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クロヅル

Grus grus

軽度懸念

クロヅル(Grus grus)は、ツル科に属する鳥で、最長でほど生きた例が知られています。ヨーロッパで普通に見られるツルは本種だけで、ユーラシア大陸の北部から中部にかけて広く繁殖します。

国際自然保護連合(IUCN)の評価は軽度懸念です。ツルの中で絶滅のおそれが低いとされる4種の一つに数えられ、世界的には個体数が多い状態です。一方で、一部の地域では繁殖地から姿を消した場所もあり、英国では再導入の取り組みが続いています。

渡りの大群や、つがいで踊る求愛のダンスなど、ツルらしい行動が豊富に見られる鳥です。

識別と外見

最も見分けやすい特徴は、体の大部分が灰色で、大雨覆いの羽が垂れ下がってふさふさとした飾り羽になっていることです。風切羽や尾の先端、翼の一部は黒く、目の後ろから背中の上部へ白い線が伸びます。頭の前側は黒っぽく、頭頂には羽のない赤い皮膚が見えます。

全長は100〜130cm、翼を広げると180〜240cmです。体重は3〜6.1kgの範囲にあり、基亜種の平均は約5.4kg、東方の亜種(Grus grus lilfordi)は約4.6kgです。オスはメスより少し大きく重く、体の大きさの性差は体重で最も大きく出ます。

幼鳥は体の羽の先が黄褐色で、垂れ下がる風切羽や首の鮮やかな模様がなく、頭も羽で覆われています。成鳥は渡りの前に全身の羽を換え、新しい羽が生えそろうまでの約6週間は飛べなくなります。

アジアの近縁種であるGrus monachaやGrus nigricollisとは、この体色の組み合わせで区別されます。飛行中や求愛のディスプレイでは、遠くまで届く鋭い鳴き声を響かせます。

分布と生息地

繁殖分布はヨーロッパからシベリアを含むユーラシア北部に広がります。最も大きな繁殖群はロシア、フィンランド、スウェーデンにあり、南部や西部のヨーロッパでは珍しい繁殖鳥です。英国とアイルランドでは、数百年前に繁殖地から消えた後に戻ってきており、アイルランドでは2021年以降に繁殖しています。ロシアでは東はチュクチ半島まで、アジアでは南は中国北部、トルコ、コーカサス地方まで繁殖します。

欧州で繁殖する個体の多くは、冬をポルトガル、スペイン、北アフリカで過ごします。秋の渡りは繁殖地では8〜10月、越冬地では10月下旬から12月初めです。春は越冬地で2月から3月初め、繁殖地では3〜5月に移動します。気候変動によって渡りの時期は変わりつつあります。

途中の中継地は、スウェーデン、オランダ、ドイツから中国にまでわたり、カスピ海の周辺には大きな中継地があります。秋には1日に数千羽が見られることもあります。東欧で繁殖する個体は、スーダン、エチオピア、チュニジア、エリトリアの川沿いで冬を過ごし、中央ロシアで繁殖する個体はインド亜大陸の北部やパキスタンで越冬します。最も東で繁殖する個体は中国東部で冬を過ごし、そこでは最も普通に見られるツルになることもあります。渡りの群れはV字の編隊で飛びます。

ヨーロッパでは、亜寒帯のタイガ林や混交林が主な繁殖地で、海抜0mから2,200mまで分布します。北部では樹木のない湿原やヒースの低木地に営巣し、近くに小さな湖や池があることが多いです。スウェーデンでは松林の中の湿った小さな空き地、ドイツでは湿地が使われます。ロシアではステップや半砂漠でも、近くに水があれば営巣します。繁殖密度は低く、100km²あたり1〜5つがいほどです。静かで人の手が入らない環境を好みます。

冬には、浸水した地域や波の穏やかな入り江、湿った草地に集まります。換羽期には浅い水域や背の高いヨシ原が隠れ場所として必要です。渡りの時期が過ぎると、耕作地を含む開けた土地やサバンナに似た環境で越冬するようになり、イベリア半島がその一例です。

Grus grusの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
424,332
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

繁殖期以外のクロヅルは社会性が強く、渡りの時期には最大400羽ほどの群れで飛ぶことがあります。中継地では数千羽が一度に集まることもあります。群れは固定された集団ではなく、多くの目で安全を確保し、よい採餌場所やねぐらを互いに知らせ合う仕組みです。若い鳥や繁殖しなかった鳥は、秋に最初に渡りを始めることが多く、その時期に集まって移動します。渡りの飛行では、最高で1万mの高さまで上がることがあり、鳥類ではルッペルハゲワシに次ぐ高さです。

採餌量が一時的に落ちたときは、ほかの個体から餌を奪って取り戻すことがあります。とくに群れの密度が高いと妨害が増え、群れ全体の採食率が下がります。日中の摂取量は夜明け後と夕方前に増える傾向があります。冬には餌の効率を多少犠牲にしてでも群れにとどまる傾向があり、採餌の効率と群れにいる利点を天秤にかけているように見えます。

冬には、優位な個体が餌と仲間の多い新しい採餌場所を選び、劣位の個体は鳥の少ない場所へ移る傾向があります。優位な個体は好みの採餌域に強く執着し、劣位の個体は移動が多く、場所を頻繁に変えます。新しい採餌域へ移る朝には、優位な個体のほうがねぐらを遅く出ます。

一部の家族群は冬の間も採餌域を変えず、子を育てられるだけの餌がある限り採餌縄張りを確保します。日中はほかの家族群から縄張りを守り、夜には共同のねぐらに多くの鳥と集まります。

録音

食性と栄養

クロヅルは雑食ですが、主に植物を食べます。根、根茎、塊茎、茎、葉、果実、種子などが中心です。そのほかにも、池の水草、ヒースの実、エンドウ、ジャガイモ、オリーブ、ドングリ、松の実、ピーナッツのさやなど、手に入るものを食べます。

夏の繁殖期には動物質の食べ物が重要になり、主な食べ物となることもあります。親は雛に食べ物を吐き戻して与えます。動物質の中心は昆虫で、とくにトンボやコオロギが多く食べられます。そのほか、カタツムリ、ミミズ、カニ、クモ、ヤスデ、ワラジムシ、魚、両生類、げっ歯類、小鳥も食べます。

陸上でも浅い水辺でも採餌し、くちばしで土や水の中を探って食べ物を見つけます。作物に被害が出る場所もありますが、冬には収穫後の畑に残った落ち穂を主に食べるため、翌年の畑を掃除する形で農家の役に立ちます。採餌、水を飲むこと、ねぐらに入ることは、つがい、家族群、冬の群れなど小さな群れで行われます。

食べられる相手としては、両生類のうち無尾目(カエル類)が主な仲間です。ほかにはげっ歯類、チドリ目の鳥、スズメ目の小鳥、有鱗目(トカゲ類)も挙げられます。

営巣と繁殖

産卵は通常5月で、それより早かったり遅かったりすることはまれです。つがいの絆は続きますが、片方が死んだ場合は翌年に新しい相手を探すことがあります。求愛のダンスは毎年春、どのつがいでも行われます。オスがメスの後ろを行進のような歩き方で続き、メスが頭を上げてゆっくり下げながら鳴き、続いてオスが長い声で応えるユニゾンの鳴き交わしが見られます。交尾も同じように劇的なディスプレイの後に行われます。攻撃的なディスプレイでは、羽を逆立てたり植物を空中に投げたり、頭の赤い部分を相手に向けたりします。

営巣地の広さは地域の環境によって変わり、2〜500ヘクタールほどです。ヨーロッパでは浅い水の中か、そのすぐ近くに巣を作り、周囲に密な岸辺の植物があることが多いです。巣の大きさや場所は分布域によって大きく異なり、北極圏の鳥は比較的小さな巣を作ります。スウェーデンでの平均的な巣は直径約90cmです。巣は数年にわたって使われることもあります。繁殖期には、泥や腐った植物で体を塗る習性が見られ、周囲の環境になじむためとみられています。この習性はAntigone canadensisと本種だけに見られます。

