コシグロペリカンは、現生の鳥の中で最も長いくちばしを持つ鳥として知られています。学名はPelecanus conspicillatusで、ペリカン科に属する大型の水鳥です。
オーストラリアの沿岸や内陸の湖、川などの水域に広く分布し、ニューギニアにも生息します。フィジーやインドネシアの一部でも見られ、ニュージーランドには迷鳥として現れることがあります。IUCNのレッドリストでは軽度懸念とされています。
識別と外見
最も目立つ特徴は、淡いピンク色の長いくちばしです。体の大部分は白く、翼の一部は黒く見えます。風切羽のまわりは黒く、飛んでいるときに白い翼帯と白いV字の腰が目印になります。
体長は152〜188cm、翼を広げた幅は2.3〜2.6mに達します。体重は平均で約です。オスよりメスはやや小さく、くちばしも短めです。繁殖期の成鳥は、目の周りとくちばしの先の4分の1ほどがオレンジ色になり、のどの袋は紺色、ピンク色、緋色に変わります。繁殖期以外の成鳥は、くちばしと目のまわりが淡い黄色です。若鳥は成鳥に似ていますが、黒い部分が茶色で、翼の白い部分が小さくなっています。
分布と生息地
コシグロペリカンは、オーストラリア本土とタスマニアの広い範囲に生息します。主な生息地は、広い開けた水面が続く環境です。大きな湖、貯水池、ビリabong(川の跡の水たまり)、河川、河口、湿地、乾燥地帯で一時的に冠水した場所、農地の排水路、塩田、沿岸のラグーンなどを利用します。
周囲の環境が森でも草原でも砂漠でも、十分な食料がある開けた水面があれば暮らせます。繁殖期には人の攪乱が少ない場所を好む傾向があります。干潟、砂州、砂浜、岩礁、桟橋などで休むこともあります。
決まった移動の時期はなく、食料の多い場所を追って移動します。干ばつの後に移動が起こることが多く、1974〜1976年にレイク・エアが水で満たされた時期には、大量の鳥が内陸の湖に集まりました。
ニューギニア南岸、ビスマルク諸島、ソロモン諸島にもよく現れます。クリスマス島、バヌアツ、フィジー、パラオ、ニュージーランドには迷鳥として現れます。1978年にはインドネシアのスラウェシ、ジャワ、スマトラ島の可能性がある地域に大量に現れました。

行動と暮らし
コシグロペリカンは昼行性で、非常に社会性の高い鳥です。大きな群れで飛び、繁殖期には最大で4万羽が集まる大きなコロニーを作ります。
飛ぶのは力強いものの、ゆっくりとしたはばたきが中心です。上昇気流に乗って滑空することでエネルギーを節約します。飛ぶときは首を体の方に引き寄せ、頭を肩に乗せるような姿勢をとります。遠くまで移動して食料を探し、24時間ほど空中にとどまったことも知られています。
食料と降雨によって移動する遊牧的な鳥で、行動範囲は非常に広いです。ひとつの場所に定住することはありません。
コミュニケーション
成鳥はほとんど鳴かず、鳴き声を使うことも少ないです。鳴くときは、シューという音、息を吹くような音、うめき声、低いうなり声、くちばしをカチカチ鳴らす音を出します。
若鳥は成鳥よりずっと声が大きく、えさをねだって大きな声で鳴きます。成鳥の主なコミュニケーションは、翼、首、くちばし、のどの袋を使った視覚的なしぐさです。特に求愛のディスプレイでは、このような体の動きが重要になります。
狩りと食性
コシグロペリカンは、水中の魚を捕まえて食べる鳥です。獲物を探すときは、群れで魚を浅い場所や狭い場所に追い込んで捕まえます。
獲物を捕るときは、体を前に傾けてくちばしを水中に突き入れ、魚をすくい取ります。浅い水辺や、水面をすれすれに飛びながらくちばしで掬い取ることもあります。ときには、水面から1メートルほどの高さから水に飛び込んで捕まえます。
主な食べ物は魚で、体長60〜247mm、体重17〜320gほどの魚を食べます。エビやザリガニなどの甲殻類は少量です。両生類、小さな爬虫類、小型の哺乳類も食べます。食べ物が乏しいときは、カモメやカモの雛も捕食します。他の鳥から食べ物を横取りすることもあります。
営巣と繁殖
コシグロペリカンは、一夫一妻で、繁殖期ごとにつがいを作ります。繁殖は冬から早春に多く、雨の後にも行われます。ただし、季節を問わず繁殖することもあります。2〜3歳で繁殖を始め、繁殖は年に1回です。
求愛は、繁殖地に集まった個体が小さな群れに分かれるところから始まります。1羽のメスと2羽以上のオスからなる群れで、オスが互いに競ってメスの気を引こうとします。メスは、群れのオスを連れて歩いたり泳いだり飛んだりして求愛行動を導きます。最後に残るのは通常1羽のオスです。
