Bubo scandiacus、シロフクロウは、フクロウの中で唯一、体の大部分が白い羽毛に覆われた種です。最大級のフクロウの一種でもあり、雄はより純白に近く、雌は褐色の斑がより多く残るという性差が知られています。
本種は北アメリカと旧北区の北極圏、主にツンドラで繁殖する鳥類で、IUCNのレッドリストでは「危急(Vulnerable)」に分類されています。極限の環境に適応した特異な生態を持ち、他のフクロウ類とは一線を画す存在として、多くの研究者や観察者の関心を集めてきました。
識別と外見
最も見分けやすい特徴は、全身を覆う白い羽毛と鮮やかな黄色の目です。頭部は比較的小さく、耳羽は20〜25mmほどとごく短く、通常は目立たず、雌が巣に座っているときなどに稀に立てられる程度です。顔盤は浅く、耳の構造も単純で、他のBubo属フクロウに比べて聴覚への依存度は低いと考えられています。
体格は大型で、体重はおよそ2.026kgに達します。成熟した雄は上面がほぼ無地の白で、耳羽や頭部、初列・次列風切の先端にわずかな暗色斑が見られる程度にとどまり、下面はしばしば純白です。ロシアの博物館標本129体の成熟雄のうち、暗色斑がほとんど見られなかったのはわずか3体にすぎず、完全な純白は稀であることが分かります。
雌は雄よりも明らかに斑模様が濃く、頭頂や下面に褐色の斑や横斑が入り、飛翔羽や尾羽にもかすかな褐色の横斑が見られます。斑の形状は雌では横斑、雄では点状になる傾向があり、これが性判定の手がかりになりますが、最も濃い雄と最も淡い雌はほとんど区別できないこともあります。個体によっては年齢とともに斑が薄くなる場合もありますが、変化しない個体も報告されており、加齢による判定には限界があります。
雛は当初灰白色ですが、すぐに暗い灰褐色の羽毛に変わり、ツンドラの地衣類に紛れる保護色となります。巣立ちの頃には不規則な暗色の斑模様となり、上面はほぼ暗い灰褐色になりますが、眉部など顔の一部は白いままです。性別による斑模様の差は、第4回目や5回目の換羽を経て成鳥に近づくまで徐々にはっきりしてきます。
分布と生息地
シロフクロウは北緯60度以北を中心とする北極圏の周極地域を主な繁殖地とし、時に55度付近まで南下することもあります。総繁殖分布域は1,200万平方キロメートルを超えますが、実際に高頻度で繁殖が見られるのはそのうち約130万平方キロメートルに過ぎず、繁殖は3〜9年ごとという不規則な周期で起こります。繁殖地はアラスカ北部、カナダ北部、そしてユーロシベリア地域のツンドラに広がっています。
地衣類やコケ、岩の多いツンドラを好み、丘状の高台や岩の露頭など、わずかに隆起した地形を選んで繁殖する傾向があります。沿岸の干潟のような多様な海岸環境も利用し、繁殖地の標高は通常300m以下ですが、ノルウェーなど内陸の山地では1,000mに達することもあります。
冬になると多くの個体が北極圏を離れて南下し、越冬範囲はアイスランド、アイルランド、スコットランドから北ユーラシアの一部、北アメリカでは南部カナダの広い範囲にまで及びます。レミングの豊富な年の翌年には、より多くの若鳥が南方への大規模な「イラプション」を起こし、アメリカ合衆国南部やジョージア州、テキサス州、さらにはハワイまで記録されたことがあります。
GBIFの月別観察記録は、12月から1月にかけて最も多く(それぞれ68,836件、83,671件)、8月には895件まで落ち込むというはっきりした季節パターンを示しています。ただしこれは観察のしやすさを反映した存在記録であり、個体数や生息密度そのものを示すものではない点に注意が必要です。

行動と暮らし
シロフクロウの活動は昼夜を問わず見られ、餌となるレミングの活動リズムに合わせて活動する「常時活動性(cathemeral)」と考えられています。北極の夏には完全な夜がないため、最も暗い薄明薄暮の時間帯に活動が高まる傾向があり、ノルウェーでは午後9時から午前3時の間がピークと報告されています。一方でアルバータ州の冬季調査では、午前8〜10時と午後4〜6時に活動が集中し、日中の98%は止まり木で過ごしていたことが分かっています。