一腹の卵は通常2個で、1個のこともたまにあり、3〜4個はさらにまれです。初期に卵を失った場合、2週間ほど後に産み直すことがあります。抱卵期間は約30日で、主にメスが抱き、時にはオスも交代で抱きます。人が巣に近づくと、両親は注意をそらす行動を見せますが、イヌ(Canis lupus familiaris)などの地上の捕食者には、ほぼすぐに攻撃します。

ヒナは生まれた直後はほとんど無力ですが、数時間のうちに歩いて危険から離れられ、孵化後すぐに泳ぐことができ、生後24時間で親と一緒に走れるようになります。危険が迫ると茶色い綿羽で身を隠し、じっと動かず、その間は親が守ります。ヒナは走るときに翼でバランスを取り、生後9週ごろには短い距離を飛べるようになります。親は子育てをしながら換羽し、子がまだ飛べない時期に約5〜6週間飛べなくなります。越冬地のスペインで見ると、成鳥の約48%が生き残った子を連れていて、約18%は2羽の子を連れていました。野生では3〜6歳で繁殖できるようになるとされます。

個体数と生態的役割

世界の個体数は、2025年時点で約50万羽と見積もられています。繁殖の大部分はロシア、フィンランド、スウェーデンで行われており、フィンランドでは2009年時点で3〜4万つがい、スウェーデンでは2012年時点で約3万つがいがいました。

成鳥の天敵は少ないものの、オジロワシ、イヌワシなどの大型の猛禽類は、どの年齢の個体にも脅威になります。ツルはくちばしと足で反撃し、陸上でも空中でも猛禽類に反撃することがあります。イノシシやキツネなどが巣を襲う場合も、親鳥が激しく守ります。一方で、ハシブトガラスは巣の卵を盗むことがあり、ワタリガラスは小さなヒナを捕ることもあります。

クロヅルの卵やヒナを食べるのは、食肉目の哺乳類、スズメ目の鳥、偶蹄目のイノシシなどです。冬には、同じツル属の仲間や、マガン、ヒシクイといったガンの仲間と一緒に過ごすこともあります。

保全と脅威

IUCNの評価は軽度懸念で、世界的に絶滅のおそれは低いと判断されています。2025年の推定では、世界の個体数は約50万羽です。ヨーロッパ全体では個体数が増えており、かつて姿を消した国々にも戻ってきています。

ポーランドでは20世紀初めに珍しい鳥でしたが、1980年代以降に増え始め、2010〜2012年には2万〜2万2,000つがいと推定されています。ドイツでは1978年の約700つがいから2017年に1万つがいを超え、かつて繁殖していた数にはまだ遠く及びません。デンマークでは1953年に繁殖が戻り、1990年代から急増して、2022年には少なくとも750つがいになりました。

英国では17世紀に姿を消しましたが、2010年からサマセット地方で再導入が始まり、2010〜2014年に93羽が放たれました。2016年にはウェールズで約400年ぶりに野生のヒナが生まれ、2021年には英国内で72つがいに増えました。アイルランドでは2021年に300年ぶりに島内で繁殖しています。

最大の脅威は生息地の喪失と劣化で、ダム建設、都市化、農地の拡大、湿地の排水が原因です。人の生活圏に適応した地域もありますが、巣への攪乱、土地利用の変化、送電線への衝突は今も問題となっています。さらに、作物被害への報復としての駆除、農薬による中毒、卵の採取、狩猟も懸念されています。本種は、アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥協定(AEWA)の対象種の一つです。

軽度懸念

写真

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生態と分類

行動

  • 縄張り性
  • 社会性
  • 渡り性

食性

  • 雑食性

分類

門
Chordata
綱
Aves
目
Gruiformes
科
Gruidae
属
Grus
種
Grus grus

出典

  1. GBIF Species names and classification
  2. iNaturalist Photos
  3. Wikidata Common names and conservation status
  4. Wikipedia Summary extract
  5. Xeno-canto Audio recordings
  6. AnAge Longevity
  7. AVONET Bird mass, habitat, migration, diet and range size
  8. GloBI What it eats, what eats it, parasites and pollinators
  9. trophiCH
  10. Wardeh et al. 2015 (EID2)
  11. TETRA-EU