つがいは巣の場所を決め、巣作りを始めます。巣は地面や砂の浅いくぼみで、ときに草が敷かれます。ルーミス付近の湖などでは草の台を作ることもあります。巣は島や湖、海に近い風よけのある場所で、集団で作られます。メスは1〜4個(多くは2個)の白っぽい卵を産みます。卵は93mm×57mmほどの楕円形です。抱卵は32〜35日間続き、両親が卵を足の上にのせて温めます。雛は裸で目が閉じた状態で生まれ、やがて灰色の綿毛が生えます。複数の卵があっても、1羽の雛が他の雛を押しのけて生き残ることがよくあります。
雛は約2か月で飛べるようになり、100羽ほどの雛の群れで暮らします。独立するのは生まれてから約4か月後で、その間は両親が食べ物を運びます。
個体数と生態的役割
コシグロペリカンは、魚を食べることで植物の種子や果実を運ぶ役割を担っています。魚は植物を食べることがあり、その魚をペリカンが食べ、別の場所に移動した後にふんとともに植物の種子が落とされます。こうして植物の分布が広がり、植物のない湿地にも植物が戻ることがあります。
この働きは、外来植物の侵入や拡散を招く場合もあります。また、線虫の仲間が寄生する宿主としても利用されています。
保全と脅威
コシグロペリカンは、IUCNのレッドリストで軽度懸念に分類されています。生息範囲が非常に広く、個体数は10万〜100万羽と非常に多いとされています。個体数の増減は一定ではありませんが、全体として大きな懸念はありません。
迫害や攪乱は、主な脅威です。漁業との競合を理由に迫害されてきたほか、繁殖地での攪乱にも弱く、繁殖中の人間の接近に敏感です。生息地の破壊や汚染も個体数に影響してきました。一方で、オーストラリアでは法的に保護されています。また、植生の多い湿地に比べて、水辺のレクリエーションが多い場所は影響を受けにくいとされています。
文化的意義
コシグロペリカンは、神話や文化の中で長い間重要な役割を担ってきました。キリスト教や紋章の図像にも描かれ、ペリカンは古くから象徴として扱われてきました。
ペリカンは、助け合いや他者への愛情の象徴とされてきました。また、ペリカンのふんは肥料として使われ、農業にとって有益です。オーストラリアのコシグロペリカンは、人間に大きな影響を与えることはありません。
豆知識
- オーストラリア先住民の神話にも登場する、文化的に重要な鳥です。
写真
写真の提供元はvia iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Kevin Jäger via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by liam1294 via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by smathichong via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Luke Lythgoe via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by gwynmwilliams via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Emma Burns via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Peter Crowcroft via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Andrew Parker via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。
生態と分類
分類
- 門
- Chordata
- 綱
- Aves
- 目
- Pelecaniformes
- 科
- Pelecanidae
- 属
- Pelecanus
- 種
- Pelecanus conspicillatus
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- Encyclopedia of Life Habitat, diet and behavior traits
- Animal Diversity Web Animal habitat, behavior and diet
- AnAge Longevity



