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ニシツノメドリ

Fratercula arctica

VU危急種
岩場に立つニシツノメドリの成鳥。白い胸と黒い背中、オレンジ色と灰色に彩られた大きな三角形の嘴、鮮やかなオレンジ色の脚が特徴。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

計測値

体重
0.491–0.491 kg
寿命
≤ 45 年
分類
門
Chordata
綱
Aves
目
Charadriiformes
科
Alcidae
属
Fratercula
種
Fratercula arctica

体重わずか490グラムほどの小さな海鳥でありながら、寿命は45年にも達することがある――これがニシツノメドリという鳥の意外な一面です。一度の繁殖で卵をひとつしか産まないという慎重な戦略は、この長い寿命によって初めて成り立っています。

ニシツノメドリ(Fratercula arctica)は、チャドリイ目ウミスズメ科に属する海鳥で、大西洋に自然分布する唯一のツノメドリ類です。ロシア、アイスランド、アイルランド、イギリス、ノルウェー、グリーンランド、ニューファンドランド・ラブラドール、ノバスコシア、フェロー諸島で繁殖し、南はアメリカのメイン州やフランスのブルターニュ地方にまで及びます。個体数は多く分布域も広い一方で、一部の地域で急激な減少が確認されたため、IUCNにより「危急種(Vulnerable)」に指定されています。

陸上ではウミスズメ科特有の直立姿勢をとり、海上では水面を泳ぎながら、翼を使って水中に潜り、小魚や甲殻類、動物プランクトンを捕らえます。その色鮮やかな嘴と海と陸を巧みに使い分ける暮らしぶりは、多くの人を魅了してきました。

識別と外見

最も分かりやすい特徴は、側面から見ると幅広い三角形、上から見ると細く見える独特な嘴です。先端側半分は橙赤色、頭側半分は灰色で、その間を黄色い山型の筋が区切り、付け根には黄色い肉質の帯と、上下の嘴が接する部分にしわのある黄色い突起(ロゼット)が見られます。

体長は嘴の先端から尾の先まで2830センチメートル、翼を広げると4763センチメートルに達し、陸上に立つと高さはおよそ20センチメートルになります。体重はおよそ490グラムです。雄は雌よりわずかに大きい傾向がありますが、羽色はほぼ同じです。額から頭頂、後頸、背、翼、尾は光沢のある黒色で、太い黒の輪が首から喉にかけて巻きつくように入ります。頭の両側には菱形に近い淡灰色の頬パッチがあり、後頭部でわずかに接する形になっています。目の上には青灰色の角質の隆起、下には四角い斑があり、目が三角形に見える理由になっています。虹彩は茶色または濃い青色で、周りを赤い輪が縁取ります。胸から腹、尾羽の下面は白く、脚と大きな水かきのある足は鮮やかな橙色で、爪は黒く鋭いのが特徴です。

繁殖期が終わる頃には、黒い羽の光沢が失われ、やや褐色を帯びることがあります。繁殖期特有の明るい嘴の板や目の周りの装飾は、繁殖が終わると部分的な換羽で脱落し、嘴は幅が狭く見え、先端の明るさも薄れ、付け根はより暗い灰色になります。この冬羽の姿は、繁殖地を離れて海上で過ごす間に見られるため、人の目にはほとんど触れません。

幼鳥は成鳥に似ていますが、全体的に色がくすみ、顔はより暗い灰色で、嘴の先端と脚は黄褐色を帯びています。巣立ち後は海へ出て何年も陸に戻らず、年を経るごとに嘴が太くなり、頬パッチが淡くなり、脚と嘴の色が明るくなっていきます。

分布と生息地

ニシツノメドリは北大西洋の冷たい海域を中心に暮らし、繁殖地は北西ヨーロッパの沿岸、北極圏周辺、北アメリカ東部に広がっています。世界の個体数の90%以上がヨーロッパに生息し、その数は470万578万組(成鳥955万1160万羽)にのぼり、アイスランドだけで世界のニシツノメドリの60%を占めています。特にアイスランドのウェストマン諸島でよく見られます。西大西洋最大のコロニーはニューファンドランド・ラブラドール州セント・ジョンズ南方のウィットレス・ベイ生態保護区にあり、26万組以上と推定されています。ノルウェーの北・西海岸、フェロー諸島、シェトランド諸島とオークニー諸島、グリーンランド西岸、ニューファンドランド沿岸なども主要な繁殖地です。

繁殖地としては、沖合の島や人が近づきにくい断崖の草地斜面が選ばれ、そこに巣穴を掘ります。捕食者を避けるため、島は本土よりも好まれる傾向があります。標高0218メートルの範囲に生息し、巣穴は平均70110センチメートルの長さで、羽毛や草を敷いて仕上げられます。

非繁殖期は北大西洋の広大な海域、北海を含む一帯、時には北極圏内までを自由に移動して過ごします。夏の南限はフランス北部からメイン州、冬にはさらに南下して地中海やノースカロライナ沿岸まで達することもあります。この海域は1500万~3000万平方キロメートルにも及ぶため、一羽あたり1平方キロメートル以上の空間があり、海上ではほとんど目にすることができません。追跡調査では、1羽が8か月間で7,700キロメートルを移動し、北のラブラドール海まで北上した後、大西洋中央部を経て陸に戻った例が記録されています。

