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アフリカゾウ

Loxodonta africana

アフリカゾウは現存する陸生動物の中で最大の種です。成長した雄は肩高3.04〜3.36メートル、体重5.2〜6.9トンに達し、これまで記録された最大の個体は肩高3.96メートル、推定体重10.4トンにも及びました。

この種はサハラ以南のアフリカに広く分布する哺乳類で、長く伸びる鼻(トランク)、大きな耳、湾曲した牙、凹んだ背中を特徴とします。皮膚は灰色でひび割れた質感を持ち、体温調節に役立っています。

密猟や生息地の喪失によって個体数が減少してきた一方、南部アフリカの一部では増加も見られ、その複雑な社会性と知能から今も多くの研究者や人々を惹きつけています。

識別と外見

最も分かりやすい特徴は、肩を覆うほど大きな三角形の耳です。この耳は最大で2メートル×1.5メートルにもなり、あおぐことで気流を生み出し、内側の血管から熱を放出して体温を下げる働きをしています。

体格は雌雄で大きく異なります。最適な条件下で成長した雄は肩高約3.20メートル、体重約6.0トンに達しますが、雌は肩高約2.60メートル、体重約3.0トンとやや小柄です。骨端の融合が完了して最大体格に達するのは、雄でおよそ40歳、雌でおよそ25歳頃です。

牙は一生伸び続ける切歯で、外側に湾曲して前方を向きます。牙の成長速度は雄の方が雌より速く、60歳での平均的な牙の重さは雄で109キログラム、雌では17.7キログラムです。記録されている最長の牙は3.51メートル、重さ117キログラムに達しました。牙は野生下で折れることが多く、その場合は歯髄が露出して感染症を起こすことがあります。

背中は目立って凹んだ形をしており、後頭部の傾斜や凹んだ背のラインも識別の手がかりになります。

分布と生息地

アフリカゾウはサハラ以南のアフリカ、ウガンダ、ケニア、タンザニア、ボツワナ、ジンバブエ、ナミビア、ザンビア、アンゴラ、マラウイ、マリ、ルワンダ、モザンビーク、南アフリカなど広い範囲に分布しています。標高0メートルの海岸部から4,000メートルの高地まで、サバンナ、熱帯雨林、疎林、低木林、湿地、農地、さらにはマリやナミビアの砂漠や半砂漠地帯まで、多様な環境を利用します。

地域による違いは大きく、ボツワナには他国よりも多い13万頭が生息する一方、東アフリカでは2006年から2013年の間に密猟の圧力で個体数が62パーセントも減少しました。タンザニアは東アフリカの個体群の80パーセントを抱えていましたが特に大きな損失を受け、ソマリアでは地域的に絶滅してしまいました。エチオピアでは1970年代の6,000〜10,000頭から2015年には1,900〜2,151頭まで減少しています。

南アフリカのクルーガー国立公園周辺では2003年から2015年にかけて年4.2パーセントの増加が記録され、2015年時点で少なくとも17,000頭が生息すると推定されています。西アフリカと中央アフリカでは、急速な人口増加に伴う生息地の喪失と分断化により、個体群は孤立した小さな集団に分かれ、多くの地域で減少が続いています。

Loxodonta africanaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
3,157
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

アフリカゾウは通常時速6キロメートルほどでゆっくりと移動しますが、走る際には時速24キロメートルに達することもあります。1日の移動距離は資源の豊富さに左右され、資源が豊かな場所では1日1.5キロメートル程度しか動かないこともありますが、乏しい場所では40キロメートルも歩くことがあります。かつて保護区に限定される前は、季節に応じて高地と低地の間を数百キロメートル移動する個体もいました。

社会の中心は母系の家族単位で、複数の成体の雌とその娘、性成熟前の息子から構成されます。この家族単位は最も年長の雌である母系リーダーによって率いられ、複数の家族単位が親密な関係を持つ「キンシップグループ」を形成することもあります。集団は食料や水を探し、防衛し、子育てを協力して行います。雨季には開けた植生の地域で群れが大きくなる傾向があります。

