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Strobilurus tenacellus

記録された一般名なし

Strobilurus tenacellusは、マツやスプルースの落ちた球果に生える小さな菌類で、この菌が作り出す「ストロビルリン」という化合物は、他の菌の成長を抑える働きを持ち、その誘導体は現在、農業用殺菌剤として重要な地位を占めています。

本種はハラタケ目フィサラクリア科に属する担子菌で、ヨーロッパとアジアに広く分布しています。松や黒松、時にスプルースの落下した球果を分解して暮らす腐生菌です。

食用とされることもありますが、子実体が非常に小さいため料理の対象にはなりません。見た目は控えめながら、農業に与えた影響という点で注目に値する種です。

子実体と識別

最も確実な識別点は、松や黒松の落下した球果の上にしっかりと生える生育場所そのものと、柄の基部にある根のような仮根(プセウドリザ)です。傘は直径5〜15mmほどと小さく、最初は丸みを帯びた形(凸形)をしていますが、やがて平らに開きます。中央に小さな突起が残ることもあれば、逆にくぼみができることもあります。

傘の表面は滑らかで湿度により色が変わる性質(湿性)を持ち、縁近くには浅い放線状の溝が傘の半分ほどまで入ります。色は赤みを帯びた褐色から茶褐色で、中央部は縁よりも淡い色になることが多く、乾燥すると灰色がかった色に褪せます。ひだは灰白色で、柄への付き方は離生から深く切れ込んだ形まで様々です。ひだの数は20〜25枚程度で、柄まで届かない短いひだ(小ひだ)が1〜7段挟まります。

柄は円柱形で長さ4〜7.5cm、太さはわずか0.5〜2mmと非常に細く、上部は黄褐色、下部は濃いオレンジ褐色から赤褐色を帯びます。肉には特に匂いはなく、味は苦味を感じることが多いとされます。胞子紋は白色で、胞子は楕円形から涙形で、長さ5.0〜7.5μm、幅2.4〜4.0μmほどです。柄・ひだ・傘には先端が鋭く尖った薄壁の嚴胞(シスチジア)が多数見られ、これが本種を特徴づける顕微鏡的な特徴となっています。

分布と生息地

ヨーロッパとアジアに分布し、日本やヨルダンでも記録されています。松(特にヨーロッパアカマツやヨーロッパクロマツ)や、時にスプルースの落下した球果の上に、単独または小さな群れで発生する腐生菌です。針葉樹林や混交林でみられますが、発生はまれとされています。

ヨーロッパでは通常3月から6月にかけて子実体を形成します。観察データ全体でも春から初夏にかけて記録が集中する傾向がみられ、この時期に地表に落ちた球果が子実体形成の好機となっているとみられますが、これはあくまで観察記録の偏りであり、個体数や分布の全体像を示すものではありません。

Strobilurus tenacellusの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
1,543
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

利用と文化史

この菌が作り出す「ストロビルリン」という化合物群は、他の菌の成長や発達を抑制する作用を持ち、その誘導体は農業用殺菌剤の重要な一群として利用されています。この発見は、小さな林床の菌から生まれた化学的な知見が、作物保護という実用分野に結びついた例といえます。

子実体自体は食用とされることもありますが、あまりに小さいため、実際に料理の材料として利用されることはありません。

豆知識

  1. この菌は民間の薬用伝承や儀式、食文化との結びつきが知られておらず、特定の文化的象徴として扱われた記録もありません。
  2. 培養液から見つかった二種類のシアタン型ジテルペノイド様化合物には、試験管内で一部の腫瘍細胞の増殖を抑える作用が報告されています。
  3. 標準的な抗菌試験法を用いた研究では、子実体のメタノール抽出物についても調べられています。

写真

写真の提供元はvia iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Manuela Fiorini via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Michel Langeveld via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Anita Engler via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Umut Nuri Erdoğan via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Patrick Bayan via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Hayley Fulker via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by victor laborde via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by fabrizio_mariani_montesorbo via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。

生態と分類

生息地

分類

門
Basidiomycota
綱
Agaricomycetes
目
Agaricales
科
Physalacriaceae
属
Strobilurus
種
Strobilurus tenacellus

出典

  1. GBIF Species names and classification
  2. iNaturalist Photos
  3. Wikidata Common names and conservation status
  4. Wikipedia Summary extract