月別の観測記録では、1月の4,717件から6月の82,082件、7月の78,726件へと大きく増加し、その後は年末にかけて再び減少します。これは繁殖のために沿岸に集まる時期の存在を示すものであり、この数値自体は個体数や生息数を示すものではなく、あくまで観測記録の分布にすぎません。

Fratercula arcticaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
82,082
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

繁殖期には大きなコロニーを形成する社会的な鳥ですが、明確な社会階層は持たず、雄はそれぞれの巣穴の縄張りを守ります。縄張り防衛には「ペリカン歩き」と呼ばれる誇張した動きが使われ、頭を引き込み体を直立させて歩くことで、他の個体に退去を促します。逆に目立たないように振る舞うときは、頭を沈め周囲を気にしながら歩きます。

非繁殖期は大西洋を渡って移動し、日中に飛び、夜は海面で休む昼行性の生活を送ります。海上ではコルクのように波間を漂いながら、脚の力強い蹴りで泳ぎ、休んでいるときでも風に向かって体を保ちます。多くの時間を羽の手入れと尾脂腺からの油の分布に費やし、下面の綿羽は乾いた状態を保って保温します。上面が黒く下面が白い体色は、上空からは暗い海に紛れ、下からは明るい空に紛れる保護色として機能します。

飛び立つときは水面をパタパタと走りながら翼を激しく振って助走し、体重に対して翼面積が小さいため、飛行中は1秒に数回という速さで羽を打ち続けます。飛行速度は時速80キロメートルに達しますが、着水はぎこちなく、波頭に突っ込むか腹打ちのように降りることが多いです。13月ごろ、海上にいる間に初列風切をすべて一度に落とす換羽を行い、その12か月間は飛べなくなります。

春になると成鳥は多くの場合、自分が生まれたコロニーに戻り、密集した草地の巣穴を巣立ちの容易な場所として奪い合います。番いは一生同じ相手と添うとされますが、これは相手への忠実さというより、同じ巣穴に戻る習性による結果です。餌となる魚を運ぶ際には最長66キロメートルの遠征を行うこともありますが、雛を育てている間はより短い9~17キロメートル圏内の往復に切り替え、巣穴の面積は平均1.75平方メートルほどの狩り縄張りを守ります。

コミュニケーション

繁殖地では、巣穴の中で「チェーンソーを回すような」低いうなり声を出しますが、地上ではほとんど鳴きません。海上では基本的に静かで、飛行中にときおり柔らかい「プルプル」という音を立てる程度です。

視覚的な信号も重要で、優位性を示す際には胸の羽を膨らませて尾を上げ、直立した姿勢でゆっくりと大げさに歩き、頭を上下に振ったり口を大きく開けたりします。求愛や絆の確認には「ビリング」という行動が使われ、雌雄が嘴を左右に振りながら何度も触れ合わせます。

色彩も一種の視覚信号として働き、特に雄の鮮やかな嘴や顔の装飾は雌に見分けられ、より色鮮やかな雄がより質の高い相手を引き寄せると考えられています。

狩りと食性

魚を狩る際は、まず高い位置まで飛び上がってから海中に急降下し、翼を使って泳ぐように水中を進みながら小魚を追います。一度の潜水で嘴に約12匹もの小魚をくわえて水面に戻ることができ、雛を育てる親はさらに多くの餌を集めます。

主な餌はイワシ科やニシン科などの小魚で、体の大きなカペリン(Mallotus villosus)、サンドランス(Ammodytes)、ニシン(Clupea harengus)、サンドイール(Hyperoplus)などが記録されています。雛には時に甲殻類も与えられます。1日に約40回もの給餌が行われるとされ、繁殖期の食料の豊富さが繁殖成功を大きく左右します。

長距離の移動中には海水を飲む能力があり、これが大西洋を渡る長い旅を支えています。

営巣と繁殖

求愛は「ビリング」という行動から始まり、雌雄が嘴を左右に振りながら何度も打ち合わせます。この行動は番いの絆を確認するもので、繁殖期を通じて繰り返されます。ニシツノメドリは生涯にわたり同じ相手と番うことが多いとされますが、これは同じ巣穴に戻る習性によるもので、性成熟には雌雄ともに4~6年(平均5年)を要します。

産卵は南方のコロニーでは4月頃、グリーンランドのように北方では6月にずれ込むこともあります。番いは協力して巣穴を掘り、片方が中を掘り進めながら、もう片方が外で土や砂利を蹴り出して手伝います。卵は体に対して大きく、平均で長さ61ミリメートル、幅42ミリメートル、重さ約62グラムの白い一卵のみを産みます。卵の白い殻はやがて泥で覆われていきます。

抱卵は雌雄で分担し、両親とも腹部に羽毛のない皮膚(抱卵斑)を持ち、そこから熱を伝えます。抱卵期間は39~45日で、抱卵中の親は暗い巣穴の中でほとんどの時間を眠って過ごします。抱卵と給餌には雌がより多くの時間を割き、雄は主に巣穴の警護にあたります。