この種は極寒への耐性が非常に高く、マイナス62.5度でも明らかな苦痛の様子を見せずに記録され、マイナス93度への5時間の暴露にも耐えたとされています。羽毛の熱伝導率はアデリーペンギンに次いで低いとされ、ダルシープや北極ギツネと並ぶ極地随一の断熱性を持つと考えられています。極寒の冬の一日を生き延びるには、1日あたり7匹ほどの小型齧歯類を食べる必要があると推定されています。
短く頑丈な脚の骨格から、木や岩に長時間止まるのには向かず、平らな地面やわずかな高台を好んで止まるとされています。狩りの際には丘、フェンスの柱、電柱、無線塔、干し草の山、煙突、屋根などさまざまな人工物も止まり木として利用します。翼を広げてバランスを取りながら素早く歩いたり走ったりすることができ、泳ぐ能力もありますが通常は行いません。負傷した個体や、まだ飛べない幼鳥が捕食者から逃れるために水に入ることが観察されています。
コミュニケーション
シロフクロウの鳴き声は他のBubo属フクロウと異なり、犬の吠え声に似た荒々しい響きを持ちます。雄の主な鳴き声は「krooh krooh krooh」と2〜6回繰り返される単調な連続音で、時に「aaoow」という強い声で終わることがあります。これは主に競合する雄を排除したり、雌に自身をアピールしたりする機能を持つと考えられています。この声は北極の乾いた空気の中では3km以上、条件によっては10〜11km先まで届くことがあります。
雌の鳴き声は雄に似ていますが、より高音でしゃがれた声になることが多く、「khuso」という2音節の単独音もよく発します。両性ともに興奮した際にはクラッキング音、悲鳴、うなり声、シューという音、カックルなど多様な音を発することがあり、警戒声は「keeea」という大きく荒れた声です。もう一つの荒い鳴き声は「見張り番のガラガラ音」と呼ばれ、「rick, rick, rick, ha, how, quack」のように聞こえます。
発声は主に繁殖期に限られるため、以前は本種を「完全に無音」とする誤った記録もありましたが、冬にも米国北部で発声が確認されています。雛は最初高く柔らかい餌をねだる声を出し、生後2週ごろに強くかすれた叫び声に変わります。巣立ち直後の甲高い悲鳴は、母親が幼鳥の位置を特定する手がかりになっているとされています。
狩りと食性
シロフクロウの狩りは、視覚と動きの察知に大きく依存しています。聴覚が他のフクロウ類ほど発達していないため、獲物の発見はほぼ視覚に頼り、実験では最大1.6km先の獲物を検知できることが示されています。ユタキアギヴィクでの観察では、34回の狩りのうち88%が高台からの待ち伏せで行われ、そのうち56%が土の隆起、37%が電話柱を利用したものでした。じっと構えて長時間動かず、獲物を見つけると一気に加速する飛び方に切り替わる点は、ノスリの狩り方に似ています。
狩りの手法は多彩で、獲物に一気に急降下して強い衝撃で捕らえる「急襲」、飛びながら獲物をつかむ「スイープ」、強風下で行う短時間のホバリング、そして雪の下20cm以上に潜む獲物を捕らえる「雪への突入(snow plunge)」などが記録されています。魚を狩る際にはミサゴのようにホバリングすることもあれば、釣り穴のそばの岩に腹をつけて待つ個体も観察されています。稀に、飛ぶことなく徒歩のまま獲物を追うこともあります。
獲物は地面で捕らえ、そのまま丸呑みすることが多く、消化できない骨や歯、毛、羽は塊状のペレットとして摂食後18〜24時間後に吐き出されます。大型の獲物は頭部を切り離すなど部分的に解体して食べ、上腕や胸筋などの大きな筋肉から先に摂食する傾向があります。夜間に渡る小鳥やシギ・チドリ類を捕らえるだけでなく、日中には大型で危険な鳥を飛行中に捕らえることもあり、他の肉食性の鳥から獲物を横取りする「クレプトパラサイティズム」も見られます。
営巣と繁殖
