本文へスキップ
記事へスキップ

ヨーロッパモミ

Abies alba

LC軽度懸念
雪山の斜面に立つ、灰色の樹皮と扁平な針葉を持つ大きな常緑針葉樹。円柱形の球果が枝の上向きに直立している。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

ひと目でわかる

主な特徴
森林山地高木
分類
門
Tracheophyta
綱
Pinopsida
目
Pinales
科
Pinaceae
属
Abies
種
Abies alba

その生育範囲は、フランスのピレネー山脈からノルマンディー地方を経て、アルプス、カルパティア山脈、そしてバルカン半島を越えてギリシャ北部にまで及び、ヨーロッパ大陸の山岳地帯を横断するように広がっています。

ヨーロッパモミはマツ科モミ属に属する常緑針葉樹で、標高の高い山地の森林に生育します。IUCNのレッドリストでは軽度懸念(Least Concern)に分類されており、現時点で絶滅の心配は少ないとされています。

白い材や芳香を放つ樹脂など、古くから人々の暮らしに関わってきたこの樹木の姿を、以下で詳しく見ていきます。

識別と外見

ヨーロッパモミを識別する最も分かりやすい特徴は、扁平な針状の葉です。葉は長さ1.8〜3.0cm、幅約2.0mmで、先端がわずかに凹み、表面は光沢のある濃緑色、裏面には2本の白みがかった気孔帯が見られます。葉は枝の左右に平らに広がって付くため、上から見ると枝がはっきり見える点が、近縁のモミ属樹種との識別点になります。

成木は高さ40〜50mに達する大型の針葉樹で、幹の直径は最大1.5mほどになります。これまでに記録された最大の個体は高さ60m、幹直径3.8mに達しました。標高300〜1,700m、主に500m以上の、年間降水量1,000mmを超える山地に生育します。

球果は長さ9〜17cm、幅3〜4cmの円柱形で、150〜200枚ほどの鱗片からなり、各鱗片には突き出た苞と2枚の翼をもつ種子が付きます。成熟すると鱗片がばらばらに崩れて種子を放出します。材は白色で、これが種小名「alba」(ラテン語で「白い」の意)の由来となっています。

近縁種にはバルカン半島に分布するブルガリアモミ(Abies borisii-regis)、スペインおよびモロッコに分布するスパニッシュモミ(Abies pinsapo)、シチリア島のシチリアモミ(Abies nebrodensis)があります。ヨーロッパモミはこれらに比べて葉のつき方がまばらで、枝の左右に開くように生えるため、上から見たときに枝がよく見える点で区別できます。植物学者の中には、ブルガリアモミやシチリアモミをヨーロッパモミの変種として扱う立場もあります。

分布と生息地

ヨーロッパモミは、フランスのピレネー山脈からノルマンディー地方、東はアルプスやカルパティア山脈、スロバキア、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、セルビア、南はイタリア、ブルガリア、コソボ、アルバニア、ギリシャ北部まで、ヨーロッパの山岳地帯に広く分布しています。

こうした分布域はいずれも山岳地帯であり、フランスからバルカン半島にかけての標高の高い森林帯にまたがっています。

GBIFに蓄積された観察記録の月別件数を見ると、7月に42,781件と最も多く、5月から9月にかけて観察数が多い一方、12月から2月にかけては5,000〜9,000件程度まで減少します。ただし、これは観察者の活動が夏季に活発になることを反映した記録数であり、ヨーロッパモミ自体の個体数や生育の季節変化を示すものではない点に注意が必要です。

Abies albaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
42,781
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

生態と関わり

ヨーロッパモミは、バルカン半島西部のディナル地方に分布する石灰岩質のモミ林を構成する重要な樹種です。イタリアのアペニン山脈、特に北部アペニンでは、広葉樹と針葉樹が混じる森林の主要な構成種となっており、冷涼で湿潤な気候、北向き斜面、年間降水量1,500mmを超える多雨環境を好みます。アルプス東部では、ノルウェートウヒやブナなどとともに混交林を形成します。

球果の鱗片はハマキガ科のCydia illutanaの幼虫の食物となり、また同属のCydia duplicanaは幹の傷やカンカー(潰瘍病)の周囲の樹皮を食べて育ちます。

利用と人との関わり

古代ローマ時代には、ヨーロッパモミの木材でワインなどを貯蔵・輸送するための木樽が作られていました。使われなくなった樽は、しばしば書字板に作り替えて再利用されていたとされます。

樹脂からは松のような香りをもつ精油が抽出され、香水や入浴剤、エアゾール式吸入剤などに利用されています。葉や樹皮、材を含む枝は、かつてスプルースビールの製造にも使われました。また、ヨーロッパモミの木にとまるアブラムシが分泌する甘露をミツバチが集めることで作られる「モミ蜂蜜」も知られています。

ヨーロッパモミは、クリスマスツリーとして最初に用いられた樹種でもあります。栽培下では自然に左右対称の円錐形に育ち、密で香り高い樹形と、伐採後も長持ちする特性から重宝されましたが、現在ではより葉が密で見栄えの良いノードマンモミや、栽培コストの低いノルウェートウヒに主役の座を譲っています。原産地のヨーロッパだけでなく、アメリカ北東部のニューイングランドからカナダのマリタイム州にかけてのクリスマスツリー農園でも栽培されています。木材は強度があり軽量で、色は明るく、木目が細かく均一で繊維が長いことから、建築材、家具、合板、パルプや製紙原料として広く使われています。

豆知識

  1. ヨーロッパモミの自生地は、フランスのピレネー山脈からギリシャ北部まで、ヨーロッパの山岳地帯の実に多くの国々にまたがっています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

軽度懸念

生態

生息地

  • 森林
  • 山地

生育型

  • 高木

写真

写真15枚
1 / 15
雪山の斜面に立つ、灰色の樹皮と扁平な針葉を持つ大きな常緑針葉樹。円柱形の球果が枝の上向きに直立している。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipedia