ニワトコの花や実は、ヨーロッパで飲み物やジャムの材料として親しまれてきました。
ニワトコ(Sambucus nigra)は、レンプクソウ科の落葉低木または小高木です。ヨーロッパ、中東、アゾレス諸島に自生し、庭木や生垣としても広く植えられています。湿った土にも乾いた土にも育ち、日当たりのよい場所を好みます。
IUCNによる保全評価は「軽度懸念」です。身近な植物でありながら、花、実、樹皮など部位ごとに利用の仕方が大きく異なる点が、この種の魅力です。
識別と外見
ニワトコは、対生して付く奇数羽状複葉で見分けられます。小葉は5〜7枚(まれに9枚)で、縁にはのこぎりの歯のような切れ込みがあります。
樹高は通常6メートルほどで、まれに10メートルに達します。若い樹皮は明るい灰色で、成長すると縦に深い溝の入った粗い灰色の外皮になります。若い枝は中が空洞です。
葉は長さ10〜30センチメートルで、小葉は長さ5〜12センチメートル、幅3〜5センチメートルです。
花は両性花で、雄しべは5本あります。象牙色の小さな花が、直径10〜25センチメートルの平たい散房花序に集まって咲きます。開花は晩春から真夏にかけてです。
実は光沢のある濃い紫色から黒色の液果で、直径は3〜5ミリメートルです。晩秋に、垂れ下がる房になって実ります。
分布と生息地
ニワトコは、東はトルコまでのヨーロッパに自生しています。イギリス諸島では在来種で、各地に普通に見られます。ヨーロッパ以外でも、世界の多くの大陸に持ち込まれて広がっています。
森林、草地、生垣、低木林、川岸、道端、線路沿い、空き地など、さまざまな環境に生育します。特に、森林の縁や林内の隙間、放棄された畑、市街地のような、開けた場所や人の手が入った場所を好みます。土壌は栄養分が多いところに多く見られます。
乾燥に弱く、塩分を含んだ土壌は避けます。水はけのよい場所から湿った場所まで適応しますが、乾いた土地では生育が悪くなります。
確認の記録は、5月から6月にかけて多くなる傾向があります。

生態と関わり
ニワトコの花には強い香りがあり、小さなアザミウマ類が多く集まります。これらの昆虫は、花序の間で花粉を運ぶ役割を果たすと考えられています。花はハエ類によっても受粉されます。
実は、ムクドリ類などの多くの果実食の鳥にとって重要な食べ物です。特にアメリカ西部では、ハトの仲間が実をついばみ、短時間で一本の株の実を食べ尽くすこともあります。鹿、ヒツジ、小鳥などの家畜や野生動物にとっても、ほどよい餌になります。
この植物は、キノコの一種であるニワトコ白ぐされ病やキクラゲ類の菌の影響を受けます。花と完熟した実を除き、種子を含む植物の大部分は、哺乳類に対して有毒です。
利用と人との関わり
ニワトコは、庭木や生垣、野鳥の庭の植栽として広く利用されています。日なたから半日陰で育ち、日陰が深い場所や乾燥した場所では生育が悪くなります。
花は、シロップやコーディアルにして水で薄めて飲むほか、衣をつけて揚げた天ぷらのような菓子にもされます。北ヨーロッパやバルカン半島では、花を浸出させた飲み物が伝統的に親しまれてきました。実は、ジャムやゼリー、ソースの材料になります。ドイツやスカンジナビアでは、実で作るスープが伝統料理として知られています。ワインやリキュールの原料にもなります。
ヨーロッパやアジアでは、民間療法にも用いられてきました。花や実のエキスは、かぜやインフルエンザの症状を和らげる目的で販売されていますが、効果については研究が限られています。
豆知識
- 北ヨーロッパの伝承では、ニワトコは妖精の木とされ、魔除けとしても信じられてきました。
- 古くからケルトの伝承や神話に登場し、その枝は魔法の杖を作るのに使われたと伝えられています。
- 「エルダーの杖」は、ハリー・ポッターシリーズの小説に登場する「死の秘宝」の一つで、ニワトコの名前が由来になっています。
写真
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生態と分類
分類
- 門
- Tracheophyta
- 綱
- Magnoliopsida
- 目
- Dipsacales
- 科
- Viburnaceae
- 属
- Sambucus
- 種
- Sambucus nigra
出典
- GBIF Species names and classification
- iNaturalist Photos
- Wikidata Common names and conservation status
- Wikipedia Summary extract



