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ハヤブサ

Falco peregrinus

LC軽度懸念
青灰色の背中と白く縞模様の入った腹部を持ち、黒い頭部と頬の斑紋が目立つハヤブサの成鳥写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

計測値

体重
0.84–0.84 kg
寿命
≤ 25 年
分類
門
Chordata
綱
Aves
目
Falconiformes
科
Falconidae
属
Falco
種
Falco peregrinus

Falco peregrinus ことハヤブサは、急降下(ストゥープ)の際に時速300kmを超える速度に達するとされ、地球上で最も速く飛ぶ動物のひとつとして知られています。

ハヤブサはタカ目ハヤブサ科に属する猛禽類で、北極圏から熱帯・温帯地域まで、南極大陸を除くほぼ全大陸に分布しています。断崖や河川沿い、海岸に加え、近年では大都市の高層建築にも生息し、IUCNのレッドリストでは「低危険種(Least Concern)」に分類されています。

20世紀中盤には農薬DDTの影響で個体数が激減し、一部地域では絶滅の危機に直面しましたが、使用禁止と保護活動によって劇的な回復を遂げた種としても知られています。カラス程度の大きさながら、視力と飛行能力は猛禽類の中でも群を抜いており、その生態は今も研究者や愛鳥家の関心を集めています。

識別と外見

最も分かりやすい特徴は、黒い頭頂部と頬にある「口ひげ」のような黒い斑紋(モスタッシュ)で、白い喉や頬の側面と鮮やかなコントラストをなしています。背中と長く尖った翼は青黒色からスレートグレーで、翼先は黒くなります。

体長は34〜58cm、翼を広げた長さは74〜120cmに達します。多くの猛禽類と同様に性的二型が顕著で、メスはオスより最大で約30%大きくなります。オスの体重は330〜1,000g、対してメスは700〜1,500gに達し、繁殖ペアでメスがオスより約50%重いことも珍しくありません。

下面は白色からさび色を帯び、細く整った暗褐色から黒色の横斑で覆われます。尾も背と同色で細い横斑が入り、先端は黒く、その先に白い帯があります。蝋膜(くちばしの付け根)と足は黄色で、くちばしと爪は黒色です。上くちばしの先端近くには切り込みがあり、これは獲物の頸椎を切断して仕留めるための適応と考えられています。

幼鳥は成鳥よりずっと褐色味が強く、下面は横斑ではなく縦の筋模様になり、蝋膜と眼の周りの輪(オービタルリング)は淡い青みを帯びます。頬の黒い斑紋(モスタッシュ)は、日照量が多い地域ほど大きくなる傾向があることが2021年の写真調査で示され、強い光の反射(グレア)を抑えて視界を確保する役割を持つと考えられています。

分布と生息地

ハヤブサは開けた地形を好み、断崖、平原、草原、低木地、荒地、砂漠、そして海岸沿いの島や河川流域まで、海抜0mから高山の断崖まで広く生息します。密生した森林や高山帯にはあまり姿を見せません。北極圏で繁殖する個体群は長距離を渡りますが、温暖な地域では一年を通して同じ縄張りに留まる個体、特に成熟したオスが多く見られます。

狩りの効率を高めるため、多くの個体は水源から数km以内の断崖や高い建物に営巣します。近年は都市部の高層ビルや橋にも進出しており、これはドバトなどの豊富な餌資源に支えられています。米国アリゾナ州では標高2,700mまで、コロラド州では標高3,200mの営巣地が記録されており、カリフォルニア州では未確認ながら標高4,000mの巣の報告もあります。

GBIFの月別観測データでは、9月(約35万件)から10月(約39万件)にかけて観測数が最も多く、6月から7月(約12万件)にかけて最も少なくなっています。これは渡りの時期に観測機会が増える可能性を示す手がかりですが、あくまで目撃記録の数であり、個体数や生息密度そのものを示すものではありません。

コスタリカの首都サンホセ中心部にある建物では、1993年から1998年にかけて少なくとも5年連続で、10〜11月から翌年4〜5月まで同一の成鳥オスが越冬した記録があり、湿地や急峻な島など水鳥が集まる場所を好んで越冬地とすることを示しています。

Falco peregrinusの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
392,330
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

ハヤブサは昼行性で、繁殖期以外は基本的に単独で行動し、縄張りを強く防衛します。行動圏(ホームレンジ)は178〜1,508平方kmと報告例に幅があり、狩りの範囲は通常巣から15km以内ですが、24km以上、時には100km近く遠征する例も知られています。

