Ephedra distachya(フタマタマオウ)は、乾燥に強い姿を保ちながら中生代からほとんど形を変えていないとされる、生きた化石のような裸子植物です。全草にアルカロイドの一種であるエフェドリンを含み、興奮剤や薬用植物として古くから知られてきました。
本種はエフェドラ科(Ephedraceae)に属する低木で、南欧・中欧から西アジア・中央アジアにかけて広く分布し、保全状況は「低危険種(Least Concern)」とされています。ソーマ(Soma)やハオマ(Haoma)といった古代の聖なる飲料との関連が指摘されるなど、神話や薬用の歴史においても興味深い存在です。
識別と外見
最も分かりやすい特徴は、高さ25〜50センチほどの小さな灌木状に育つ姿です。地表近くから多数の細い茎が分かれて伸び、全体としてこんもりとした低木の形をつくります。
草丈は他の樹木のように大きくならず、砂地や岩場の低い植生の中でも目立つ存在です。花や葉の詳しい形態についての記録は限られていますが、乾燥した砂丘や岩の多い環境に適応した、細くしなやかな茎の質感が識別の手がかりになります。
分布と生息地
Ephedra distachyaは、固定され安定した「グレイデューン(grey dune)」と呼ばれる、連続した植生に覆われた砂丘に生育することが知られています。生息地は草原や砂地、標高900メートル以下の岩の多い山の斜面にまで及び、比較的幅広い地形に適応しています。
観察記録の月別集計を見ると、5月に2,770件、6月に2,256件、7月に2,217件と春から初夏にかけて記録数が大きく増え、冬季の11月には180件まで減少しています。この傾向は、この時期に人目に触れやすい状態になる、あるいは観察活動が活発になることを示している可能性がありますが、GBIFの記録はあくまで「観察された」という事実を示すものであり、個体数や分布の全体像、生息密度を表すものではない点に注意が必要です。
分布域は南欧・中欧から西アジア・中央アジアまで広がっており、地中海沿岸の砂浜(たとえばギリシャのテッサロニキ近郊のエパノミ海岸)でも生育が確認されています。

利用と人との関わり
Ephedra distachyaの全草にはエフェドリンが最大約3%含まれており、この成分は1885年に長井長義によって本種から単離されたことで知られています。エフェドリンは興奮剤として、また喘息の症状を抑えるために利用されてきました。
乾燥させた枝は「ティームスターズ・ティー(teamsters' tea)」と呼ばれ、急性の筋肉痛やリウマチの痛みを和らげるために用いられてきました。また、アーユルヴェーダの医学体系では強心作用のある滋養剤として位置づけられています。
本種は、ゾロアスター教の聖典アヴェスタやヒンドゥー教の聖典リグ・ヴェーダに登場する伝説の飲料「ソーマ」と同一視されることもあります。青銅器時代、紀元前2000年頃の地中海・中央アジアの遺跡からは、儀式に用いられたとみられるエフェドラ含有混合物の痕跡がアルカロイド残留物として検出されており、興奮作用を目的とした儀式的な摂取が行われていた可能性が指摘されています。
豆知識
- Ephedra distachyaに似たグネトフィタ類の姿は中生代からほとんど変化していないとされ、被子植物が多様化する以前の乾燥地の植物相を今に伝える存在です。
- 紀元前2000年頃の青銅器時代、地中海や中央アジアの遺跡から、エフェドラを含む混合物を儀式的に摂取した痕跡とみられるアルカロイド残留物が見つかっています。
- エフェドリンは1885年に日本の化学者・長井長義によって本種から初めて単離されました。
- 全草には最大で約3%のエフェドリンが含まれており、植物全体がこの成分を持つ点が特徴です。
- 古代の聖典アヴェスタやリグ・ヴェーダに描かれる伝説の飲料「ソーマ」と同一視されることがあります。
- 生息地の一つである「グレイデューン」は、植生に覆われて安定化した砂丘を指す特殊な地形です。
保全状況
- LC
- NT
- VU
- EN
- CR
軽度懸念
生態
生息地
- 海岸
- 低木林
- 山地
- 草原
生育型
- 低木



