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オオヒキガエル

Rhinella marina

LC軽度懸念
背中と耳の後ろに大きな耳下腺があり、乾いた瘤状の皮膚で覆われた灰褐色から黄褐色の大型のヒキガエルの成体。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

計測値

体重
0.105–0.105 kg
寿命
≤ 24.8 年
分類
門
Chordata
綱
Amphibia
目
Anura
科
Bufonidae
属
Rhinella
種
Rhinella marina

オオヒキガエルは、体重100グラムを超える体に強力な毒腺を備え、世界で最も広く導入された外来種の上位100種に数えられる両生類です。

本種はヒキガエル科(Bufonidae)に属する大型の陸生ガエルで、原産地は南アメリカとメソアメリカ大陸部です。サトウキビ畑の害虫駆除を目的として人為的にオセアニアやカリブ海の島々、オーストラリア北部などへ導入され、現在では広範囲に定着しています。原産地では個体数が安定しており、IUCNのレッドリストでは低危険種(Least Concern)に指定されています。

毒性を持つがゆえに天敵の少ない環境で急速に増え、導入先の生態系に大きな影響を及ぼしてきたことから、外来種問題を考えるうえで欠かせない研究対象となっています。

識別と外見

最大の特徴は、両目の後ろにある大きな耳下腺と、鼻先まで伸びる眼上の隆起、そして乾いた警告状の皮膚です。この耳下腺こそが強力な毒液を分泌する器官であり、他の多くのヒキガエル類と見分ける手がかりになります。

体長はメスの方がオスより明らかに大きく、典型的には1015センチメートル、最大で24センチメートルに達した記録があります。体重はおよそ105グラムです。野生下での寿命は1015年程度ですが、飼育下ではさらに長く生きることが知られています。

体色は灰色、黄色みを帯びた色、赤褐色、オリーブ褐色など個体差が大きく、模様の出方も様々です。腹面はクリーム色で、黒や褐色の斑紋が入ることがあります。瞳孔は横長で、虹彩は金色をしています。足の指の基部には肉質の水かきがありますが、指には水かきがありません。

幼体は成体と異なり、滑らかで黒っぽい皮膚を持ち、赤みを帯びた個体も見られます。幼体は大きな耳下腺を欠くため、成体に比べて毒性が低いのが特徴です。オタマジャクシは10~25ミリメートルほどの真っ黒な体をしており、群れを作って水底で暮らします。

分布と生息地

原産地はアメリカ大陸で、分布域は北はアメリカ合衆国南テキサス州のリオグランデ峡谷から、南はアマゾン中央部やペルー南東部、さらにトリニダード・トバゴなどベネズエラ沿岸の島々にまで広がっています。この地域には熱帯環境と半乾燥環境の両方が含まれ、森林と半永久的な水場が近接する場所を好みます。原産地における生息密度は導入先に比べてはるかに低く、南アメリカでは水辺100メートルあたり成体20匹程度と記録されており、これはオーストラリアの密度の1~2%に過ぎません。

1840年代以前には、フレンチギアナやガイアナからマルティニークやバルバドスへ導入されていました。1844年にはネズミ駆除を目的としてジャマイカへ導入されましたが失敗し、20世紀初頭にはサトウキビを食い荒らす害虫対策としてプエルトリコへ導入されました。プエルトリコでの成功が1930年代の科学者たちを後押しし、太平洋地域の多くの国々が次々と本種を導入することになりました。

その結果、オーストラリア、フロリダ、パプアニューギニア、フィリピン、日本の石垣島・小笠原諸島・大東諸島、台湾の南投県草屯、カリブ海の島々の大半、フィジーなど多くの太平洋の島々、ハワイなどに導入個体群が存在します。オーストラリアでは1935年8月、ハワイから運ばれた102匹がクイーンズランド州のサトウキビ畑に放たれ、1937年3月までに6万2千匹の幼体が野生に放たれて定着しました。しかし本来の駆除対象だったカブトムシは茎の上部に生息し、木登りが苦手な本種では捕食できず、駆除は成功しませんでした。

GBIFに記録された月別の観測数を見ると、8月に最も多くの観測(10,558件)が集中し、5月や9月にも比較的多い傾向が見られます。これはあくまで発見された記録の数であり、個体数そのものや生息の全体像を示すものではありませんが、活動が活発になる季節的な傾向を示している可能性があります。