巡航飛行速度は時速40〜97kmで、渡りの際は上昇気流(サーマル)の間を滑空することでほとんど羽ばたかずに移動します。渡り individualの記録では1日あたり平均111〜198km移動した例があります。急降下(ストゥープ)時には、鼻孔にある小さな骨性の突起が強い気流を鼻孔から逸らし、飛行中でも呼吸を保てるようにしていると考えられています。また、瞬膜(第三眼瞼)で涙を広げて眼の異物を取り除きながら視界を保ち、1秒間に129回という鳥類でも特に高い「フリッカー融合頻度」により、高速飛行中でも獲物の動きを正確に捉えることができます。

野生下での寿命は最長19年9か月に達しますが、生後1年目の死亡率は59〜70%と非常に高く、成鳥になると年間25〜32%まで下がります。北極圏で繁殖する個体群は長距離の渡りを行いますが、温暖な地域の個体群は定住性が強く、繁殖縄張り付近に留まる傾向があります。

コミュニケーション

ハヤブサは繁殖期を中心に多様な音声を使い分けます。ヒナは「スクリー、スクリー」という鳴き声で餌をねだり、警戒や巣の防衛時には「カー・ア・アック」という個体識別性の高い「キャック」コールを発し、実際に72〜90%の確率で個体を鳴き声から識別できることが分かっています。

「チッター」コールは「チチチチ」と素早く連続する鳴き声で複数の状況で使われ、「イーチップ」コールは「キーウ・チップ」と表現され、特に「チップ」部分に強いエネルギーが集中します。狩りの最中には縄張り性の強い「キー、キー、キー」という鋭い連続音を発します。

姿勢による視覚的コミュニケーションも重要で、羽を逆立てくちばしを開く行動は攻撃性を示し、逆に羽を体に密着させ頭を下げてくちばしをそらす姿勢は服従を意味します。

狩りと食性

ハヤブサは高い見晴らしの利く断崖や高木の上から獲物を探し、発見すると飛び立って追跡します。時には飛翔しながら、あるいはホバリングして獲物を探すこともあります。狩りの成功率は年齢、繁殖状態、天候、獲物の種類などに左右され7.3%から83.2%まで幅がありますが、繁殖期の成鳥は繁殖期以外や幼鳥よりも明らかに成功率が高くなります。獲物は鉤爪で捕らえますが、実際に仕留める際はくちばしで頸椎を切断します。

食性はほぼ鳥類に特化しており、獲物の77〜99%を鳥が占め、生物量で見ると最も重要なのはハト科(Columbidae)です。キジバトやドバトのほか、シギ・チドリ類、水鳥、ライチョウやキジ類の仲間、小型のスズメ目の鳥も捕食します。

鳥以外では、コウモリ(Tadarida属、Eptesicus属、Myotis属、Pipistrellus属など)が最も頻繁に捕らえられる哺乳類で、次いでハタネズミ類、リス類、ネズミ類が続きます。鳥類が少ない地域では、爬虫類や両生類、昆虫を捕らえるために地上で狩りを行うこともあります。

捕らえた獲物は食事用の止まり木に運ばれ、羽をむしって食べられるか、後で使うために蓄えられます。コウモリのような小さな獲物は飛行中にそのまま食べられることもあります。

営巣と繁殖

ハヤブサは一生涯にわたる一雌一雄のペアを形成することが多く、これは個体同士の結びつきというより、同じ営巣地への強い執着によるものと考えられています。オスは巣のある岩棚でディスプレイを行いメスを呼び込み、やがて並んで岩棚に止まるようになり、互いに羽繕いをしたり、くちばしを軽く握り合ったりして絆を深めます。産卵前には、急降下や急旋回、高々度での滑空、回転を組み合わせた見事な空中ディスプレイを行い、オスが空中で捕らえた獲物をメスに受け渡すこともあります。この際メスは体を反転させ、オスの鉤爪から餌を受け取ります。

巣は断崖の岩棚、高木、あるいは高層建築物に作られる「スクレープ」と呼ばれる浅い窪みで、砂や土、砂利をわずかに掘っただけの簡素な構造で、巣材はほとんど加えられません。岩棚は南向きが好まれ、繁殖期は北半球では緯度により3月から5月、南半球では7月から8月にずれ、オーストラリアの亜種 F. p. macropus では11月まで遅れることもあります。

卵は2〜6個(平均3個)を48時間おきに産み、主にメスが29〜35日間抱卵しますが、日中はオスも抱卵を手伝います。孵化したヒナは生後10日ほどまでほぼ絶えず親に温められて育ちます。

孵化から35〜42日でヒナは飛べるようになりますが、その後も約6週間は親から餌を受け取って依存を続けます。飛行技術が上達するにつれ、親は空中で獲物を落とし、幼鳥がそれを追って捕らえる練習をさせます。性成熟に達する年齢はメスで1〜5歳、オスで2〜8歳(平均4歳)です。

個体数と生態的役割

ハヤブサは食物網の上位に位置する捕食者として、ハトやキジバトの仲間、ライチョウ、カモなどの水鳥の個体数を調整する役割を担っています。

個体数の具体例として、イギリスでは2011年時点で1,402繁殖ペアが確認されており、1960年代の激減からの回復を示しています。カナダでは1978年に絶滅危惧種とされていましたが、2017年12月に「絶滅の危険が低い」種として再評価されました。

生態系の中では、鳥痘ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヘルペスウイルス、真菌感染症、細菌感染症のほか、住血吸虫科の吸虫、線虫、条虫、そして鳥マラリアの原因となるPlasmodium relictumなどの内部寄生虫、さらに咀顎目のシラミやノミ、ハエなどの外部寄生虫の宿主としても機能しており、これらの病原体や寄生虫を運ぶ役割も持っています。

保全と脅威

ハヤブサはIUCNレッドリストで「低危険種(Least Concern)」に分類されていますが、これは20世紀中盤の深刻な危機からの回復を経た結果です。

最大の脅威は有機塩素系農薬、特にDDTとディルドリンの生物濃縮でした。これらの化学物質が卵殻に必要なカルシウム量を減少させ、殻が薄くなって割れやすくなったため、繁殖に失敗する個体が急増しました。この結果、米国東部では繁殖ペアが全滅し、ミシガン州では現在も州レベルで絶滅危惧種に指定されています。中南米など一部地域では今もこれらの農薬規制が不十分で、越冬する個体群への蓄積が続いていると指摘されています。

保護の枠組みとしては、CITES附属書I、米国の移動性鳥類条約法による保護が適用されており、回復の背景には「ハッキング」と呼ばれる技術を用いた飼育下繁殖と再導入計画、そして1972年前後の農薬規制があります。米国では1999年に連邦絶滅危惧種リストから除外され、イギリスではRSPB(英国王立鳥類保護協会)主導の保護活動により2011年時点で1,402繁殖ペアまで回復し、カナダでも2017年に絶滅危惧の指定が解除されました。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

軽度懸念

文化的意義

ミシシッピ川流域の先住民文化、パスカグーラ、カホキア、チョクトー、チカソーなどの伝統において、ハヤブサは異なる世界をつなぐ「使者」として敬われ、天の力と猛々しさを象徴する存在とされてきました。

狩猟の相棒としても長い歴史を持ち、中央アジアの遊牧民の時代から3,000年以上にわたり鷹狩りに用いられてきました。運動能力と狩りへの意欲に加え、扱いやすい性質を持つことから、鷹狩り用の猛禽として特に高く評価されています。現代では、DDTによる激減からの回復を象徴する種として、保護活動や環境意識の象徴としても位置づけられています。

豆知識

  1. ハヤブサの視覚系は1秒間に129回もの「フリッカー融合頻度」を持ち、鳥類の中でも特に高速な動きを正確に捉えることができます。
  2. 2005年にケン・フランクリンが計測した個体は急降下時に時速389kmに達したと報告されていますが、レーダーで確実に確認された最高速度は時速184km程度です。
  3. 頬にある黒い斑紋(モスタッシュ)は日照量の多い地域ほど大きくなる傾向があり、強い光の反射を抑えて視界を確保する役割を持つと考えられています。
  4. 第二次世界大戦中には、伝令用のハトを捕らえるためにハヤブサが利用されたことがあります。
  5. 急降下中は瞬膜(第三眼瞼)で涙を広げて眼の異物を取り除きながら視界を維持しています。
  6. 歴史的にはオーストラリアで「黒頬ハヤブサ」、北米で「ダックホーク」とも呼ばれていました。
  7. 米国オレゴン州ポートランド市は州土のわずか0.1%程度の面積しかないにもかかわらず、州内のハヤブサの巣の10%を抱えています。

生態

生息地

  • 海岸
  • 山地
  • 都市
  • ツンドラ

食性

  • 肉食

行動

  • 捕食者
  • 単独性
  • 縄張り性
  • 昼行性

写真

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青灰色の背中と白く縞模様の入った腹部を持ち、黒い頭部と頬の斑紋が目立つハヤブサの成鳥写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of LifeAnimal Diversity WebAnAge