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セイヨウネズ

Juniperus communis

LC軽度懸念
3枚輪生の針状の葉を持ち、青黒いろう質の球果状の果実をつけたセイヨウネズの成木写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

ひと目でわかる

主な特徴
森林林地山地ツンドラ低木
分類
門
Tracheophyta
綱
Pinopsida
目
Pinales
科
Cupressaceae
属
Juniperus
種
Juniperus communis

セイヨウネズ(Juniperus communis)は、木本植物としては地球上で最も広い分布域を持つ植物です。北半球の冷温帯に広く分布し、北極圏から北アメリカ・ヨーロッパ・アジアの北緯30度付近まで、環極(サーカムポーラー)分布を示します。

この植物はヒノキ科(Cupressaceae)に属する常緑針葉樹で、マツ目(Pinales)、マツ綱(Pinopsida)に分類されます。IUCNのレッドリストでは「低危険種(Least Concern)」に評価されており、現時点で絶滅の危機にはないとされています。

低木状に這うものから高木状に育つものまで形態が非常に多様で、極めて長寿な個体が知られていることや、古くから人々の暮らしと深く結びついてきた歴史も、この植物を特徴づけています。

識別と外見

セイヨウネズを識別する最大の手がかりは、3枚ずつ輪生する針状の葉です。葉は緑色で、内側の面に白い気孔帯が1本走っており、ネズミサシ属の他種に見られるような鱗片状の成葉になることはありません。

樹高は通常10メートル、稀に16メートルに達する小型の樹木ですが、風の強い露出した場所では這うように広がる低木状になるなど、形態は非常に多様です。

雌雄異株で、雄花と雌花はそれぞれ別の個体につき、風媒によって花粉が雄花から雌花へ運ばれます。雄花(雄性球花)は黄色で長さ2〜3ミリメートルほどで、3〜4月に花粉を放出した後すぐに落下します。

果実は球果でありながら液果状に発達し、いわゆる「ジュニパーベリー」として知られています。最初は緑色ですが、成熟には約18か月かかり、最終的には青白いろう質に覆われた紫黒色になります。直径4〜12ミリメートルの球形で、通常3枚(時に6枚)の肉質の鱗片が融合し、それぞれに1個の種子を含みます。種子は鳥に果実を食べられ、消化管を通過した後に糞とともに散布されます。果実の精油はα-ピネン、ミルセン、サビネン、リモネン、β-ピネンなどのモノテルペン炭化水素を主成分としています。

分布と生息地

セイヨウネズは北半球の冷温帯全域に環状に分布し、北極圏から北アメリカ・ヨーロッパ・アジアの北緯およそ30度付近の山地まで広がっています。アフリカのアトラス山脈には遺存的な個体群が残っており、アイルランドでは最も古くから定着している植物の一つとされています。

生育地は針葉樹林の岩の多い斜面や山地・平地の森林で、アメリカ西部では森林限界付近に生える低木として見られます。海岸砂丘のような開けた場所ではむしろ稀な存在です。

ポンデローサマツ、ダグラスファー、ロッジポールパイン、エンゲルマンスプルース、ホワイトファーなど多様な針葉樹林や広葉樹林の下層植生として優占することが多く、北米の複数の国有林で群落分類上の指標種とされています。

GBIFの月別観測データでは6月から8月にかけて記録数が大きく増える傾向が見られますが、これは観察者の活動が活発になる時期を反映した記録数であり、実際の個体数や分布の完全な範囲を示すものではない点に注意が必要です。

Juniperus communisの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
160,580
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

成長と形態

セイヨウネズは常緑針葉樹で、高木状から地面を這う低木状まで幅広い樹形をとります。成長は非常に遅く、この遅い成長速度が緻密で丈夫な材質を生み出すと言われています。

樹齢は極めて長く、フィンランドのラップランド地方、北極圏内で採取された標本の年輪調査により、樹齢1647年という個体が確認されています。これはヨーロッパで記録された樹木・低木の中でも最高齢の一つです。

また、雄株は雌株よりも長生きする傾向があり、雄株の中には2000年以上生き続ける個体も知られています。

利用と人との関わり

北米先住民の文化において、セイヨウネズは精神的に重要な神聖な植物として崇められ、その枝は浄化の儀式や祝福を呼び込む儀式に用いられてきました。ネズミサシ属には50〜67種、約400の品種が存在しますが、その全てが食用というわけではなく、例えばJuniperus sabinaには毒性があります。一方でセイヨウネズ(Juniperus communis)は、薬用として市場に最も広く流通している種です。

園芸分野では常緑の観賞用低木として栽培され、'Compressa'、'Green Carpet'、'Hibernica'(アイリッシュジュニパー)、'Repanda'などの品種が1993年に英国王立園芸協会(RHS)のガーデンメリット賞を受賞しています。木材としては大型の用材にはなりませんが、北欧では乳製品を保存する容器やバターナイフの材料として使われ、木造船の建造では木釘(トレネイル)にも利用されてきました。エストニアでは香りの良さと美しい木目、緻密で丈夫な性質から、食器などの木工品の材料として重んじられています。フランスのラギオールナイフの柄にも、コブ材を含むセイヨウネズの木材が使われています。

苦味の強い球果、いわゆるジュニパーベリーは生食には向かず、乾燥させて肉料理やソース、詰め物などの風味付けに使われます。使用前に潰して香りを引き出すのが一般的です。ビールやジンの香りづけにも使われ、「ジン」という語自体が古フランス語のジュニパーを意味する言葉に由来します。フィンランドの伝統的なエール「サハティ」、スロバキアの蒸留酒「ボロヴィチカ」、オランダの「イェネーバー」にも使用されます。考古学的な証拠からは、3〜6世紀頃の中世初期にはすでに醸造に利用されていた可能性が指摘されています。北欧・バルト地域の伝統的な自家醸造ビールでも、ノルウェーでは水の代わりにジュニパーの浸出液を用い、他の地域では枝を麦芽を濾すフィルターとして使う伝統があります。ナバホをはじめとする北米先住民は、ジュニパーベリーをベルベリスの根皮と合わせた薬草茶として用いたほか、女性の避妊薬としても利用してきました。近年では、セイヨウネズの葉に共生する菌類から、真菌感染症の治療薬として米国FDAに承認されたイブレキサフンジェルプなどの抗真菌化合物が見出されています。

豆知識

  1. フランスでは疫病の流行時に、空気を清めるためセイヨウネズの木を焼く習慣がありました。
  2. ケルトの伝統では、サウィン祭(現代のハロウィーンの起源)の際にセイヨウネズの煙を用いて死者の世界と交流したとされています。
  3. 雄株は雌株より長生きする傾向があり、2000年以上生きる個体も知られています。
  4. フィンランドのラップランド地方、北極圏内では樹齢1647年の個体が確認され、ヨーロッパで記録された最古の木本植物の一つです。
  5. アイルランドでは、最も古くから定着している植物の一つとされています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

軽度懸念

生態

生息地

  • 森林
  • 林地
  • 山地
  • ツンドラ

生育型

  • 低木

写真

写真20枚
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3枚輪生の針状の葉を持ち、青黒いろう質の球果状の果実をつけたセイヨウネズの成木写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of Life