チャセンシダ(Asplenium trichomanes)は、ほぼ世界中の岩場で見つかる小型のシダです。
Asplenium属に属する小型のシダで、イノモトソウ科ではなくチャセンシダ科に分類されています。温帯から亜寒帯を中心に広く分布し、山地の熱帯地域にも生えています。岩の種類や環境に合わせて姿を変えるため、いくつかの亜種に分けられています。
身近な石垣や崖にも生えるため、観察しやすいシダとして親しまれています。岩の割れ目で暮らす仕組みや、種内の多様さに注目すると、読みごたえのある植物です。
識別と外見
葉の形がもっとも見分けやすい特徴です。細長い葉の両側に、丸みのある小さな裂片(羽片)が並んでいます。
株は高さ10〜30センチメートルほどに育ち、葉の長さは多くが8〜20センチメートル、最大で40センチメートルに達します。葉は黄緑色から濃い緑色で、一年中緑を保つ常緑性です。葉柄と葉軸は全体にわたって暗い色をしています。
裏側の胞子囊群は、羽片ごとに4〜8個ほど並びます。それぞれは最大で3.5ミリメートルほどの長さで、細長いものから楕円形のものまであり、まっすぐな包膜が付いています。
分布と生息地
チャセンシダは、温帯や亜寒帯を中心に、ヨーロッパのほぼ全域から、トルコ、イラン、ヒマラヤにかけてのアジアの広い範囲に分布しています。イエメンにも生育地があります。アフリカでは北部、南部、東部の一部に見られ、インドネシア東部、オーストラリア南東部、タスマニア、ニュージーランド、ハワイにも分布します。
アメリカ大陸では北米と中米、キューバ、南米の北部や西部(チリなど)まで広がっています。分布域は広いものの、もともと見つかりにくい種で、適した生育地が点在するため、個体群はそれぞれ離れて分かれて暮らしています。
生育地は崖、崩れた石の斜面、石垣、鉱山の廃石などの岩場です。岩の種類は亜種によって異なります。標高は、北米では海抜0メートルから3000メートルまで、イギリス諸島では870メートルまで見られます。
アメリカのミネソタ州では、湿った東向きの崖の棚や割れ目に生えます。この州では絶滅のおそれがある種として扱われています。一年の中では6月から7月にかけて見つかる例が多く、この時期に姿を確認しやすいようです。

成長と形態
チャセンシダは多年生のシダで、岩の表面や割れ目に根を張って暮らすことから、岩生植物とも呼ばれます。株は短くて鱗片に覆われた根茎から立ち上がり、小さな株立ちになります。
成熟した株の高さは10〜30センチメートルほどです。葉は常緑で、冬でも緑を保ちます。葉の長さは多くが8〜20センチメートルで、大きいものでは40センチメートルに達します。
根茎は短く、岩の割れ目に密着して育つため、株は少しずつ横に広がりながら大きくなっていきます。
生態と関わり
チャセンシダは、岩場の鳥にとって身近な食べ物になっています。ハト類、アトリ科のヒワ類やイカル類、キジ類、カモ類、ガン類などの鳥が、この植物を食べることが知られています。特に目立つのは、ハト類とヒワ類です。
生育する場所は、湿り気があり、日当たりが弱めの岩場です。東向きの崖や日陰になりやすい石垣など、直射日光が強く当たりすぎない割れ目を好みます。岩の種類によって生える亜種が変わるため、環境の違いに合わせて分かれて暮らしています。
岩の割れ目という限られた場所に根を張るため、周囲の環境が大きく変わると生育できなくなります。湿った崖や石垣が残る場所で見つかることが多いのは、そのためです。
利用と人との関わり
チャセンシダは、庭で楽しまれる植物です。耐寒性が強く、約マイナス20℃まで耐えるとされています。常緑の葉が一年中楽しめることや、石垣の割れ目に根付く性質が、庭づくりに向いているとされています。
日陰から半日陰を好むため、建物の北側や木陰の石積みなどで育てやすい植物です。英国王立園芸協会のガーデン・メリット賞を受けており、園芸の世界で評価されています。
食用や薬用として利用されているという情報はなく、観賞用として楽しまれている植物です。
豆知識
- 属名のAspleniumは、ギリシャ語の「アスプレノン」に由来すると言われており、この言葉は昔から脾臓と結び付けて考えられてきました。
- 葉の羽片が動くことが知られています。同じように葉が動くことで知られるCodariocalyx motoriusは縁の遠い植物ですが、似た動きを見せることで比べられます。
- 染色体の数は二倍体で72本です。亜種が多く、岩の種類によって生える種類が分かれています。
写真
写真の提供元はvia iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Sean D Sipple via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by James H. Thomas via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Mykola Borysenko via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by 曾昱承 Yu-Cheng Zeng via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。
生態と分類
分類
- 門
- Tracheophyta
- 綱
- Polypodiopsida
- 目
- Polypodiales
- 科
- Aspleniaceae
- 属
- Asplenium
- 種
- Asplenium trichomanes
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- Plants of the World Online Native range, life form and climate (WCVP)
- GloBI What it eats, what eats it, parasites and pollinators
- trophiCH



