ナイルワニ(Crocodylus niloticus)は、体長が最大で、体重がに達することもある大型のワニです。
アフリカのサハラ以南を中心に、東部・南部・中部の淡水域に広く分布しています。湖、川、沼、湿地など多様な水辺に暮らし、ケニアのトゥルカナ湖には手つかずの大きな個体群の一つがあります。
国際的には軽度懸念に分類されており、現在も広い範囲で生き残っています。飼育下の例を含めると、最長で生きることが知られています。アフリカの水辺の生態を理解するうえで欠かせない大型爬虫類です。
識別と外見
成体の体色は暗い青銅色で、背中には薄れた黒っぽい斑点や縞が現れます。腹側は黄色みを帯びた汚れた白色です。ただし泥で体色が隠れることも多くあります。体の側面は黄緑色で、斜めに並ぶ暗い斑紋がさまざまな模様を作ります。目は緑色です。
体色は生息環境によっても変わります。流れの速い川にすむ個体は、濁った湖や沼にすむ個体より明るい色をしています。この違いは周囲の環境に溶け込むための保護色になっています。
幼体は灰色、褐色、または多色で、尾と体に暗い横縞があります。お腹は黄緑色です。成長すると体色は暗くなり、特に上半身の横縞が薄れていきます。
ワニ類に共通する体の特徴もよく備えています。短く開いた4本の脚、長く力強い尾、背中と尾に並ぶ骨板を持つ硬い鱗、そして細長く強靭な顎です。口には64〜68本の鋭い円錐形の歯があり、下顎の第4歯は閉じた口の外からも見えます。吻は幅のおよそ1.6〜2.0倍の長さがあります。
分布と生息地
ナイルワニは、スーダンやエジプトのナイル川支流から、アンゴラのクネネ川、ボツワナのオカバンゴ・デルタ、南アフリカのオリファンツ川まで分布しています。アフリカで最も一般的なワニで、ソマリア、エチオピア、ウガンダ、ケニア、コンゴ民主共和国、タンザニア、ザンビア、ジンバブエなど多くの国に生息しています。
生息地の幅はとても広く、小さな汽水の小川、流れの速い川、沼、ダム、潮の影響を受ける湖や河口にも見られます。東アフリカでは、川、湖、湿地、ダムに多く、小さな水域より開けた広い水面を好みます。サバンナや半砂漠に近い水辺にも、森林の湿地や川沿いの林にも適応しています。
地中海沿岸のリビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコや、紅海を越えたパレスチナ地方とシリアにも、かつては分布していました。ギリシャの歴史家ヘロドトスは、エジプトのモエリス湖でこのワニを見ています。
マダガスカルにも隔離された個体群があり、島の西部と南部のサンビラノ川からトラニャロまで生息しています。この島では洞窟で暮らす個体群も知られています。また、南フロリダでは野生の個体が捕獲されていますが、野生で繁殖している証拠は見つかっていません。

行動と暮らし
ナイルワニは基本的に夜に活動しますが、日中も水辺で過ごします。晴れた日には、午前9時から午後4時ごろまで口を開けたまま日なたで体を温める個体が多く見られます。真昼の暑さで口を縛られると、過熱して死ぬこともあります。口を開けた姿は体温調節だけでなく、ほかのワニへの威嚇にもなります。夜間に口を開けている個体も確認されています。トゥルカナ湖では、日中にほとんど日光浴をせず、浅瀬の水面に体の一部を出して静止する姿が見られます。
乾燥した寒い季節には、南部の個体が穴を掘って休眠に似た状態に入ります。ロイヤル・ナタル国立公園の調査では、体長60〜90 cmの若い個体が深さ1.2〜1.8 mほどの穴を掘り、最長では3.65 mの穴も見つかっています。この時期は5月から8月にあたります。体の大きな個体だけが、暖かい日に穴から出て日光浴をします。
普段は数分間ほど潜りますが、危険を感じると30分ほど水中を泳ぎ続けられます。完全に動かずにいれば最長で2時間息を止めていられます。陸上では通常は腹ばいで進みますが、体を持ち上げて歩くこともでき、小さい個体は駆け足もできます。短い距離なら時速14 kmほどの瞬発力を見せます。水中では体と尾をくねらせて泳ぎ、最高で時速30〜35 kmに達します。
このワニは胃に石を飲み込むことが広く知られています。胃石は生まれたばかりの個体にはありませんが、体長2〜3.1 mほどの個体で増え、大型になるとまれになります。体長3.84 m、体重239 kgの個体は、胃に5.1 kgの石を持っていました。石を飲み込む理由は、はっきりとはわかっていません。
狩りと食性
ナイルワニは、生息地のほぼすべてで頂点捕食者です。狩りの大半は待ち伏せによるもので、獲物を数秒のうちに捕まえなければなりません。ふだんは水中にほぼ体を沈め、目と鼻先だけを水面から出して静かに近づきます。獲物が水辺に来たところで、突然水から飛び出して獲物をつかみます。高い所にいる獲物には、頭と上半身を水上に大きく出して狙うこともあります。
歯は肉を裂くためではなく、獲物に深く突き刺して離さないために使います。大型の成体は非常に強い咬む力を持ち、獲物が逃げられないようにします。小さな獲物は、そのまま飲み込まれることもあります。大きな獲物は、体の重さと力を使って水中に引き込み、溺れさせるか、激しく頭を振って仕留めます。仲間と協力して、獲物を引き裂くこともあります。
