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オニナラタケ

Armillaria ostoyae

クリーム色から茶色がかった傘に細かい鱗片が広がり、柄には膜質のツバを持つキノコが、針葉樹の根元に房状に生えている様子。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

ひと目でわかる

主な特徴
森林山地
分類
門
Basidiomycota
綱
Agaricomycetes
目
Agaricales
科
Physalacriaceae
属
Armillaria
種
Armillaria ostoyae

アメリカ・オレゴン州東部のストロベリー山地にあるマルフール国有林には、一つの菌糸ネットワークが3.5平方マイル(約2,200エーカー、9.1平方キロメートル)にわたって広がっています。推定樹齢は8000年、重さは最大35,000トンに達するとされ、世界最大級の生物のひとつに数えられています。その正体が、Armillaria ostoyae(オニナラタケ)という寄生性のキノコです。

オニナラタケはハラタケ目タマバリタケ科に属し、垂生する傘のひだと、柄に発達したツバを持つのが特徴です。菌糸は樹木の辺材に侵入し、樹皮の下や樹木間を「シューストリング」と呼ばれる黒い根状菌糸束(リゾモルフ)によって長距離にわたり広がります。北半球の冷涼な地域、とくに北米のブリティッシュコロンビア州や太平洋岸北西部の針葉樹林、またアジアの一部に分布しています。

樹木を静かに蝕む病原体でありながら、地球上でもっとも大きな生物のひとつとされる矛盾した存在感が、このキノコを読み解く価値を与えています。

子実体と識別

北米の多くの地域では、クリーム褐色の色合い、目立つ傘の鱗片、そしてよく発達したツバによって、他のArmillaria属の種と見分けることができます。これがオニナラタケを識別するうえでもっとも頼りになる特徴です。

子実体が成熟すると、柄から幅広く薄いひだが垂生状に広がり、白色の胞子紋を残します。ひだの垂生という形状は、成長過程で栄養を得ながら傘が広がっていく様子を反映しています。

柄にはよく発達したツバが残ります。菌糸は黒い根状菌糸束(リゾモルフ、通称シューストリング)を形成し、これによって遠く離れた樹木の間でも養分をやり取りし、病原性を発揮します。興味深いことに、Armillaria属の他種と同様、この菌糸は生物発光を示し、「狐火(foxfire)」と呼ばれる現象を引き起こすことがあります。

見た目が似たキノコとしてPholiota limonella(マダラモエギタケ、いわゆる斑点腐朽菌)が挙げられます。子実体の見た目は似ていますが、樹皮下に白い菌糸扇(マイセリアルファン)が見られない点で紛らわしくなることがあります。

分布と生息地

オニナラタケは北半球の冷涼な地域に多く分布し、北米では針葉樹を宿主としてブリティッシュコロンビア州や太平洋岸北西部の森林に生育しています。アジアの一部にも分布が確認されています。

ブリティッシュコロンビア州内では複数の生物気候帯にまたがって分布していますが、根株腐朽病としての被害がもっとも深刻なのは内陸部の「インテリア・シーダー・ヘムロック」帯です。沿岸部にも生育しますが、内陸部に比べると発生頻度は低い傾向があります。

分布域の中でもとくに知られているのが、オレゴン州東部ストロベリー山地のマルフール国有林にある個体群です。3.5平方マイル(約2,200エーカー、9.1平方キロメートル)にわたって広がるこの菌糸ネットワークは、世界最大級の生物として知られています。

GBIFの月別観察記録では、9月に8097件、10月に4118件と、秋にかけて観察数が大きく増加する傾向が見られます。これはあくまで存在が記録された回数であり、個体数や生育密度そのものを示すものではありませんが、キノコとしての子実体が主に秋に発生することを示唆していると考えられます。

Armillaria ostoyaeの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
8,097
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

生態と関わり

オニナラタケは、ダグラスファー(Pseudotsuga menziesii)やモミ類(Abies属)、マツ類(Pinus属)、ベイツガ(Tsuga heterophylla)など、商業的に重要な針葉樹に対して強い病原性を示します。感染は主に黒い根状菌糸束(リゾモルフ)を介して樹木の根に広がり、この菌糸束の形成量が病原性の強さと相関しています。

感染しやすさは樹齢によって大きく異なります。樹齢10年以下の若い針葉樹は感染による枯死のリスクが高い一方、樹齢20年を超えると枯死はまれになります。ただし乾燥した気候の森林では、成熟した樹木でも枯死が起こることがあります。傾向としては内陸部の林分で感染そのものが多く見られる一方、沿岸部では感染率は低いものの病原性がより強く現れるという違いがあります。

感染した樹木では、樹幹基部からの樹脂の流出、樹冠の黄変や赤変、樹皮下の白い菌糸扇、根に食い込む黒いリゾモルフ、そして秋に基部近くに現れる蜂蜜色のキノコといった兆候が見られます。管理現場では、感染林分の皆伐後にベイスギ(Thuja plicata)や広葉樹など耐性のある樹種を植林する方法や、伐根を掘り起こして空気にさらし菌を枯死させる「スタンピング」という手法が用いられています。化学的な防除は根絶には至らず費用対効果も低いとされる一方、Hypholoma fasciculareという別の菌がオニナラタケを競合排除する可能性が初期の実験で示されていますが、実用化にはさらなる検証が必要とされています。

利用と文化史

歴史的には、このキノコが儀式や薬用、料理に用いられてきた証拠はほとんど見られません。有毒であるという評判や、より好まれる他のキノコ種との競合を理由に、伝統的な地域社会では避けられてきた可能性が指摘されています。

一方で、別の記録によれば「choice edible(極上の食用きのこ)」とみなされている地域もあり、地元の祝宴や伝統料理に取り入れられ、その土地の食文化と深く結びついてきたとされています。ただし、外見が似た食用に適さない種と混同されやすいため、採取の際には専門家による同定が重要であると強調されています。

豆知識

  1. アメリカ・オレゴン州マルフール国有林に広がる菌糸ネットワークは3.5平方マイル(約2,200エーカー、9.1平方キロメートル)に及び、推定樹齢8000年、重さ最大35,000トンとされる世界最大級の生物です。
  2. この巨大な菌類コロニーは、面積ではオーストラリア沿岸に広がる海草Posidonia australisの群落(200平方キロメートル)に匹敵し、生物量では北米のポプラ群落「パンド」に並ぶとされています。
  3. 近縁種のArmillaria gallicaも、米国ミシガン州クリスタルフォールズ付近で91エーカー(0.37平方キロメートル)に及ぶ巨大な単一コロニーを形成しており、その起源はカナダ・オンタリオ州の親株にさかのぼるとされています。
  4. オニナラタケの菌糸は生物発光を示すことがあり、暗闇でほのかに光る「狐火」と呼ばれる現象を引き起こします。
  5. 樹木を枯らす病原菌でありながら、生態系の中では分解者・養分循環者としての役割も担っているとされています。
  6. 伐採後の切り株の中でも最長50年にわたって生き続けることがあり、これが根株腐朽病の防除を難しくする一因となっています。

生態

生息地

  • 森林
  • 山地

写真

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クリーム色から茶色がかった傘に細かい鱗片が広がり、柄には膜質のツバを持つキノコが、針葉樹の根元に房状に生えている様子。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipedia