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トウガラシ

Capsicum annuum

LC軽度懸念
赤や緑の光沢のある実をつけた、多数の枝分かれした低木状のトウガラシの株写真: The Great Walter、CC BY

ひと目でわかる

主な特徴
森林荒れ地低木
分類
門
Tracheophyta
綱
Magnoliopsida
目
Solanales
科
Solanaceae
属
Capsicum
種
Capsicum annuum

Capsicum annuum、和名トウガラシは、約6000年前にメキシコ地域で栽培化が始まったと考えられており、世界で最も古い栽培植物のひとつです。この長い栽培史の中で、辛味の強い品種から辛味のない品種まで、実の色や形が驚くほど多様化してきました。

分類上はナス目ナス科に属する被子植物で、南アメリカ北部から北アメリカ南西部にかけての地域を原産とします。保全状況は「低危険種(Least Concern)」とされています。

Capsicum属には30種以上が知られていますが、そのなかでCapsicum annuumは最も広く栽培され、人類の食文化に深く根づいてきた種として特に注目に値します。

識別と外見

最も分かりやすい特徴は、品種によって実の形・色・辛味が極端に異なる点です。同じ種でありながら、小さな球状の実から大きなベル型の実まで、赤・緑・黄・黒など様々な色の果実が生まれます。

株は多数の枝を持つ低木状で、茎は細く、他物に絡みつくように伸びる性質があります。栽培品種によっては高さ2メートルほどまで成長するものもあります。葉は光沢のある卵形で長さ7.5センチほどになり、緑色が基本ですが、品種によっては株が成熟するにつれて濃い紫色や黒色に変化することもあります。一年草または二年草として、発芽・生育・開花・結実という4つの生育段階を経ます。

花は星形またはベル形で、紫・白・緑など様々な色をとります。花に続いて実る果実も、ベリー状のものからピーマンのようなベル型のものまで形が幅広く、色も赤・黄・緑・黒と変化に富んでいます。

品種間の違いも顕著です。例えばチルテピンペッパー(Capsicum annuum var. glabriusculum)は白い花を咲かせ、熟すと赤くなる小さな果実をつけ、辛味成分カプサイシンの含有量が非常に高く、スコビール値で10万から20万にも達し、メキシコで栽培される中でも最も辛い果実のひとつとされています。対照的にピーマン(ベルペッパー)はカプサイシンをほとんど含まずスコビール値は0で、四角く肉厚な大きな果実をつけ、重さ500グラムにまで達することもあり、黄・オレンジ・赤・緑など様々な色があります。

分布と生息地

原産地は南アメリカ北部と北アメリカ南西部で、もともとは乾燥林や湿潤林に自生していたと考えられています。

現在では原産地を大きく超えて世界中で栽培されており、例えば中国のように野生化・帰化している地域も報告されています。栽培の広がりとともに、本種は熱帯から温帯まで幅広い気候条件に適応してきました。

GBIFの月別観察記録を見ると、8月から10月にかけて観察数が2400件台から3931件まで増加し、1月から3月にかけては1000件前後にとどまるという傾向が見られます。ただしこれはあくまで観察記録の件数であり、個体数や生息密度、種の完全な分布域を示すものではない点に注意が必要です。この傾向は、夏から秋にかけて開花・結実期を迎える栽培サイクルと観察のしやすさが関係している可能性があります。

Capsicum annuumの観察記録の分布図
記録された場所 · GBIF
3,931
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
月別出現件数 · GBIF

繁殖と生活史

花は一般に6〜7枚の花弁と萼片を持ち、7本の雄しべと、2〜3個の心皮からなる子房の上に単一の花柱を備えています。基本的には自家受粉する植物ですが、密集して栽培される場合にはミツバチ・スズメバチ・アリなどによる他家受粉もしばしば起こります。商業栽培では、新しい品種を生み出すための選抜育種の一環として、人の手による受粉が行われることもあり、これは本種が長い歴史の中で人為的に改良されてきたことを示しています。

受精後、果実は品種ごとに定められた形へと発達し、成熟すると種子の散布が可能になります。

一部の品種の種子はカプサイシンで覆われています。これは栽培化以前の野生種が、哺乳類による食害を避けるために獲得した防御機構と考えられています。一方で鳥類はカプサイシンの影響を受けないため実を食べることができ、消化管を通過した種子が糞とともに新しい環境に散布されます。この鳥類による種子散布は広範囲への分布拡大に大きく貢献したとみられ、野生種チルテピンが北ペルーからアメリカ合衆国南西部にまで及ぶ広大な分布域を持つ一因になっています。

利用と人との関わり

食用としての利用が最も広く、生食・乾燥・ピクルス・粉末など様々な形で消費されています。メキシコの伝統料理であるオアハカの黒モーレのような料理にも欠かせない食材で、カイエンペッパー、チリパウダー、ピメントン、パプリカ、ピメントといった香辛料の原料にもなっています。実にはビタミンA・C・B群などの微量栄養素も含まれています。

食用以外にも、伝統医療での利用が古くから知られています。マヤやアステカといった古代文明では病気の治療にトウガラシ属の植物が用いられ、20世紀にはカリブ海地域で煎じ薬として利用された例も報告されています。また現代では化粧品や、自己防衛用の唐辛子スプレーの原料としても使われています。

文化的な側面では、中南米やヨーロッパの一部の民間伝承において、トウガラシは悪霊を退け幸運を招くお守りとして用いられてきました。観賞用としても人気があり、米国国立植物園が育成した「ブラックパール」のように、見た目の美しさを目的に栽培される品種も存在します。

豆知識

  1. Capsicum属には30種以上が知られていますが、そのなかでCapsicum annuumは世界で最も広く栽培・消費されている種です。
  2. 近年の研究では、野生トウガラシの祖先種の分布域はこれまで静的なものと誤って描かれてきたが、実際には気候変動や栽培化に関わる文化的慣行の影響を受けて変化してきたと指摘されています。

保全状況

  1. LC
  2. NT
  3. VU
  4. EN
  5. CR

軽度懸念

生態

生息地

  • 森林
  • 荒れ地

生育型

  • 低木

写真

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赤や緑の光沢のある実をつけた、多数の枝分かれした低木状のトウガラシの株写真: The Great Walter、CC BY

出典GBIFiNaturalistWikidataWikipediaEncyclopedia of Life