Rhinella marinaの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
10,558
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

行動と暮らし

オオヒキガエルは夜行性で、直立した姿勢のまま短く速いホッピングで移動します。単独で生活し、寒冷期や乾季には地表近くに浅い穴を掘って身を潜め、活動を停止する休眠状態に入ります。

捕食者に襲われると、耳下腺やその他の皮膚腺から白く粘性のある毒液(ブフォトキシン)を分泌して身を守ります。この毒は強心配糖体を主成分とし、捕食者が口に含んだり粘膜に触れたりすると、よだれの増加、痙攣、嘔吐、浅い呼吸、後肢の麻痺などを引き起こし、犬を含む一部の動物を死に至らせることもあります。

生息環境としては、人が改変した庭や排水溝などの環境を明確に好む傾向があり、原産地では亜熱帯林にも生息しますが、密な下層植生は分散を妨げる要因になっています。臨界温度はおおよそ4042℃が上限、1015℃が下限とされていますが、低温に遭遇すると数時間のうちに耐性を調整できる生理的な柔軟性を持っています。

変態直後の幼体が成体になれる割合はわずか0.5%程度とされ、これは変態後に卵やオタマジャクシの毒性を失う一方で、毒を作る耳下腺がまだ十分に発達していない期間があるためです。加えてオタマジャクシ同士の共食いも大きな要因となっており、オーストラリアの過密な外来個体群では、共食いに関心を示す確率が原産地の個体群より30倍、実際に共食いする確率が2.6倍にまで進化的に高まったことが報告されています。また、より発達したオタマジャクシが周囲にいる場合、オタマジャクシの期間そのものを短縮する適応も見られます。

コミュニケーション

オオヒキガエルのコミュニケーションは主に音声、接触、化学的な信号を通じて行われます。繁殖期にはオスが水辺に集まって鳴き声によるコーラスを形成し、メスを呼び寄せます。

皮膚感覚による接触や化学物質の感知も、仲間や周囲の環境を認識するうえで重要な役割を果たしていると考えられています。

狩りと食性

オオヒキガエルは主に夜間、成熟した森林や道路沿いを歩き回りながら餌を探す徘徊型の捕食者です。待ち伏せに頼るのではなく、活動的に地表を移動しながら手当たり次第に獲物を捕らえる傾向があります。

フロリダ南部の個体ではアリ、甲虫、ハサミムシが主な餌となっていますが、他の地域ではトンボ、バッタ、カメムシの仲間、甲殻類、陸生の貝類、さらには植物質まで胃の中から見つかっています。

食性は基本的に肉食性・昆虫食性で、昆虫以外の陸生節足動物も好んで捕食する幅広い食性を持っています。人間の居住地周辺では犬や猫の餌が胃の中から見つかった例もあり、手に入る食物を極めて機会主義的に利用する性質がうかがえます。

繁殖と生活史

繁殖行動は、オスが一時的または恒常的に存在する流れの緩やかな、あるいは静止した水域に集まり、鳴き声でメスを呼び寄せることから始まります。この繁殖システムは乱婚型(ポリギナンドリー)で、1匹のメスの卵が複数のオスによって受精されることもあれば、特に有力なオスが一繁殖期に複数のメスの卵を受精させることもあります。

熱帯地域の原産地ではほぼ一年を通して繁殖が可能ですが、個々のメスが産卵するのは年に一度です。メスは2年目以降に性成熟に達しますが、成熟時の体の大きさは地域によって異なり、ニューギニアでは吻端から尻までの長さが7080ミリメートル、パナマでは90100ミリメートルに達した頃に性成熟します。

卵は岩や漂着物、水中の植物の上にゼリー状の紐として産み付けられ、一度に8,00025,000個、多いときには3万個を超える卵が産まれます。卵の紐は長さ20メートルにも及ぶことがあり、直径1.72.0ミリメートルの黒い卵が薄い膜に包まれています。

卵は2~7日ほどで孵化し、受精後の親による世話は一切行われません。産卵という一度の投資だけで子の運命は水に委ねられ、その後の生存はオタマジャクシ自身の生存力に依存します。

個体数と生態的役割

原産地の南アメリカでは、キタヒロクチワニ(Caiman latirostris)や帯状のイタチメガネ蛇(Leptodeira annulata)、ウナギ科の魚、複数種のキルフィッシュ、さらにはサシハリアリ(Paraponera clavata)といった捕食者がオオヒキガエルやそのオタマジャクシを捕食しています。

