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Erythronium americanum

記録された一般名なし

群落の中で実際に花を咲かせる個体はわずか0.5%しかなく、しかも最初の花が咲くまでに4年から7年もかかります。Erythronium americanumはこのように非常に気の長い生活史を持つ植物です。

この種はユリ科に属する多年生の球根植物で、北米東部の広葉樹林に生育する「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる早春限定の花です。灰緑色の葉に褐色や灰色の斑模様が入り、その模様がブルックトラウトの体表の色合いに似ていることから「トラウトリリー」の名がつけられました。分布域内では非常にありふれた、広く見られる種とされています。

何百年も生き続ける可能性のある群落を作りながら、めったに花を咲かせないという矛盾した性質を持つこの植物は、森の地面に静かに広がる長い時間の物語を秘めています。

識別と外見

最も分かりやすい特徴は、灰緑色の葉に褐色から灰色、あるいは紫がかった斑模様が入ることです。この模様がブルックトラウトの体色を思わせることから名前の由来になっています。

花をつける個体は直立した花茎の先に、うなだれるように咲く両性花を一つつけます。花は黄色く反り返った6枚の花被片(花弁3枚と萼片3枚)からなり、長さは20から33ミリメートルほどです。花は夜になると閉じます。開花は周囲の樹木がまだ葉を広げる前の早春に行われ、これにより日光を十分に受けられ、土壌の養分が豊富なうちに成長できます。

葉の形で花をつける個体かどうかを見分けることができます。花をつけない個体は葉を1枚だけつけるのに対し、花をつける個体は2枚の基部葉をつけます。葉は長さ8から23センチメートルで、楕円形から披針形まで変化し、葉縁は滑らかです。

分布と生息地

分布の中心は北米東部で、カナダ東部からノースカロライナ州にかけての温帯地域に広がっています。ケベック州やオンタリオ州、ニューファンドランドなどカナダの州に加え、メイン州からジョージア州、さらに西はミネソタ州やミズーリ州まで、アメリカ東部の広範な州に自生が確認されています。

生育環境は森林、特に落葉広葉樹林の林床です。観察データでは春の数か月に記録が集中しており、これはこの植物が開花し、葉を展開するスプリング・エフェメラルとしての性質を反映していると考えられますが、この集中は観察のしやすさを示すものであり、個体数や分布の全体像を表すものではありません。

Erythronium americanumの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
38,681
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

成長と形態

この植物は球根性の地中植物(球根型のジオフィト)として成長します。地上部は春の短い期間だけ姿を現し、その後地上部は枯れて休眠状態に入る生活環を繰り返します。

繁殖と生活史

有性生殖の成功率は低く、受粉した花のうち種子を実らせるのはわずか10パーセントにとどまります。果実は長さ12から15ミリメートルの蒴果で、花茎に支えられて地面から離れた位置につきます。種子にはエライオソームと呼ばれるアリを誘引する構造があり、アリが種子を運ぶことで捕食から守られ、分散が助けられます。この仕組みはミルメコキー(アリ散布)と呼ばれます。

地下部は長さ15から28ミリメートルの卵形の球根(コルム)で、土壌表層から11センチメートルほどの深さにあることが多いものの、30センチメートルに達することもあります。ユリ科の他の植物に比べてかなり深い位置に埋まっているのが特徴です。この球根は養分を蓄えたデンプン質の組織からなり、前年の花茎の名残である紙質の皮に覆われています。

群落は無性生殖によっても広がり、中には300年ほどの年数が経ったと推定されるものもあります。無性生殖は「ドロッパー」と呼ばれる管状の肉質の茎を通じて行われ、親の球根から地中深くへ伸びて新たな球根を形成し、やがて親と子をつなぐ茎は枯れてなくなります。

利用と人との関わり

アメリカ先住民の一部の部族は、この植物を伝統的に薬用として利用してきました。葉には用途があったとされますが、妊娠を望む女性は葉の摂取を避けるべきとされ、チェロキーなど一部の先住民グループは伝統的に避妊薬や堕胎薬として用いていたと伝えられています。

豆知識

  1. 無性生殖に使われる「ドロッパー」という構造は、チューリップが持つ収縮根とは異なる独自の仕組みで、親の球根から地中深くへ伸びて新しい球根を作ります。
  2. この植物は民間伝承や文学作品の中にもしばしば登場し、先住民の文化の中で長く語り継がれてきた存在です。

写真

写真の提供元はby JSReiff via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、by Patrick Jackson via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Richard Littauer via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Alex Novarro via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Nick Kleinschmidt via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Jensyn Scott via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Sheila Collins Bourgoin via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Loïc Mathieu via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Cy Stavros via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.、by Robert Stegmann via iNaturalist, licensed under CC BY 4.0.です。各写真に撮影者のクレジットを記載しています。

生態と分類

生息地

生育型

  • 草本

分類

門
Tracheophyta
綱
Liliopsida
目
Liliales
科
Liliaceae
属
Erythronium
種
Erythronium americanum

出典

  1. GBIF Species names and classification
  2. iNaturalist Photos
  3. Wikidata Common names and conservation status
  4. Wikipedia Summary extract
  5. Plants of the World Online Native range, life form and climate (WCVP)