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ハナゴケ

Cladonia rangiferina

灰白色から灰褐色で、細かく枝分かれした低いブッシュ状の地衣類が地表に密集して広がっている様子写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

ひと目でわかる

主な特徴
森林低木林山地ツンドラ
分類
門
Ascomycota
綱
Lecanoromycetes
目
Lecanorales
科
Cladoniaceae
属
Cladonia
種
Cladonia rangiferina

ハナゴケ(Cladonia rangiferina)は、液体窒素に浸されても、飽和塩水にさらされても、-40℃の低温下でも呼吸を続けることが実験で確認されている、驚くほど過酷な環境耐性を持つ生物です。

ハナゴケは、菌類と藻類が共生する地衣類の一種で、Cladoniaceae(ハナゴケ科)、レカノラ目、レカノロマイセス綱、子囊菌門に属します。寒冷な気候から比較的温暖な気候まで幅広く分布し、排水の良い開けた環境、とくにタイガ(北方林)やツンドラ、高山帯を好みます。

一部の地域では絶滅が懸念されており、たとえば英国コーンウォール公領では英国生物多様性行動計画のもとで保護対象とされています。極寒地に生きる強さと、後述するトナカイをはじめとする動物や人々の暮らしとの深い結びつきが、この地衣類を知る価値を与えています。

子実体と識別

ハナゴケを識別する最も分かりやすい特徴は、細かく枝分かれした灌木状(フルティコース型)の地衣体です。枝はほとんどが3本または4本(時に2本)に分岐し、太い枝の直径はおよそ1〜1.5ミリメートルです。色は灰色、白っぽい色、あるいは灰褐色を帯び、地表に高さ10センチメートルほどのマット状の群落を形成します。

近縁で見た目の似たCladonia portentosaとの違いは、枝の分岐する角度にあります。ハナゴケの分岐角度はC. portentosaより小さく、全体として枝がより密に、鋭角にまとまって見えます。また、ハナゴケには植物の表皮に相当するような明確な皮層(コルテックス)がなく、代わりに緩い菌糸の層が光合成共生者であるTrebouxia irregularisを覆っています。

生殖に関わる部分では、枝の先端が傘状の小さな集まりに分かれ、そこに子器(アポテキア)が形成されますが、これは成長中の枝先のすぐ下に隠れるように付くため、群落の中に埋もれて見えにくいことがあります。成長は非常に遅く、年に3〜11ミリメートル程度にとどまります。主な二次代謝物質としてアトラノリンとフマルプロトセトラリン酸が知られ、その他にもハナゴケノールAやBなどのアビエタン系ジテルペノイドをはじめ多数の生理活性物質が単離されており、一部はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌に対して弱い抑制作用を示すことが報告されています。

分布と生息地

ハナゴケは主にタイガとツンドラに分布し、カナダの北方林をはじめとする湿った開けた森林、岩場、ヒース地など幅広い環境の地表を覆います。腐植質の上や、岩の上に薄く積もった土壌の上に生育するのが特徴です。

ネパールでは高度3,400〜4,500メートルという、森林限界を超える高山帯からも記録が報告されており、垂直方向にも広い分布幅を持つことがわかります。

こうした広い分布を可能にしているのが、凍結、乾燥、強い紫外線、高い塩分濃度といった極端なストレスへの強い耐性です。低温や乾燥にさらされても機能を保つ能力が、寒冷な高山帯から比較的過酷な開放地まで生育域を広げていると考えられます。

GBIFの月別観察記録では6月から8月にかけて件数が大きく増え、7月には8,945件に達しています。ただしこれは観察された記録の数であり、個体数や分布の全体像を示すものではなく、夏季に野外調査や観察活動が増えることを反映している可能性がある点に注意が必要です。

Cladonia rangiferinaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
8,945
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

生態と関わり

ハナゴケの繁殖状態は微気候によって大きく変わります。水分条件や大気湿度が良好な場所では、子器を多く持つ丈の高い群落(ポディチウムで最大12センチメートルほど)が発達しますが、乾燥した場所では子器を持つ群落がまれで、丈も4〜6センチメートルと短くなります。

フィンランドでの研究によれば、ハナゴケの成長速度は年間3.9〜4.4ミリメートルで、樹齢60年未満の若く陰のある森林で最も速く成長し、樹齢180年を超える古い、間伐された森林で最も遅くなることが分かっています。

また、ハナゴケはLichenopeltella rangiferinae(その名の通りハナゴケにちなんで命名された種)、Lichenoconium pyxidatae、Lichenopeltella uncialicolaといった、地衣類に寄生する菌類の宿主にもなっています。

利用と文化史

ハナゴケは食用にもなりますが、そのままでは食感が硬くしゃりしゃりしています。木灰と一緒に浸して苦みを取り除いたうえで、牛乳や他の料理に加えて利用され、ビタミンDの供給源としても知られています。

アクアビットの製造に使われたり、ガラス窓の装飾に用いられたりすることもあります。東ヒマラヤの西カメン県に暮らすモンパの人々は、腎臓結石の除去を目的とした伝統薬としてこの地衣類を用いてきました。北米内陸部のデナイナの人々は、乾燥させたハナゴケをすり潰してから煮たり熱湯に浸して柔らかくし、そのまま、あるいはベリー類や魚卵、ラードと混ぜて食べます。彼らはまた、煮汁を下痢の薬として飲用してきました。ただし地衣類に含まれる酸の影響で、十分に加熱調理されない場合は胃の不調を引き起こすことがあるとされています。

さらに、ハナゴケは鉄道模型の世界で低木や樹木の模型材料として人気があります。2017年に発表された研究では、スウェーデン北部の森林火災で焼けた土地に、わずか2年でハナゴケが再生し始めたことが確認されており、トナカイの放牧地を回復させる手段として人為的な再植栽が有効である可能性が示唆されています。

保全と脅威

ハナゴケは分布全体としての世界的な絶滅危惧指定は示されていませんが、地域によっては絶滅が懸念される存在です。たとえば英国コーンウォール公領では英国生物多様性行動計画のもとで保護対象に指定されています。

主な脅威として考えられるのは、過放牧や火災、踏みつけなどによる地衣体の損傷です。ハナゴケは年間3〜11ミリメートルという非常に遅い速度でしか成長しないため、一度損傷を受けると回復までに数十年を要することがあります。

豆知識

  1. 学名の正式な表記は Cladonia rangiferina (L.) Weber ex Wigg. です。
  2. 地衣類が形成される初期過程を調べる再合成実験では、菌類と藻類のパートナーを別々に培養したあとで再び組み合わせ、共生関係が成立していく様子が観察されています。
  3. 英語では「reindeer moss(トナカイのコケ)」という通称でも知られ、北方の狩猟・牧畜文化のなかで季節の巡りや動物との共生を象徴する存在とされています。
  4. ハナゴケにはウスニン酸という二次代謝物質も含まれています。

生態

生息地

  • 森林
  • 低木林
  • 山地
  • ツンドラ

写真

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灰白色から灰褐色で、細かく枝分かれした低いブッシュ状の地衣類が地表に密集して広がっている様子写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipedia