Ephedra nevadensisは、興奮作用のあるアルカロイド「エフェドリン」を多く含む麻黄(Ephedra sinica)の仲間でありながら、そのエフェドリンをほとんど含まないという珍しい特徴を持つ植物です。この性質のおかげで、先住民やモルモン教徒はこの植物を穏やかな薬草茶として日常的に利用してきました。
分類上はEphedraceae科・Ephedrales目に属する裸子植物(Gnetopsida綱)で、北米西部の乾燥地帯に自生します。保全状況はIUCNによって「低危険種(Least Concern)」と評価されています。
葉を持たないという裸子植物らしからぬ姿と、砂漠の過酷な環境に適応した生態、そして先住民の暮らしに深く関わってきた歴史が、この植物を知る価値のあるものにしています。
識別と外見
最大の特徴は、通常の広い葉を持たないことです。光合成は緑色を帯びた細い節状の茎そのものが担っており、この葉の欠如が風による花粉の伝播を助けていると考えられています。
現時点で得られている情報では、体高や色彩、雌雄間の詳細な形態差、近縁種との具体的な見分け方についての記述は限られています。
分布と生息地
Ephedra nevadensisは標高610メートルから2,150メートルの範囲に分布し、最も一般的に見られるのは標高1,350メートル以下の乾いた斜面や丘陵地です。地域によって分布高度には差があり、ネバダ州では760〜1,830メートル、ユタ州では1,220〜1,830メートル、カリフォルニア州では1,100メートル未満、バハカリフォルニアでは1,190〜1,280メートルの範囲で確認されています。
生育地はヤマヨモギ属(Artemisia)の低木地、砂漠低木地、パイニョン・ジュニパー林、そして塩性砂漠の縁部など多岐にわたります。土壌は浅く岩の多いもの(深さ最大60センチメートル程度)を好み、しばしば石灰岩質です。塩分への耐性は高い一方で酸性土壌には全く耐えられず、年間降水量はおよそ178ミリメートル程度あれば生育可能とされる乾燥耐性の強い植物です。
この種はモハーヴェ砂漠とグレートベースン砂漠の移行帯で特に群落の優占種となることが知られており、ネバダ州ではコロラドパイニョン(Pinus edulis)やウィンターファット(Krascheninnikovia lanata)などと共優占する場合もあります。
GBIFの月別観測記録では4月に観測数が最も多くなる傾向が見られますが、これは晩冬から春にかけての開花(コーニング)期と重なるものであり、あくまで観察された記録数を示すものであって、個体数や分布の全体像を表すものではない点に注意が必要です。

繁殖と生活史
Ephedra nevadensisは風媒花で雌雄異株であり、雄株は比較的乾燥した場所に、雌株はやや湿った場所に生育する傾向があります。この住み分けは種子生産量を高める仕組みだと考えられています。
花粉を生じる円錐状の生殖器官(コーン)は3月から6月にかけて成熟し、種子は5月から8月にかけて熟します。ただし種子は毎年つくられるわけではありません。葉を持たないという特徴は、風が花粉を運びやすくする点で繁殖に有利に働いているとされます。
野生下では種子はネズミなどの動物によって散布されることが多く、風媒と動物媒の両方の性質を種子構造に併せ持つことが指摘されています。栽培の場面では種子を採取して播種するほか、挿し木や移植によっても増やすことができます。またミュールジカ(Odocoileus hemionus)、プロングホーン(Antilocapra americana)、砂漠ビッグホーンシープ(Ovis canadensis)、家畜のヒツジなどに採食される、北米のエフェドラ属の中でも特に重要な採食対象植物です。
生態と関わり
Ephedra nevadensisはヤマヨモギ低木地、砂漠低木地、パイニョン・ジュニパー林、塩性砂漠の縁部まで、非常に幅広い生育環境に適応する植物です。
乾燥地に育つ植物である一方、火災は必ずしも頻発する脅威ではありません。これは葉が少なく燃料となる有機物が乏しいためで、火災自体が発生しにくい環境をつくり出しています。ただし火災が起きた場合、その後の再生能力は延焼期間や火の強さに大きく左右されます。
利用と人との関わり
Ephedra nevadensisは先住民によって食用および薬用に利用され、モルモン教徒の開拓者たちにはお茶の材料として使われてきました。ズニ族の間では、根を除いた全草を煎じたものが梅毒の治療に用いられ、また茶のような飲み物としても飲用されていたと伝えられています。
利用された部位は主に茎で、体内の水分過剰を和らげたり血液を清めたりする効果があるとされ、淋病や梅毒の初期症状、皮膚の傷、腎臓の不調、喘息に伴う呼吸器症状の緩和などに用いられてきました。ただし、麻黄など他のエフェドラ属種には興奮成分エフェドリンが含まれるのに対し、Ephedra nevadensisには目立った量が含まれていないため、家庭療法的な軽い不調への対処にとどまり、臨床的に大きな効果を期待できる根拠は現時点では乏しいとされています。
現代における最大の利用は家畜、特にヒツジやウシの飼料としてで、ウマにはあまり適さないとされています。栄養価に関する調査では、オーチャードグラス乾草(Dactylis glomerata)やチートグラス(Bromus tectorum)と比較して、アンモニア性窒素含量で2番目に高く、ルーメン内pHでは最も高い値を示しました。また妊娠・胎児への毒性を調べた別の調査では、母体・胎児のいずれにも異常や中毒症状は認められなかったと報告されています。ほかに景観用の栽培や、生育地の復元事業にも利用されています。
豆知識
- 「ネバダ」という名を持ちますが、実際の分布域はネバダ州にとどまらず、カリフォルニア州やオレゴン州からグレートベースン、コロラド高原、テキサス州、バハカリフォルニアまで広がっています。
- 麻黄(Ephedra sinica)の近縁種でありながら興奮作用のあるアルカロイドをほとんど含まないため、モルモン教徒の開拓者たちは単なる飲み物としてお茶を楽しんでいました。
- 小型のネズミや昆虫にはあまり利用されない一方で、ミュールジカやプロングホーン、砂漠ビッグホーンシープといった大型の野生動物や家畜には好んで採食されます。
保全状況
- LC
- NT
- VU
- EN
- CR
軽度懸念
生態
生息地
- 林地
- 低木林
- 草原
- 砂漠
生育型
- 低木