亜成体や小型の成体は、体と尾を使って魚の群れを岸へ追い込み、頭を横に素早く振って魚を捕らえます。尾で陸上の獲物のバランスを崩し、水中に押し込むこともあります。魚が川を渡る時には、川を横切る半円形の隊列を組んで魚の進路をふさぐこともあります。群れの中では最も優位な個体が最初に食べます。
ライオンやヒョウなどの獲物を横取りしたり、死肉をあさったりすることもあります。食物を求めて、水辺から数百メートル離れた場所に集まる群れも見られます。若い個体は、成体より活発に餌を探すことが、ウガンダやザンビアの調査で示されています。成体の胃が空の割合も高く、トゥルカナ湖では48.4%の個体の胃が空でした。抱卵中のメスの胃は必ず空で、数か月は食べずに過ごせます。
営巣と繁殖
ナイルワニは卵を産む動物です。性成熟は一般に12〜16年ごろです。オスは体長約3.3 m、体重155 kgほどで成熟し、その大きさはほぼ一定です。メスの成熟は個体群によって差があり、南部アフリカの平均は体長約2.33 mです。
繁殖期になると、オスは吠え声をあげ、水面で鼻先を叩き、水を鼻から吹き上げるなど、さまざまな音や動作でメスを引きつけます。大きなオス同士は縄張りをめぐって激しく争い、勝ったほうが残りますが、負けたほうは深い水中へ去ります。メスが受け入れると、二頭は鳴き合い、顎の下を互いにこすり合わせます。交尾は荒っぽく、オスが水中でメスを押さえつけることもあります。ある地域では、オスが縄張りに入ったメスと複数交尾することもありますが、多くの地域では一夫一婦制がふつうです。
交尾の1〜2か月後に、メスは産卵します。産卵は年を通して見られることがあります。分布の北端のソマリアやエジプトでは12月から2月、南端の南アフリカやタンザニアでは8月から12月に産卵します。その中間の地域では、4月から7月に産卵が集中します。いずれも乾季の1〜2か月目にあたります。
メスは巣を作り、の卵を産みます。卵の数は親の大きさによって変わり、体長約2.75 mのメスは35個を超える卵を産むことはまれで、体長約3.64 mのメスは最大95個の卵を産むことがあります。メスの産卵は年にほどで、多くのメスは2〜3年に一度しか産卵しません。
個体数と生態的役割
南アフリカのレイクシバヤでの研究では、20世紀に皮革取引で減った個体群が、21世紀になっても迫害のために回復していないことが示されています。個体群の多くは、狩猟者から守られた環境でのみ安定していると考えられます。
寄生虫では、線虫の仲間やマイコプラズマの仲間が主な寄生者です。なかでもMycoplasma crocodyliとTrichinella zimbabwensisが多く見られます。トリパノソーマの仲間や吸虫の仲間も寄生しますが、これらは一般的ではありません。
保全と脅威
ナイルワニは国際的に軽度懸念に分類されています。ただし、かつては大きく数を減らしました。1940年代から1960年代にかけて、質の良い革を求めて大規模に狩られ、絶滅が心配されるほどになりました。1950年代から1980年代にかけては、およそ300万頭が革の取引のために殺されたと推定されています。
今日の野生の個体数は、およそ25万〜50万頭と見積もられています。国内法や国際的な取引規制により、多くの地域で個体群は回復しています。特にエチオピア、ケニア、ザンビア、ジンバブエなどでは、強い個体群が保たれています。ただし回復はゆっくりで、繁殖が続くほどの個体群を持つ地域はまだ限られています。
主な脅威は生息地の減少、汚染、狩猟、そして漁網への混獲などの人間活動です。国際的な取引規制では、大半の地域で最も厳しい区分に入っていますが、残りの地域では取引を管理したうえで、野生からの皮の採取量を年間の上限で定めています。
南アフリカやジンバブエでは、皮と肉を得るためにワニの養殖と持続可能な利用が行われています。1993年には8万枚のワニの皮が生産され、その多くはジンバブエと南アフリカの養殖場からのものでした。中央アフリカと西アフリカでは個体群の状況がより厳しく、十分な調査もされていません。エジプトでは20世紀のどこかで繁殖個体が消えましたが、アスワン・ダム周辺では再び定着しています。
写真
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生態と分類
分類
- 門
- Chordata
- 綱
- Crocodylia
- 科
- Crocodylidae
- 属
- Crocodylus
- 種
- Crocodylus niloticus
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- AnAge Longevity
- The Reptile Database Reptile distribution and common names
- ReptTraits Reptile size, lifespan, clutches or litters, habitat and habits
- GloBI What it eats, what eats it, parasites and pollinators
- Wardeh et al. 2015 (EID2)
- HWML Parasite Collection


