Encephalartos woodii は、野生でただ一体の雄株からしか知られておらず、現存する全ての個体がその一本の株を起源とするクローンであるという、植物界でも類を見ない特異な存在です。
本種はソテツ目ザミア科に属する裸子植物で、南アフリカ・クワズール・ナタール州のオンゴエ(oNgoye)森林にのみ分布していた固有種です。IUCNのカテゴリーでは「野生絶滅(Extinct in the Wild)」に区分されており、自然界からは完全に姿を消しています。
発見から120年以上を経てなお、雌株が見つからない限り自然繁殖が不可能という運命を背負ったまま、世界中の植物園で命をつないでいる姿は、孤独と唯一性の象徴として多くの人の関心を集めています。
識別と外見
最も目立つ特徴は、鮮やかな黄橙色をした円柱形の雄花錘(コーン)で、これが本種を一目で印象づけます。
樹形はヤシに似た姿で、高さは最大6メートルに達します。幹の直径は30~50センチメートルで、基部が最も太く、その先端に50~150枚の葉からなる樹冠を戴きます。葉は光沢のある濃緑色で、長さ150~250センチメートル、竜骨状(キール状)に配置され、70~150枚の小葉を持ちます。小葉は鎌形(falcate)に反り、長さ13~15センチメートル、幅20~30ミリメートルです。
雄花錘は円柱形で長さ20~40センチメートル、稀に120センチメートルに達することもあり、直径は15~25センチメートルです。色は鮮やかな黄橙色で、1個体が同時に6~8個の花錘をつけることもあります。
本種は雌雄異株(ディオイシャス)とされていますが、これまで雌株は一度も発見されていません。そのため、雌株の外見的特徴は知られておらず、識別上比較できる相手も存在しません。
分布と生息地
知られている唯一の野生個体群は、1895年にウッドが南アフリカ・クワズール・ナタール州のオンゴエ森林の一角で発見した、4本の幹からなる一つの株のみでした。発見地は森林の縁にある南向きの急斜面で、年間降水量は750~1,000ミリメートル、夏は暑く冬は温暖な気候でした。
この唯一の野生株からは、1899年に基部の吸芽(オフセット)の一つが切り出されキュー植物園へ送られ、1903年にはウッドの部下ジェームズ・ワイリーがさらに3個のオフセットを採集してダーバン植物園に植えました。1907年の調査では大きな幹2本が採集され、残った幹のうち最大のものは損傷がひどく生存が見込めないと記録されています。1912年には高さ約3メートルの幹が1本だけ野生に残っていましたが、1916年に林業局によってプレトリアの政府植物学者のもとへ移送され、1964年に枯死したとされています。
野生では完全に絶滅した一方、栽培下では世界各地の植物園や施設に約500個体が現存し、すべてが元の一株から増殖されたクローンです。ダーバン植物園、キルステンボッシュ、キュー植物園、アムステルダムの植物園、アメリカのロングウッド・ガーデンズやロータスランドなど、複数の大陸にわたって保存栽培されています。栽培下では、エンケファラルトス属の中でも比較的成長が早く、旺盛に育つことが知られています。
また、E. gratus、E. natalensis、E. transvenosus、E. arenarius、E. horridus など他のエンケファラルトス属種との交配個体もいくつかの収集家のコレクションで育成されています。GBIFの観測記録では10月に5件とやや多い月がある程度で、明確な季節的な出現ピークは見られません。これらの記録は栽培下の個体の観察に基づくものであり、野生における分布や個体数を示すものではない点に留意が必要です。

繁殖と生活史
本種は種子による繁殖ではなく、幹の基部から生じる急速に成長する吸芽(サッカー)によって栄養的に増殖します。
雌株が発見されない限り、Encephalartos woodii は自然な形で繁殖することは決してできません。近縁種の Encephalartos natalensis との間では交配可能な雑種が形成されることが知られており、雑種を繰り返し E. woodii と戻し交配(バッククロス)することで、世代を経るごとに本来の雌株に近い個体を作り出す試みが行われています。
しかし、E. woodii と E. natalensis の雑種第一世代の葉緑体DNAを解析した結果、葉緑体はすべて母親である E. natalensis から遺伝することが判明しました。これは、何世代戻し交配を重ねても、その子孫が葉緑体レベルで「純粋な」E. woodii にはなり得ないことを意味しています。
利用と人との関わり
Encephalartos woodii は、その希少性と唯一性から世界中の人々の想像力をかき立て、大衆文化の中でも取り上げられるようになりました。
特に、雌株が一度も見つからないまま野生絶滅したという運命から、孤独と唯一性の象徴として様々なメディアで紹介されています。
保全と脅威
IUCNのカテゴリーでは「野生絶滅(Extinct in the Wild)」とされており、これは自然環境下では個体が一つも存在せず、栽培下でのみ生存が確認されている状態を意味します。
最大の問題は、既知の唯一の野生株から個体が次々と持ち出され、最終的に野生の幹が完全になくなってしまったことです。オンゴエ~ムトゥンジニ地域では幾度も調査が行われましたが、これまで他の個体は一切見つかっていません。
エンケファラルトス属の他種と同様に、本種は国内および国際的な法律によって保護されています。南アフリカ国内では、絶滅危惧種の植物を移動・売買・譲渡・受領・栽培する場合や成木を所有する場合には、自然保護当局からの許可証が必要です。国際的には、エンケファラルトス属の全種と雑種がワシントン条約(CITES)附属書Iに掲載されており、野生採取された個体の取引は禁止され、栽培個体であっても国境を越える輸送には輸出国・輸入国双方のCITES許可証が必要とされています。
保全状況
- EW
野生絶滅
豆知識
- 現存するEncephalartos woodii は世界に約500個体あるとされますが、そのすべてが1895年に発見された単一の雄株から増殖されたクローンです。
- 発見者ジョン・メドリー・ウッドは本種を「エンケファラルトス属の中で最も美しいもの」と評しました。
- 種名および英語の通称は、発見者であり、ダーバン植物園の管理者兼ナタール政府植物標本館の館長を務めたジョン・メドリー・ウッドに由来します。
- キュー植物園に1899年に送られた個体は、1997年にパームハウスからテンパレートハウスへ移され、2004年9月に初めて雄花錘をつけました。到着から実に100年以上を要しました。
- 雌雄異株とされているにもかかわらず、これまで雌株は一度も発見されていません。
- 栽培下では他のエンケファラルトス属の種と交配され、複数の雑種個体がコレクションの中で育成されています。
- 雌株のいないまま存続を続けるその運命から、大衆文化の中では孤独と唯一性の象徴として語られています。
生態
生息地
- 森林
生育型
- 高木