孵化した雛は黒いふわふわの綿羽に覆われ、目は開いており、生まれた直後から立つことができます。最初は嘴から嘴へ魚を与えられますが、やがて親が魚を巣の床に落とすようになり、雛はそれを丸ごと飲み込みます。孵化時の体重は約3945グラムで、そこから1日あたり約10グラムずつ成長します。巣立ちは3850日で、その後まもなく独立しますが、若鳥はその後2年以上、多くは3~6年をかけて海で過ごしたのちに、繁殖のため出生地のコロニーへ戻ってきます。

個体数と生態的役割

2018年時点で世界の個体数は成鳥1200万1400万羽と推定されており、そのうちアイスランドの繁殖地だけで500万組が繁殖する、世界最大の個体群を抱えています。西大西洋最大のコロニーであるウィットレス・ベイ生態保護区でも26万組以上が記録されています。ヨーロッパの個体群については、2000年から2065年までの間に5079%減少すると予測されるほどの急激な減少傾向が確認されています。

生態系の中では、モグラや貝類、甲殻類などの海洋無脊椎動物を捕食する一方、アザラシや大型の魚、地上性の哺乳類、そしてオオカモメやトウゾクカモメといった鳥類から捕食される立場にもあります。餌を運んで巣に戻る途中、トウゾクカモメ科の小型の海鳥に追いかけられ、口から落とした魚を横取りされることもありますが、これはニシツノメドリにとって害にはならない一時的な妨害にすぎません。羽ダニ(Dermanyssus gallinae)、ノミ、ダニ(Ixodes uriae)といった寄生者も、雛と成鳥の双方に多く見られます。

保全と脅威

IUCNレッドリストでは「危急種(Vulnerable)」に指定されており、2015年に「低危険種」から引き上げられました。これはヨーロッパの繁殖地で急速かつ継続的な個体数減少が確認されたことによるものです。

最大の脅威はプラスチックの誤飲による死亡と、気候変動による餌の減少です。海水温の上昇に伴い魚が島から離れた場所へ移動する一方、ニシツノメドリは体力の限界からその移動に追随できません。メイン州では、主食のニシンが減った結果、成鳥が痩せて死亡したり、雛が飲み込めない大きなバターフィッシュを与えられて餓死する例も報告されています。加えて、ネズミ、猫、キツネなど外来の捕食者が繁殖地の島に侵入した影響も大きく、イギリスのランディ島では1939年に3,500組いた個体群が2000年にはわずか10組まで激減しました。ネズミの駆除後、2005年には約30年ぶりに雛が確認されるなど、回復の兆しも見られています。かつてアイスランドのウェストマン諸島では1900年頃に過剰な狩猟でほぼ絶滅寸前となり、30年間の禁猟措置が取られたのち、現在は持続可能な水準での狩猟が続けられています。他にも、漁網への絡まりによる溺死、海洋汚染による水銀やヒ素の蓄積などが影響しているとみられます。

アメリカでは移住鳥法(Migratory Bird Act)により保護されていますが、CITESや米国連邦のリストには特別な指定はありません。スコットランドの北ベリックにあるスコティッシュ・シービード・センターの「SOSパフィン」プロジェクトでは、外来植物ツリーマロウの繁茂で巣穴を失ったクレイグリース島の個体群を守るため、700人以上のボランティアが植物の除去に取り組み、繁殖数の回復につながっています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

危急種

文化的意義

かつて沿岸に住む人々にとって、ニシツノメドリは食料源のひとつでした。巣から巣立ち前の若い鳥を取り出して食べる習慣があったことが記録に残っています。

現在では、その色鮮やかな姿がエコツーリズムの対象として経済的な価値を持つようになりました。アメリカのメイン州では夏の終わりにこの鳥を見るために多くの人が訪れ、2012年時点でのエコツーリズムによる収益は40億ドルにのぼると推定されています。アイスランドやヘブリディーズ諸島、ニューファンドランドでも同様の観察ツアーが行われています。

また、高い栄養段階に位置し魚を主食とすることから、海洋汚染の指標種としても注目され、重金属の蓄積状況を調べる研究や、魚類の分布変化と気候変動の関係を調べる研究の対象にもなっています。

豆知識

  1. 属名のFraterculaは「小さな修道士」を意味し、黒白の羽色が修道士のローブに見えることから、初期のヨーロッパの博物学者によって名付けられたと考えられています。
  2. ニシツノメドリの仲間であるツノメドリ類は、映画『スター・ウォーズ』に登場する架空の生物「ポーグ」の発想源になったとされています。

生態

生息地

  • 海洋性
  • 海岸
  • 草原

行動

  • 捕食者
  • 縄張り性
  • 社会性
  • 渡り性

食性

  • 魚食性

写真

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岩場に立つニシツノメドリの成鳥。白い胸と黒い背中、オレンジ色と灰色に彩られた大きな三角形の嘴、鮮やかなオレンジ色の脚が特徴。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of LifeAnimal Diversity WebAnAge