雄は10歳から19歳の間に家族単位から離れ、単独か少数の雄同士で行動するようになります。雄は「マスト」と呼ばれる状態に入ると側頭腺が腫れて分泌液を出し、尿を絶えず滴らせるようになります。24歳頃からマストを経験し始め、年長の雄では年に2〜5か月間続きます。マスト中の雄は攻撃性が増し、発情中の雌を巡って他の雄を追い払います。

コミュニケーション

低周波の「ランブル」と呼ばれる約20ヘルツの音が主な発声で、2キロメートル以上離れた場所からも聞き取ることができます。この音は仲間を呼び集めたり、警戒を伝えたり、交尾の準備を知らせるために使われます。トランペット音や吠え声、うなり声は攻撃性の表れであり、逆に柔らかいチャープ音は服従や威嚇の意図を示します。

視覚的なコミュニケーションでは、鼻や耳を使って他の群れの仲間に信号を送ります。触覚による接触は母子間や交尾を試みる雄と雌の間で見られ、挨拶の際には序列の低い個体が鼻先を相手の口に差し入れる行動も観察されています。

化学的な合図としては、発情中の雌と交尾する雄が木や低木に牙で傷をつけたり、分泌物を塗りつけたりして縄張りやなわばりの存在を示すことがあります。

食性と栄養

アフリカゾウは草食動物で、木の葉、果実、草、そして木の根・小枝・樹皮を含む木質部まで幅広く食べます。樹皮を得るために木を丸ごと倒すこともあり、鼻を器のように使って水をすくい、口に流し込みます。

1日中絶えず食べ続け、日々約50ガロンの水を必要とします。ブラウザー(木の葉を食べる)とグレイザー(草を食べる)の両方の性質を持ち、季節や場所によってその比重が変わります。雨季には草を選んで食べる傾向が強く、乾季には食料が乏しくなるため、より柔軟に様々な植物を食べるようになります。いずれの季節でも、栄養価の高い植物を優先して選ぶ傾向があります。

繁殖と子育て

雌は尿や生殖器の匂いを通じて発情状態を雄に知らせ、雄は鼻で雌を撫でるような求愛行動を行います。雌が逃げなくなると互いに鼻を使って触れ合い、最終的に雌が後部を差し出して交尾が行われます。交尾自体は最長2分ほど続きます。発情期の雌は複数の雄と交尾することがあり、乱婚的な繁殖システムを持ちます。マスト状態の雄はより多くの交尾の機会を得やすく、雌は低周波の呼び声や尿の跡を追ってマスト中の雄を探します。

妊娠期間は約22か月に及び、出産間隔は地域によって異なります。ハワンゲ国立公園では出産間隔が3.9〜4.7年、アンボセリ国立公園では平均5年とされています。新生子の体重は90〜120キログラムで、平均は100キログラムです。出産の際、雌は群れから離れることがあり、タンザニアのツァボ・イースト国立公園では、80頭からなる群れが出産に立ち会い、生まれた子は30分以内に立ち上がり、20分後には歩き始めた様子が観察されています。

子は生後4か月で母乳から離乳を始めますが、3歳頃まで時折母乳を飲み続けることがあります。完全な独立は約8歳で達成されます。雌は11歳、雄は20歳頃に性成熟に達しますが、雄が実際に最初のマストを経験するのは25〜30歳頃です。最大寿命は70〜75年に及び、世代の長さは25年とされています。

個体数と生態的役割

アフリカゾウはキーストーン種と考えられており、少数の個体でも生態系に大きな影響を与えます。木を倒したり樹皮を剥いたりする行動が三次元的な生息地の多様性を生み出し、多くの爬虫類・両生類の種の多様性を高める役割を果たしています。