導入先ではロックフラッグテール(Kuhlia rupestris)、一部のナマズ類、トキ亜科の鳥類、トビの一種(Haliastur sphenurus)、ラカリ(Hydromys chrysogaster)、クマネズミ、ミズオオトカゲなどが捕食者として知られています。フクロツグミモドキ類もこのヒキガエルを捕食し、オーストラリアの一部のカラス類はくちばしでヒキガエルをひっくり返して食べる方法を習得しています。

オポッサム属(Didelphis)は毒への耐性があるため問題なく捕食でき、メアリ(大型のアリの一種)も毒の影響を受けずに攻撃できます。オオヒキガエルは攻撃を受けると立ち止まって毒で撃退しようとする防御行動を取るため、この習性がアリによる集団的な捕食を許してしまいます。ノコハシガメの一種も安全に捕食することが確認されており、ラカリは2年ほどで毒のある皮膚や胆嚻を取り除き、心臓や筋肉だけを安全に食べる技術を身につけたことが知られています。

保全と脅威

IUCNレッドリストでは低危険種(Least Concern)に指定されており、原産地である南アメリカでは個体数が安定しているため、特別な保全対策は必要とされていません。

一方で、本種は世界で最も広く導入された外来種の上位100種の一つとされ、導入先では害獣として扱われ、駆除の対象となっています。アメリカ合衆国の連邦法やワシントン条約(CITES)においても、特別な保護指定は設けられていません。

つまりオオヒキガエルにとっての課題は絶滅の回避ではなく、逆に導入先の生態系への影響をどう抑えるかという、外来種管理の問題として扱われています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

軽度懸念

文化的意義

中央アメリカのオルメカ文明では、水中と陸上という2つの世界を生きるオオヒキガエルが、二重性という概念を象徴する神聖な存在だったとする説があります。その毒には、幻覚作用をもたらす物質として用いられていた可能性も指摘されています。

南アメリカの原産地では、エンベラ・ウォウナン族が矢毒としてこのヒキガエルの毒を採取し利用してきた伝統があります。ペルーの一部地域では食用として狩猟され、皮と耳下腺を丁寧に取り除いた肉はオメガ3脂肪酸を含む健康的な食材とされています。近年では毒に含まれるブフォテニンが日本で催淫剤や育毛剤として用いられたり、中国で心臓手術中に心拍数を下げる目的で利用されたりしてきました。前立腺がん治療への応用可能性についても研究が進められています。

20世紀半ばには、女性の尿をオスのヒキガエルに注射し、その尿に精子が現れるかどうかで妊娠を判定する検査法に約20年間利用されていました。現在ではペットや実験動物として飼育されるほか、死んだ個体の皮は革製品や観光客向けの剥製土産として加工され、死骸を肥料に加工する試みも行われています。

豆知識

  1. 飼育下では35年生きた記録があり、野生下での寿命(10~15年)を大きく上回ります。
  2. 「marina(海の)」という名を持ちながら海には生息しませんが、幼生は実験室で海水の約15%相当の塩分に耐え、パナマのコイバ島では塩分27.5‰の水域でも生存する個体が確認されています。
  3. 1940年代から1960年代にかけて、ヒトの尿を注射して精子の出現を確認する妊娠検査法にオオヒキガエルが利用されていました。
  4. ラカリ(水ネズミ)は毒のある皮膚と胆嚻を外科手術のような精密さで取り除き、心臓と筋肉だけを安全に食べる技術を身につけています。
  5. 死んだ個体の皮は革製品や観光客向けの剥製として加工されることがあります。
  6. オルメカ文明では、水と陸の両方に生きるこのヒキガエルが「二重性」を象徴する神聖な存在だったとする説があります。

生態

生息地

  • 湿地
  • 森林
  • 林地
  • 草原

行動

  • 夜行性
  • 捕食者
  • 単独性
  • 冬眠

食性

  • 食虫性

写真

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背中と耳の後ろに大きな耳下腺があり、乾いた瘤状の皮膚で覆われた灰褐色から黄褐色の大型のヒキガエルの成体。写真: via iNaturalist, licensed under CC0 1.0.、CC0

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaAnimal Diversity WebAnAge