このキノコの最大の特徴は、採取されたり胞子を放出したりすると、わずか数時間で全体が黒く溶けてしまうことです。若い子実体は地面から白い円柱状に姿を現し、やがて鐘형の傘へと開いていきますが、その傘は白く、うろこ状の鱗で覆われています。傘の下のひだは最初白く、次第にピンク色に変わり、最後には真っ黒になって液状化します。
Coprinus comatus(ササクレヒトヨタケ)は担子菌門ハラタケ目ハラタケ科に属する菌類で、北米やヨーロッパを中心に広く分布しています。保全状況は「低危険度(Least Concern)」とされており、絶滅の心配は少ない種です。
雨のあとに突然姿を現し、数時間のうちに自らを溶かしてしまうという性質は、多くの人にとって驚きであり、キノコという生物の不思議さを実感させてくれる存在です。
子実体と識別
最も識別しやすい特徴は、ほぼ円柱形をした独特の傘です。幼菌のうちは傘が茎の大部分を覆っており、成長するにつれて開いていきます。傘の幅は4〜8センチメートル、高さは6〜20センチメートルに達し、全体的に白く、うろこ状の鱗で覆われています。鱗は傘の先端付近ではやや淡い褐色を帯びます。
ひだは柄から離れており、白色からピンク色へと急速に変化し、最終的には黒い液体へと溶解(自己消化)します。この黒い液体には多量の胞子が含まれており、「インクキャップ」の名の由来となっています。柄は白く、比較的太めで、高さ6〜40センチメートル、直径1〜2.5センチメートルほどあり、下部には緩んだ輪(つば)が見られます。顕微鏡下では側シスチジアを欠くことが確認されており、胞子紋は黒褐色で、胞子のサイズは10〜13×6.5〜8マイクロメートルです。肉は白く、味は穏やかとされています。
見た目が似た種として、有毒な Coprinopsis picacea(マグパイファンガス)が挙げられます。北米では Chlorophyllum molybdites が本種としばしば混同され、キノコ中毒事例の多くを占めています。また、コプリン(coprine)という物質を含む Coprinopsis atramentaria は、アルコールと一緒に摂取すると中毒を引き起こすことが知られており、外見も本種に似ています。さらに Podaxis pistillaris もよく似た姿をしています。
分布と生息地
本種は北米とヨーロッパの草地や牧草地に群生し、イギリスでは6月から11月にかけて見られます。オーストラリア、ニュージーランド、アイスランドにも移入されたと考えられています。
生育場所としては、土壌の上や芝生、道路や小道の縁、人為的に変化した土壌など、開けた地面に直接発生することが多いようです。
GBIFの月別観察記録では、9月から11月にかけて観察数が急増し、10月に最も多くの記録(77,349件)が集中しています。これはあくまで発見された記録の集計であり、生息数や完全な分布範囲を示すものではありませんが、秋の時期に本種が目立って姿を現す傾向がうかがえます。

生態と関わり
本種は土壌や芝生の上に直接発生し、開けた草地や牧草地、道路脇などの人為的に乱された土地でもよく見られます。こうした場所で有機物を分解する役割を担っていると考えられます。
特筆すべき生態的特徴として、Coprinus comatus は線虫捕食性の菌としても知られています。Panagrellus redivivus や Meloidogyne arenaria といった線虫の種を捕らえて消化する能力を持っており、単なる分解者としてだけでなく、小型の土壌動物を捕食する菌としての側面も持っています。
利用と文化史
オーストラリアでは本種が十分に一般的な存在であったため、1981年にオーストラリア郵便が発行した切手の図案に採用されました。身近な自然の象徴として、こうした形で文化の中に取り入れられてきたことがうかがえます。
豆知識
- 多くの文化において、雨の後に突然姿を現す様子から「一夜で生えてくる魔法のような存在」と見なされてきました。
- 液化した Coprinus comatus は、ジョージ・ワシントンの時代に書き物用のインクとして用いられていたと伝えられています。
- 傘が開いて自己消化するまでの過程が非常に速いため、観察のタイミングによって全く異なる姿を見せる点が本種の大きな特徴です。
保全状況
- LC
- NT
- VU
- EN
- CR
軽度懸念
生態
行動
- 捕食者
生息地
- 草原
- 都市
- 荒れ地