この種には吸虫、ダニ、シラミ、線虫、原虫など多様な寄生生物が共生しています。一方でシラサギの仲間とは相利共生の関係にあるとされ、ゾウの体表にとまって寄生虫を食べ、ゾウにとっては駆除の助けとなっています。

成体のゾウは捕食にほぼ無敵とされますが、2歳未満の子ゾウはライオンやブチハイエナに襲われることがあります。ボツワナのチョベ国立公園では、旱魃期に小型の獲物が減少したため、ライオンが幼獣や若齢個体を襲う事例が1993年から1996年の間に74件記録されました。

保全と脅威

IUCNのレッドリストでは「危急種」に分類されており、CITESでもボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエでは附属書II、それ以外の国では取引が原則禁止される附属書Iに掲載されています。

最大の脅威は牙を狙った密猟です。牙のある雄が優先的に狙われることで性比が歪み、集団の存続に影響を与えています。2003年から2015年の間には、29の生息国の巡視員によって14,606頭の違法な殺害が報告されました。2006年に国際的な象牙取引が一部再開されると需要と価格が上昇し、チャドのザクーマ国立公園では2005年に3,900頭いたゾウのうち5年間で3,200頭以上が殺されました。生息地の喪失と人間との衝突の増加も、農地開発や都市化の進行に伴い深刻化しています。

密猟者は発見を避けるため死体に毒を盛ることがあり、これが死体を食べるハゲワシなど猛禽類にも被害を及ぼしています。2019年6月にはボツワナ北部で毒殺されたゾウの死体を食べた絶滅危惧種のハゲワシ537羽が死亡する事件も起きました。

文化的意義

アフリカでは古くからゾウが文化の中で重要な位置を占め、特に象牙は貴重な商品として扱われてきました。ケニアのマサイ族はゾウを人間に近い存在とみなし、現地の言葉で「アルカンジョウェ(大きく力強い存在)」と呼びます。マサイの伝承には、結婚のために向かっていた女性が途中で引き返したためにゾウへと姿を変えたという物語も残っています。

先史時代の北アフリカでは、旧石器時代の岩絵にゾウの姿が描かれており、世界遺産のリビア・タドラルト・アカクスには最終氷期の写実的なゾウの彫刻が残されています。アルジェリア南部のオランや、ナミビアのエロンゴ地方の「フィリップス洞窟」の白いゾウの壁画など、他にも多くの先史時代の描写例があります。南アフリカのセダーバーグ地域に残るサン族の絵からは、彼らがゾウの家族単位の行動や社会構造を深く理解していたことがうかがえます。

現代では牙や耳、足などの部位が装飾品や家具、革製品として利用されてきましたが、保全上の観点からこうした利用は正当化が難しくなっています。

豆知識

  1. 発した低周波のランブルという鳴き声は2キロメートル以上離れた場所からでも仲間に聞き取られます。
  2. マスト中の雄は尿の跡を辿られることで発情中の雌に見つけてもらい、交尾の機会を得やすくなります。
  3. 出産の際には群れの仲間が出産する雌を取り囲み、生まれた子を丁寧に確認する行動が観察されています。
  4. シラサギの仲間はゾウの体表にとまり寄生虫を食べることで、両者に利益のある関係を築いています。
  5. 密猟の圧力が強い地域では、牙を持たない雌が生まれる頻度が高くなる傾向が報告されています。

写真

写真の提供元はby Patrick Jackson via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Cullen Hanks via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Cael Marquard via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Alan Manson via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。

生態と分類

行動

  • 攻撃的
  • 社会性
  • 昼行性
  • 渡り性

食性

  • 植食性

分類

門
Chordata
綱
Mammalia
目
Proboscidea
科
Elephantidae
属
Loxodonta
種
Loxodonta africana

出典

  1. GBIF Species names and classification
  2. iNaturalist Photos
  3. Wikidata Common names and conservation status
  4. Wikipedia Summary extract
  5. Animal Diversity Web Animal habitat, behavior and diet
  6. AnAge Longevity