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チリマツ

Araucaria araucana

傘状の樹冠と、鋭い三角形の鱗状の葉が枝を密に覆う、高さ30メートルを超えるチリマツの成木。写真: Sara Navarro、CC BY

ひと目でわかる

主な特徴
森林山地高木
分類
門
Tracheophyta
綱
Pinopsida
目
Pinales
科
Araucariaceae
属
Araucaria
種
Araucaria araucana

Araucaria araucana(チリマツ)は、針葉樹の中でも屈指の耐寒性を誇り、マイナス20℃の低温にも耐えることができます。この特性は同じアラウカリア属の中でも群を抜いており、原産地から遠く離れた寒冷な地域でも植栽が可能な数少ない南半球の樹木です。

本種は裸子植物のアラウカリア科(Araucariaceae)に属する針葉樹で、チリ中南部からアルゼンチン西部にかけてのアンデス山脈に自生します。高さ30〜40メートル、直径1〜1.5メートルに達する高木で、伐採や森林火災などによって生息数が減少し、保全上の懸念がある樹種とされています。

マプチェの人々にとって神聖な木であり、種子(ピニョン)は重要な食料としても利用されてきました。独特な傘状の樹冠と鋭い鱗状の葉を持つ姿は、南米の山岳地帯を代表する景観の一つとなっています。

識別と外見

チリマツを見分ける最大の特徴は、硬く鋭い三角形の鱗状の葉が枝全体を密に覆っている点です。葉は長さ3〜4センチメートル、基部の幅1〜3センチメートルで、縁と先端が鋭く尖っています。Lusk(2001)によれば、この葉は最長24年間も枝に付いたまま生き続けるため、古い枝を除く木のほぼ全体が葉で覆われます。

成木は高さ30〜40メートル、幹の直径1〜1.5メートルに達する大型の針葉樹です。樹皮は厚く最大15センチメートルに達し、これは森林火災に対する適応と考えられています。

本種は基本的に雌雄異株で、雄花(花粉錐)と雌花(種子錐)は別々の木につきますが、まれに両方の錐をつける個体も見られます。雄花はきゅうり形で、最初は長さ4センチメートルほどですが、花粉放出時には長さ8〜12センチメートル、幅5〜6センチメートルまで成長します。雌花は球形で直径12〜20センチメートルと大きく、約200個の種子を含みます。受粉から約18ヶ月後の秋に成熟すると、錐は崩壊して長さ3〜4センチメートルの堅果状の種子を放出します。

分布と生息地

チリマツは、チリ中南部からアルゼンチン西部にまたがる南中央アンデス山脈の山麓斜面に自生し、標高およそ1,000〜1,700メートルの範囲に分布します。チリ沿岸山脈では、南緯38度30分に位置するビラ・ラス・アラウカリアス付近、標高640メートルまで南下して確認されています。

生育地では、落葉性のNothofagus pumilioと混交林を形成することが多く、チリマツの高い樹冠がその林冠を突き抜けて突出する独特の景観を作り出します。若い個体は広い円錐形または三角形の樹形をしていますが、成長するにつれて成木特有の傘状の樹冠へと変化していきます。

土壌は水はけの良い、やや酸性の火山性土壌を好みますが、排水が良ければほぼどのような土壌でも耐えることができます。実生は競争力が弱く、林冠の隙間や開けた孤立地でなければ生存が難しいとされています。一方、Chusquea culeou、Nothofagus dombeyi、Nothofagus pumilioなどが優占する場所では、これらの植物に競り負けるため、チリマツはほとんど見られません。

GBIFに登録された月別の観測記録では、4月(691件)や1月(532件)に多くの記録が見られ、11月(198件)には少なくなる傾向があります。ただしこれらはあくまで観測記録の存在を示すものであり、個体数や生息密度を反映するものではない点に注意が必要です。

Araucaria araucanaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
691
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

繁殖と生活史

チリマツは風媒花で、雄花から放出された花粉が雌花に届いて受粉します。受粉から約18ヶ月後の秋に種子錐が成熟し、崩壊して1個あたり約200個の種子を放出します。この種子生産は不定期にまとめて行われる「マスティング」と呼ばれる現象を示すことが知られています。