繁殖は北緯60度以北を中心とするツンドラで行われ、レミングなど餌動物の個体数変動に応じて、時には通常より南の緯度で繁殖することもある遊動性の強い鳥です。ユタキアギヴィクで記録された239件の繁殖の試みのうち、232件が一雌一雄制で、残り7件は一雄が複数の雌と関係を持つ「社会的重婚」でした。
バフィン島では、1頭の雄が2頭の雌と繁殖し、合わせて11羽の巣立ち雛を残した例が記録されています。ノルウェーでも同様の重婚例が報告され、この場合2頭の雌の巣は1.3km離れていました。シェトランド諸島のフェトラー島では1967年から1975年にかけて、1頭の雄が2頭の雌(片方はより若く、おそらく自身の娘であった)と繁殖した例も知られています。
巣はツンドラの地面に営まれ、繁殖成功はレミングなど主要な餌の豊富さに大きく左右されます。個体の寿命は最長で28年に達するとされています。
保全と脅威
シロフクロウはIUCNにより「危急(Vulnerable)」に分類されており、これは絶滅の危険が高まりつつある状態を示します。この分類は2017年に格上げされたもので、北アメリカの個体群は1960年代から52%減少したと推定され、1970年から2014年にかけては64%という、より深刻な減少率を示す推定もあります。スカンディナビアでも同様の減少傾向があるとみられ、スウェーデンでは2015年以降繁殖が確認されておらず、2025年の予備評価で「絶滅」として扱う提案がなされています。
世界の成熟個体数はかつて20万〜29万羽と推定されていましたが、より精緻な調査により、実際の繁殖対のつがい数は1万4千〜2万8千対にすぎないことが判明しました。レミングの個体数が減少する年には、繁殖する雌の数は世界全体で1,700羽まで落ち込むこともあり、これは危険なほど低い水準です。個体数はかつて考えられていた規模の10%未満であることが分かってきています。
米国の標識調査局に報告された438件の死亡例のうち、原因が判明したものはほぼすべて人間活動に関連しており、11.9%が射殺、7.1%が自動車との衝突、3.9%が鉄塔や電線との衝突、2.1%が航空機との衝突によるものでした。飛行場周辺での活動が多いため、カナダをはじめシベリアやモンゴルでも航空機との衝突が懸念されています。本種はワシントン条約(CITES)附属書IIに掲載され、国際取引が規制されています。
保全状況
- LC
- NT
- VU
- EN
- CR
危急種
文化的意義
シロフクロウは、J・K・ローリングの小説「ハリー・ポッター」シリーズおよびその映画版に登場する雌のシロフクロウ「ヘドウィグ」として広く知られています。作品の人気により違法な取引が増えるのではないかという懸念が報道で示されましたが、実際には闇市場で押収される個体数が明確に増加したという強い証拠は見つかっていません。ただし、野生動物保護施設に持ち込まれる個体数がやや多かったとの報告があります。
フランス語で「harfang des neiges」と呼ばれるシロフクロウは、カナダ・ケベック州の鳥類としての象徴にもなっています。
豆知識
- 羽毛の熱伝導率はアデリーペンギンに次いで低いとされ、ダルシープや北極ギツネと並ぶ極地屈指の断熱性を誇ります。
- マイナス62.5度の環境でも明らかな苦痛を見せずに活動した記録があり、マイナス93度への5時間の暴露にも耐えたとされています。
- 鳴き声は北極の澄んだ空気の中で3km以上、条件によっては10〜11km先まで届くことがあります。
- 耳羽は20〜25mmほどとごく短く、10枚ほどの小さな羽から成り、通常はほとんど目立ちません。
- 寿命は最長で28年に達するとされています。
- 1886年2月、ニューファンドランドのグランドバンクスから800km以上離れた海上を航行中の蒸気船の索具に、1羽のシロフクロウが降り立った記録が残っています。
生態
生息地
- 海洋性
- 海岸
- 山地
- ツンドラ
食性
- 肉食
行動
- 捕食者
- 単独性
- 渡り性
- 薄明薄暮性


