観賞魚としてもっとも人気のある魚の一つであるキンギョ(Carassius auratus)は、コイ科に属する淡水魚です。飼育下では最長で約生きることが知られています。
コイ目に属し、人の手で長く繁殖されてきた魚です。国際自然保護連合(IUCN)の評価では、絶滅のおそれがもっとも低い「軽度懸念」に分類されています。
一方で、飼育されていた個体が野生に放たれ、北米やオーストラリアの一部では侵略的な害魚になっています。身近な観賞魚がどのように自然へ影響するのかを知る好例です。
識別と外見
キンギョの最も特徴的なところは、体色が環境や成長段階で大きく変わることです。野生の若い個体は金属的な茶色をしていますが、成長して品種本来の色が現れると橙色などの鮮やかな色になります。
体の色は食べ物、水質、光の当たり方、年齢や健康状態によって左右されます。長く暗い場所に置かれると、体色が次第に灰色がかっていきます。これは、皮膚の色素細胞が光に反応して色素を作り出す仕組みによるものです。
キンギョは品種によって体形が大きく異なります。体の形が極端に改良された品種では、自然な形で繁殖できないものもあります。
寿命は飼育下で最長約に及ぶことが知られています。
分布と生息地
キンギョは主に温帯地域の淡水域や湿地に生息しています。川、湖、池、沼、湿地、沼沢地など、流れが遅いか止まっている水域を好みます。
水深は1〜20メートルの範囲で見られ、平均的な生息深度は10メートルほどです。水草が生い茂る泥質の浅い水域に多いとされています。
水温は0〜10°Cの低温にも耐えられ、30〜40°Cの高温にも耐えることができます。pHは5.5〜7.0の水でよく見られますが、10.5までの水でも生きられます。塩分は千分の17ほどまでなら耐えられますが、千分の15を超える水では十分に生育しにくくなります。
観察情報の多くは6月ごろに集中しており、この時期に見つかりやすい傾向があります。

行動と暮らし
キンギョは群れで暮らす社会性の強い魚です。群れを作って泳ぎ、群れの中で仲間とやり取りをしながら行動します。群れは天敵から身を守るうえでも役立っています。
活動のピークは夕暮れと夜明けです。冬に水温が10°C以下に下がり、酸素が十分にあるときは、動きを抑えて冬眠のような状態になります。酸素が少ない環境では、2°C程度の低温下で数か月ほど耐えられるとされています。
移動距離は生息環境によって異なります。オーストラリアのマレー川では、産卵に関連した季節移動の中で、1日平均0.30キロメートル移動した個体が見られました。ある個体は1年間で231.3キロメートルを移動し、別の個体は1日で5.4キロメートル動いたことがありました。韓国のダム湖では、1日平均1.4キロメートルの移動が確認されています。川に住む個体は、産卵期になると流れの緩やかな止水域へ移動します。キンギョは縄張りを持ちません。
同種の個体同士で攻撃し合うことはほとんどなく、社会的な序列もありません。人に対しては、姿を覚えて近づいてくることもあります。飼い主の姿を見ると水面近くに寄ってきて餌をねだるようになり、毎日同じ時刻に餌を与えると、その時間を覚えて待つようになります。記憶は少なくとも3か月以上続きます。
コミュニケーション
キンギョは体の側面に並ぶ側線という感覚器官で、水の動きや振動を感じ取ります。泳ぐときに生じる水の波や流れを捉えて、周囲の仲間の位置を知ることができます。
音は2〜3 kHzまでの範囲を聞き取れます。内耳は浮き袋と結びついていて、水圧の変化を感じ取ることができます。
視覚は四色型で、赤、緑、青に加えて紫外線を見ることができます。紫外線は水中で光よりも届きやすく、捕食者や餌を見つけるのに役立つと考えられています。水中の目印を覚えて、自分の位置を確かめることもできます。
化学物質による情報のやり取りも重要です。雌は産卵期に特定のフェロモンを放ち、それを感じた雄は精子を含む白濁液(ミルト)を多く放出します。また、皮膚が傷ついたときには警戒を促す物質を分泌し、群れの仲間に周囲を見張るように伝えます。
食性と栄養
キンギョは日和見的に食べ物を取る雑食性の魚です。植物、昆虫、卵、甲殻類など、さまざまなものを食べます。水草の間や砂地を広く探し回って餌を集めます。
池で調べられた例では、食事の約45%が水草などの植物でした。ユスリカ科やカ科などの昆虫が約21%を占め、小型の甲殻類は約4%でした。ミミズなどの陸生の虫や、水中のデトリタス(有機物の破片)も食べます。ときには死んだ虫や甲殻類も食べます。両生類の卵を食べることもあるとされています。
飼育下では、主に市販の人工飼料と、エンドウなどの野菜を食べます。稚魚は成魚と同じ食べ物を、より少ない量で食べます。雄と雌の間で食べ物に違いはありません。
繁殖と生活史
キンギョは2月から6月にかけて繁殖し、水温が10°C以上になると産卵を始めます。産卵は毎月1回ほどの間隔で行われます。雄と雌は3〜4歳で性成熟します。
繁殖期には、雌が特定のフェロモンを水中に放ち、雄に産卵の準備を知らせます。雌が卵を放つと、雄が近づいて体をぶつけ合いながら追いかけます。雄は卵の近くでミルトを放出して受精させます。1匹の雌が複数の雄と交尾する、乱交的な繁殖の仕組みです。
雌は1回に2000〜4000個の卵を産みます。最も多い記録では38万個に達したとされています。卵は粘着性があり、カボンバやオオカナダモなどの茂った水草に付着します。卵は2〜9日でふ化します。
ふ化した仔魚は親から独立して生きていきます。親は子育てをせず、成魚は自分の子を食べることもあります。稚魚は捕食されるリスクが高いため、初めの数週間で急速に成長します。体が成魚の色になるまでには、1年ほどかかることもあります。
個体数と生態的役割
キンギョは、自然の生態系の中でさまざまな役割を果たしています。餌を探して底をかき回すことで、底に堆積した物質を攪拌し、栄養分を水中に広げます。これにより、ほかの生物にとっての餌の量が増えることもあります。また、ほかの動物の餌となり、哺乳類などに食べられることもあります。
キンギョには多くの寄生生物が知られています。内部寄生虫には吸虫や線虫、原生生物などがおり、体の表面には魚ジラミやアンカーワーム、ヒルなどがつきます。
家畜化と人との歴史
キンギョは、古くから中国で観賞用に改良され、その後日本やヨーロッパに広がった魚です。長い年月をかけて、体の形や色が多様な品種へと改良されてきました。極端に改良された品種では、体形のために自然に繁殖できないものもあります。その場合、人工的に卵や精子を採取する方法が使われることもありますが、誤ると魚を傷つけるおそれがあります。
現在では、繁殖と販売が人の収入源になっています。ペットとして売られるほか、大型の肉食魚の餌としても取引されます。価格は餌用の安価な個体から、希少な品種の高価なものまで幅があります。また、毒性試験を含むさまざまな研究にも使われています。
飼育では水温管理が重要です。急な温度変化や低温、高温は魚を弱らせ、死なせることがあります。池で飼う場合は、品種によって越冬できる地域が異なります。
保全と脅威
キンギョは国際自然保護連合(IUCN)の評価で「軽度懸念」に分類されており、絶滅の危険は低いと評価されています。米国連邦の保護リストやワシントン条約(CITES)、ミシガン州のリストにも特別な指定はありません。
野生化したキンギョは悪い水質にも耐える力が強いため、水質の悪化や地球温暖化による大きな影響は受けにくいとされています。一方で、ほかの魚種との交雑が懸念されています。
外来地域では、野生化した個体を取り除く取り組みが行われることがあります。現時点で、キンギョ自体を守るための特別な保全活動は行われていません。
文化的意義
キンギョは中国で、幸運と繁栄を象徴する魚として親しまれてきました。中国の美術では、豊かさや幸運を表すものとして描かれています。日本でも幸運と富を象徴する魚とされています。
中国には、滝を登りきったコイが龍になったという「竜門」の伝説があります。この伝説は、コイとその子孫であるキンギョが人々に大切にされてきた理由の一つとされています。
現在では、ペットや観賞魚として多くの人に飼われ、研究や教育にも使われています。
豆知識
- 稚魚は捕食されるリスクが高いため、生まれてからの数週間で急速に大きくなります。
- 池で品種が混ざって飼われると、泳ぎの速い品種が餌を先に食べ尽くしてしまい、体形の大きい品種が育ちにくくなることがあります。
写真
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生態と分類
分類
- 門
- Chordata
- 目
- Cypriniformes
- 科
- Cyprinidae
- 属
- Carassius
- 種
- Carassius auratus
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract
- Encyclopedia of Life Habitat, diet and behavior traits
- Animal Diversity Web Animal habitat, behavior and diet
- AnAge Longevity