種子の分散には、齧歯類が重要な役割を果たします。特に長毛ネズミ(Abrothrix longipilis)は最も重要な分散者とされ、他の動物と異なり種子をそのまま地中に埋める行動を取るため、発芽に適した場所への埋設が定着を助けています。

オウギヒワインコも種子の分散を担う重要な存在です。成木は火山活動などの大規模な生態的攪乱に対して高い耐性を持ちますが、こうした攪乱が起きた後には、このインコが被害を受けた地域から遠く離れた場所へ種子を運び、森林の再生を助けます。

利用と人との関わり

チリマツはチリで「ペウェン(Pehuén)」と呼ばれ、マプチェの人々にとって高い宗教的・文化的意義を持つ神聖な存在です。種子(ピニョン)は重要な食料源として利用されており、知恵や強さ、深い結びつきを象徴する木としても位置づけられています。

かつては長く直立した幹が高く評価され、耐久性と耐腐朽性に優れた木材として港湾関連の鉄道枕木や、ベニヤ板・合板などの製品に加工されていました。しかし1990年に伐採が法律で禁止されて以降、木材としての利用は稀になっています。現在はワシントン条約(CITES)附属書Iに掲載され、野生採取個体の商業取引は国際的に禁止されています。

観賞用としても人気が高く、マイナス20℃程度まで耐える高い耐寒性から、ヨーロッパ中西部(北はフェロー諸島やノルウェーのスモーラ島まで)、北米西海岸(アラスカのバラノフ島まで)や東海岸(ロングアイランドまで)、南半球では原産地より南のチリ南部、さらにはニュージーランドや南東オーストラリアなど世界各地で植栽されています。19世紀にはウィリアム・ロッブがチリ・アラウカニア州で採取した種子をイギリスに持ち帰り、現在ではノーサンバーランドのカイロー・ウッズなどで自然に定着した若木も見られます。

保全と脅威

チリマツにとって最大の脅威は長年にわたる伐採でしたが、1990年に法律で禁止されました。しかし2001〜2002年には大規模な森林火災が発生し、国立公園内を含む数千エーカーのアラウカリア林が焼失し、樹齢1,300年を超える古木も失われました。

過放牧や外来樹種の侵入も深刻な脅威です。地元住民による種子(ピニョン)の大量採取は、新たな苗木の発生を妨げる要因となっています。外来の種子食性哺乳類が本種の繁殖を大きく制限するとの指摘がありますが、実際には在来種による種子破壊の方が影響が大きいとする研究もあり、外来種の影響度についてはまだ明確な結論が出ていません。

小規模農家や大手木材会社による牧畜活動も、稚樹の更新に大きな悪影響を及ぼすことが確認されています。これらの複合的な圧力により、チリマツの自然な世代更新は各地で困難になっています。

1990年の伐採禁止に加え、CITES附属書Iによる国際取引の規制も本種の保護に寄与しています。Global Trees Campaignによる植樹プロジェクトでは2,000本の苗木が植えられ、10年後の生存率は90%に達したことが報告されています。

豆知識

  1. チリを訪れたヨーロッパ人はその枝の広がりから「モンキーパズル」と名付けたとされ、木に挑もうとしたサルが枝の迷路に困惑したという言い伝えが名前の由来と言われています。
  2. マプチェの伝承では、チリマツの前を通るときに話すと不運が訪れたり、サルのような尾が生えてしまうと信じられています。
  3. 種子(ピニョン)は松の実に似ていますが、はるかに大きく、焙煎した種子は木によって長さ5センチメートルや3センチメートルにも達します。
  4. チリマツはチリの国樹とされ、マプチェの人々の伝統や文化の中で今も特別な存在として扱われています。

生態

生息地

  • 森林
  • 山地

生育型

  • 高木

写真

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傘状の樹冠と、鋭い三角形の鱗状の葉が枝を密に覆う、高さ30メートルを超えるチリマツの成木。写真: Sara Navarro、CC BY

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of Life