Crocus sativus(サフラン)は、野生では一切見つかっておらず、人の手による栽培だけで3500年以上にわたり命をつないできた植物です。
アヤメ科(Iridaceae)に属する秋咲きの多年草で、地下の球茎から葉や花茎を伸ばします。中国をはじめ世界各地で栽培されており、東地中海地域で雑種として生まれたとする説もあります。
花のわずか三本の雌しべから採れる香辛料サフランは、世界で最も高価なスパイスとして知られ、数千年にわたり異なる文化や文明をつないできました。その小さな花に秘められた歴史の重みこそ、この植物の最大の魅力です。
識別と外見
最も分かりやすい特徴は、薄紫色の六枚の花びらの中央から伸びる三本の赤橙色の雌しべです。この雌しべを乾燥させたものが香辛料のサフランになります。
草丈はおよそ10〜30センチメートルほどで、地下の球茎から葉、苞、小苞、そして花茎が生じます。葉は単葉で縁が滑らかで、根元に放射状(ロゼット状)に集まって伸びます。
花は秋に咲き、色は紫色を基調とし、六枚の花びらと三本の赤または橙色の雌しべを持つのが特徴です。これらの花は不稔性であり、種子を作ることはありません。
性別や季節による大きな変化の記録はなく、開花は秋の一時期に限られています。
分布と生息地
サフランは中国全土で広く栽培されているほか、世界各地でも盛んに栽培されています。栽培品種は東地中海地域で雑種として生まれた可能性が指摘されています。
生育地として確認されているのは、いずれも人が管理する栽培地であり、野生の生息地は知られていません。
観測データの月別分布を見ると、10月に333件と最も多く記録され、続いて11月に144件と、秋に観測が集中する傾向がうかがえます。これは開花期にあたる時期と一致しますが、この数値はあくまで人による観察記録の件数であり、個体数や生息密度、分布の全体像を示すものではない点に注意が必要です。

利用と人との関わり
サフランの最大の用途は、三本の雌しべを乾燥させて作る香辛料としての利用です。香りづけや着色のために世界各地の料理で使われるほか、伝統的なアジアの医療でも用いられ、含まれるアルカロイドやアントシアニン、カロテノイド、フラボノイド、フェノール類、サポニン、テルペノイド類などの生理活性成分により、大うつ病性障害を含む人々への気分改善効果が報告されています。観賞用として庭に植えられることもあります。
収穫される雌しべの大きさによって差はありますが、サフラン450グラム(1ポンド)を得るには5万本から7万5000本もの花が必要とされ、一つの球茎からは花が一輪か二輪しか咲かず、その一輪からわずか三本の雌しべしか採れません。雌しべは花が完全に開いた午前中に摘み取るのが最適とされています。
三倍体で不稔性のため、サフランは種子を作れず、人の手による球茎の分割でのみ増やされます。栽培では球茎を10センチメートル間隔で、深さ10センチメートルの溝に植え、日当たりのよい水はけのよい土壌で育てます。球茎は毎年増え、一つの球茎はおよそ3〜5年もちます。新しい品種は自然変異を選抜するクローン選抜法や、突然変異を誘発する方法、近縁の野生種との交配で得られる可稔性の二倍体を利用する方法などで作られています。ギリシャ神話では、サフランは青年クロコスと妖精スミラクスの悲恋にまつわる花とされ、古代ギリシャの宗教儀礼や女性の健康、化粧品、香水にも使われてきた歴史があります。
豆知識
- ギリシャ神話では、青年クロコスが妖精スミラクスに恋をし、悲劇的な結末を迎えた末に神々によって黄金色の花に変えられたと語られています。
- 神話の中でクロコスは、商業や群れを司る神ヘルメスの愛する友であったとも伝えられています。
- サフランは種子を作れない不稔性の三倍体植物で、球茎による栄養繁殖だけで存続してきた、最も古い栽培球根植物の一つと考えられています。
- 古代ギリシャでは、サフランの香辛料が宗教儀礼や女性の健康、化粧品、香水づくりにも用いられていました。
生態
生育型
- 草本


