩や水草などの基質に1つずつ付着させて産みます。カエルの卵のように塊にならないのは、卵が高い酸素要求量を持つためと考えられています。卵はゼリー状の保護膜に包まれており、10〜14日ほどで孵化します。

孵化した幼生は生まれた直後から独立して生活し、親による保護は一切行われません。性成熟は次の繁殖期、生後およそ1年で迎え、寿命は飼育下で17年に達することが記録されています。

個体数と生態的役割

メキシコサンショウウオは原産地の生態系においてかつて頂点捕食者の地位を占めており、食物網の構造を左右する重要な存在でした。捕食者としての役割を通じて、下位の生物群集の個体数や種構成に影響を与えてきたと考えられています。

保全と脅威

IUCNレッドリストでは「絶滅危惧IA類(Critically Endangered)」に分類されており、これは野生での絶滅リスクが極めて高いことを意味します。ワシントン条約(CITES)附属書IIにも掲載され、国際取引が規制されています。

最大の脅威は生息地の消失です。かつての生息地であったチャルコ湖は飲料水確保のために完全に干上がり、ソチミルコ湖も都市の拡大による開発の圧力を受け、運河や湿地の断片としてしか残っていません。さらに、外来の捕食性の魚類が持ち込まれたことで、卵や幼生が捕食される被害も深刻です。

水質の悪化も大きな要因です。ソチミルコ湖では窒素とリンの比率が低く、クロロフィルaの濃度が高いという、酸素の乏しい富栄養化した水質が確認されています。周辺の農業で使われる殺虫剤も流出水を通じて湖に流れ込み、卵や幼生の死亡率を高めるほか、生き残った個体にも形態や行動の異常を引き起こしています。個体数の激減は遺伝的多様性の喪失にもつながっており、近交弱勢や適応力の低下を招く「ボトルネック」が繰り返し起きてきたと考えられています。1998年には1平方キロメートルあたり6,000匹だった個体数が、2003年には1,000匹、2008年には100匹まで減少し、2013年の調査では野生個体が一切見つかりませんでした。翌月になってようやく運河で2匹が発見されています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

絶滅危惧IA類

文化的意義

アステカ文化において、メキシコサンショウウオは神聖な動物とされていました。伝説では、生贄にされることを恐れた神ショロトルが自らをこの姿に変えて逃れたとされ、その名前の由来になったと伝えられています。かつては「トラピケ」と呼ばれるタマレ料理の具材として食用にもされ、その脂肪は伝統医療にも利用されてきました。

現代のメキシコでも文化的な存在感は健在です。ディエゴ・リベラの1951年の壁画「水、生命の起源」をはじめメキシコシティ各所の壁画に描かれ、2017年には同市の公式絵文字にも選ばれました。2021年発行の50ペソ紙幣にも図案として採用され、国際紙幣協会の「今年の紙幣」に選出されています。

日本でも1980年代の日清食品のマーケティングキャンペーンをきっかけに「ウーパールーパー」という愛称で広く知られるようになりました。ポケモンの「ヌオー」やミズゴロウ系統、映画『ヒックとドラゴン』の「トゥースレス」のデザインにも影響を与えたとされ、フリオ・コルタサルの短編小説「アホロートル」の題材にもなりました。

豆知識

  1. 2018年に解読されたメキシコサンショウウオのゲノムは320億塩基対に及び、当時解読された動物の中で最大のゲノムでした。ヒトゲノムの約10倍の大きさですが、タンパク質をコードする遺伝子の数はヒトとほぼ同じ23,251個です。
  2. 2019年には、くじら座の方向にある恒星に「アホロトル」という名前が付けられました。
  3. ゲーム『マインクラフト』には2020年に登場し、絶滅危惧種への関心を高める意図で洞窟の生き物として描かれています。

生態

生息地

  • 湿地
  • 山地
  • 淡水

食性

  • 肉食

行動

  • 夜行性
  • 捕食者
  • 単独性
  • 水生

写真

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羽状の外鰓と幅広い頭部を持つ、水中を漂うメキシコサンショウウオの成体。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of LifeAnimal Diversity WebAnAge