Ephedra sinica(シナマオウ)は、古代インド・イラン宗教の秘薬「ソーマ」の原料植物ではないかと指摘されてきた、藪のような姿の裸子植物です。
マオウ科マオウ属に属するこの植物は、球果植物(マツやスギの仲間)に近縁な裸子植物で、モンゴル、中国北部、ロシアに自生します。乾燥した高地の斜面や涸れ川の河床、ステップ、農地、山腹など、厳しい環境に生育します。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「低危険種(Least Concern)」に分類されており、現時点では絶滅の心配は小さいとされています。
地味な外見の低木でありながら、その体内には強い薬理作用を持つアルカロイド、エフェドリンが蓄えられています。効能と危険性を併せ持つこの植物は、薬草としての人類の歴史そのものを物語る存在といえるでしょう。
識別と外見
最も分かりやすい特徴は、緑色の茎そのものが光合成を担い、葉は退化して小さくなっている点です。Ephedra sinicaは常緑の低木で、松のような強い香りと、渋みのある味わいを持ちます。この渋み(渇き)が、中国名「麻黄」——「黄色い渇き」あるいは「黄色い麻」を意味する名の由来になっています。
本種は標高400〜1,600メートルの低木林、森林、山腹に生育します。細く節立った緑色の茎に小さな葉が並ぶ姿は、遠目には葉のない棘のような低木にも見えます。
球果植物に近縁な裸子植物であるこの種は雌雄異株で、雄株と雌株が別々に存在します。花のような目立つ生殖器官は持たず、球果に近い構造で生殖を行います。
利用の面では、地上部の茎葉と、「麻黄根」と呼ばれる根とで、伝統中国医学における用途が異なります。強い香りと渋味は、本種を識別する際の有力な手がかりになります。
分布と生息地
Ephedra sinicaは、モンゴル、中国北部、ロシアを自生地としています。乾燥地帯を好む種として知られています。
生育地は、荒地や砂地、平原、山の斜面など、標高700〜1,600メートルの範囲に広がっています。水はけのよい乾燥した土壌を好み、ステップや涸れ川の河床、農地の周辺でも見られます。
GBIF(地球規模生物多様性情報機構)の月別観測記録を見ると、観測数は6月から8月にかけて明らかに増加しており、それぞれ62件、77件、51件と、この時期にピークが見られます。これに対し冬季の観測数はごくわずかです。ただし、これらの数値はあくまで生育が確認された記録の集計であり、個体数の多さや分布の全体像を示すものではない点に注意が必要です。

利用と人との関わり
Ephedra sinicaは「麻黄」の名で知られ、乾燥した茎の部分が伝統中国医学において約5,000年にわたり用いられてきました。アレルギー、鼻づまり、気管支喘息、咳、インフルエンザなどの治療に使われてきた歴史があります。
この植物に含まれる有効成分エフェドリンは、1885年に長井長義によって初めて単離・特性が明らかにされました。その後一時忘れられましたが、1920年代初頭にChenとSchmidtによって再発見され、注目を集めるようになりました。また、Ephedra属の植物はインド・イラン宗教の秘薬「ソーマ」の原料植物の候補としても言及されています。
豆知識
- 属名「Ephedra」は古代ギリシャ語で低木状の植物を指す言葉に由来し、種名「sinica」は「中国の」を意味します。
- 地上部の茎葉とは別に、根の部分は「麻黄根」と呼ばれ、伝統中国医学において異なる用途で使われてきました。
- Ephedra属の植物は、インド・イラン宗教における秘薬「ソーマ」の原料植物の候補のひとつとして挙げられています。
- 有効成分エフェドリンは1885年に長井長義によって初めて単離されましたが、その後忘れられ、1920年代初頭にChenとSchmidtによって再発見されました。
- IUCNレッドリストでは「低危険種」とされ、個体群は安定していると評価されていますが、広く栽培される一方で野生からの採取が資源に与える影響は未解明であり、潜在的な脅威とされています。
保全状況
- LC
- NT
- VU
- EN
- CR
軽度懸念
生態
生息地
- 低木林
- 山地
- 草原
- 砂漠
生育型
- 低木



